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部活の朝練はもはや時代遅れなのか?「朝練のおかげで鍛えられた」「部活動自体が迷惑」「正直、しんどいですよ。でも…」元部員、現役教員、学生、それぞれの本音を直撃!

集英社オンライン / 2024年8月12日 10時0分

8月に入り、中学・高校の運動部の夏の大会が佳境にさしかかっている。3年生にとっては、これまで積み上げてきた成果を発揮する最後の機会だ。しかし、学生時代の青春を語るうえで欠かせない部活動だが、その“朝練”をめぐっては、教育上の観点や教員の負担面から、いまや大きく意見が分かれている。

【画像】「朝練がいらない理由は山ほどあります」進学への懸念も……朝練の是非を語る元野球部員

朝練の必要性をめぐって議論に

先月下旬、中国新聞に寄せられた40代主婦の相談が注目を集めた。

〈「中学1年生になった子どもが部活動を始め、毎日30分ほど朝練があります。子どもは『給食までにおなかがすいてしんどい』と言っているし、睡眠不足や疲れが心配です。冬は薄暗い時間に登校するため、防犯面や寒さも気になります。学校の他の部でも朝練があるようですが、授業に集中できないのではないでしょうか。中学生の朝練が必要かどうか皆さんの意見を聞いてみたいです。他の中学校の様子も教えてもらえませんか」〉(山口県岩国市の40代主婦・『中国新聞』2024年7月21日「よろず相談室」より)

相談主は親として子どもの睡眠不足や疲れなどが気がかりで、子ども本人も朝練後は給食までもたず〈お腹がすいてつらい〉と漏らしており、授業への影響も心配しているという。この相談をきっかけに、SNSでは部活の朝練をめぐり、さまざまな意見が上がっていった。

〈毎日短時間でもコツコツと努力を重ねることは大切だと思う〉
〈規則正しい生活をさせるなら逆効果〉
〈先生と生徒、保護者双方の負担を考えたらいい加減に中学生の部活動は完全に廃止したほうがいい〉
〈3年で人より部活動を上手くなろうと思ったら、寝る間を惜しんで練習しなければ無理〉
〈中学生の頃から思っていた。私はこれがイヤで部活にすぐに行かなくなった〉


こうした投稿の数々は、主に子を持つ親や子育て経験者、かつて部活に打ち込んだ人々の間で賛否両論を呼び、朝練の是非が問われている。そんな中、自身の経験から朝練に理解を示すのは、30代女性のAさんだ。Aさんは中高の6年間、公立校で女子バレーボール部に所属し、朝練や合宿など厳しい練習に耐えたことを糧としている。

 「当時はキツかったし、『強豪校でもないのに…』と疑問に思うこともありましたが、今振り返れば朝練は経験してよかったんじゃないかなと思います。中高の6年間、週2~3回朝練をしていましたが、ここで早起きの習慣が叩き込まれたことで、社会人になっても適応できた気がします(笑)。

同僚には仕事や毎朝の満員電車がつらいという人もいましたが、私がそれらに耐えられたのは、朝練をはじめとする部活で、精神面もタフになれたこともあるのかなと。現在は子育てに専念し、こちらも本当に大変でつらい日々ですが、部活を経験していなかったらもっとつらく感じていたかもしれません」(Aさん)

一方で否定的な元部員と現役教員

こうした意見とは反対に朝練は不要と唱えるのが、中学3年間、野球部に所属していた30代男性のBさん。当時は好んで部活に励んでいたBさんだが、今では「朝練はいらなかった」と振り返る。

「朝練がいらない理由は山ほどあります。まず、成長期の睡眠は体を作るうえでとても重要ですから、運動のメリットよりも睡眠不足によるデメリットのほうが大きい。習慣づくりといったって、どうせ大学生や社会人になれば、夜ふかしが身についてリセットされちゃいますよ。
一番の弊害は、朝練で疲れてその後の授業に身が入らなかったことですね。自分は自転車で長距離通学もしていたので、授業中の空腹や眠気はしょっちゅうでした。それでも要領がよかったので進学できましたが、朝練のせいで授業に集中できず、成績が落ちて進学に影響した部員を見ていると、悔やんでも悔やみきれないだろうなと思います」(Bさん)

AさんとBさんのように、同じ時代に運動部を経験した人でも、朝練に対する思いは分かれるようだ。一方、指導する立場としては、部活の朝練についてどのように感じているのだろうか。現在、神奈川県の高校で教員を務め、多くの部活顧問を歴任してきた50代男性のCさんに話を聞いた。

「私個人としては、朝練はなくてもいいと思いますね。早起きして体を動かすのは健康的ですが、あまり激しいと悪影響が上回ると思います。実際、授業中にウトウトしたり集中していないように見える生徒は、朝練後の子に多い印象です」(Cさん)

Cさんが朝練に否定的なのは、生徒の健康面や本業である学業への影響を考えてのことだけでなく、監督する教員側の事情も関係している。実は、教員の間では、朝練はおろか部活の顧問そのものが「やりたくない業務」になっているというのだ。

「自治体によって多少異なるとはいえ、部活の指導をしても手当は時給換算で最低時給以下しか出ません。それなのに怪我や熱中症が起きれば監督責任を問われますし、負担ばかりで割に合わないのが実情です。私も若い頃は柔道部の顧問を務めましたが、これは若さゆえの体力、気力、情熱と、私自身が学生時代に柔道をやっていたという趣味的なモチベーションが強いですね。年老いてからは茶道部や手芸部など、顧問への負担が少ない部活ばかり選んでいます」(Cさん)

部活に打ち込む当事者の思いは…

このように大人たちの思いはさまざまだが、朝練をする当事者である学生たちはどう思っているのだろうか。実際、始業前に朝練を行なっている本人がどんな思いで朝練をしているのか、都内の中学校で陸上部に所属し、夏休みを前に引退した3年生Dくんに本音を聞いた。

「僕はもう夏休み前に部活を引退しましたが、正直、朝練なんてしんどいですよ(笑)。早起きして練習してから授業を受けるなんて、そりゃあメンドくさいし疲れますから。大人だって運動してから仕事するのはキツいと思うし、こっちは放課後の部活までありますからね。

でも、部活には自分から進んで入ったし、引退まで続けられたってことは、なんだかんだ言いながら嫌じゃなかったんだと思います。結局、やりたい人はやればいいし、『教育によくない!』とか言って大人の都合でなくすことだけはやめてほしいです。別に僕らは練習できれば先生と一緒じゃなくてもいいので、先生がつらいっていうなら、指導専門の人に任せればいいと思います」(Dくん)

確かに、近年は教員の“働かせすぎ問題”が議論されるなど、教育行政は大きな改革を迫られている。しかし、本来、学校は生徒のためにあるもので、当事者である子どもたちを無視して、大人の理屈で朝練の是非は決められない。

教員の負担を軽減しつつ、生徒の意思も尊重できる。そんな部活動のあり方はないだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部

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