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〈追及・兵庫県〉「足りん。4億にせえ」1億円だった支援予算を号泣副知事のひと声で増額、斎藤知事は「補正予算はキリのいい数字のほうが打ち出しとしていい」と予算増の根拠ゼロ。阪神・オリックス優勝祝賀パレードの裏でなにが…

集英社オンライン / 2024年8月10日 9時0分

〈兵庫県知事側近の“牛タン倶楽部”は3人離脱〉自死した告発職員を「保護対象として扱う必要なし」「居酒屋などで聞いた噂話を信じて文書を作成」県の担当弁護士を直撃すると…〉から続く

昨年11月、兵庫県はプロ野球、阪神・オリックスの優勝祝賀パレードの資金集めに追われていた。そんな中、パレードへの協賛金の寄付を県から求められていた複数の信用金庫に対する補助金予算が、1億円から4億円に突然引き上げられた。斎藤元彦知事と当時の片山安孝副知事による増額指示を記録した県職員のメモには、はやりのキャッチフレーズ“身を切る改革”とは真逆の、ゆるみきった公金支出の実態が記されていた。

〈画像多数〉辞職の際に泣きじゃくった“牛タン倶楽部”の片山副知事と、斎藤知事と片山副知事が予算の増額を指示したことを記録した兵庫県職員のメモ

「虚偽の文書作成を認めた」は兵庫県のでっちあげ

3月12日、当時の西播磨県民局長Aさん(60)は、知事や側近グループの違法行為疑惑を記した告発文書をメディアや県議、県警関係者ら10人に郵送した。
挙げられた7つの疑惑の中に、片山副知事(今年7月末に辞職)が司令塔となって信用金庫への県補助金を増額し、それを協賛金としてキックバックさせ、優勝祝賀パレード費用に充てたとするものがある。文書には「パレードを担当した課長はこの一連の不正行為と大阪府との難しい調整に精神が持たず、うつ病を発症し、現在、病気療養中」とも書かれていた。文書が出た後の4月、このパレードを担当した課長Bさん(53)は自死している。

「告発文書には斎藤知事がパワハラやたかりを繰り返しているとの指摘もありました。実際にパワハラは、知事は『犯意』を認めないものの、県職員相手に繰り返されていたことが明らかに。知事側近の産業労働部長がコーヒーメーカーを企業から受領したことも発覚しました。これは収賄の疑いがあります。告発文書の内容は徐々に事実である部分もわかってきています」(フリージャーナリスト)

Aさんは告発文書送付の時点から、公益通報者保護法で県が不利益を与えてはならない立場になったとの見方が強い。ところが、斎藤知事は3月20日にこの文書の内容を知人から聞いて把握すると、疑惑の指摘を受けた当人なのに「事実と異なる記載が多々ある」と翌日に片山副知事らに「調査、対応」を指示したと説明している。

片山副知事がAさんから公用パソコンを取り上げ、中に告発文書のデータがあることを確認すると、3月27日には斎藤知事が記者会見で「嘘八百」「公務員失格」とAさんを非難。斎藤知事らはAさんが3月末で望んだ定年退職を許さず、5月7日に停職3か月の懲戒処分を科した。

Aさんへの攻撃はこれにとどまらなかった。

「処分後も、Aさんのパソコン内にあった私的なデータを県総務部長が県議らに見せて回りました。県議会では、斎藤知事を3年前の知事選で推した維新の岸口実県議や増山誠県議がデータをすべて公開せよと要求を続けたのです。その先の7月7日、Aさんは遺体で見つかりました。自死とみられています」(県関係者)

斎藤知事は8月7日の会見で、告発文書の存在を知ったときは公益通報者保護法のことは念頭になかったと認めた。一方で、片山副知事が3月25日に聴取を行ない、そこでAさんが「噂話を集めて当該文書を作成し、配布したということを認めた」との報告を受けたとし、これを大きな根拠にAさんは保護対象ではないとの自説を開陳した。

だが斎藤知事は、3月25日に行なったとする聴取の2日後である3月27日の会見で、Aさんが文書作成を認めたことと、自身の「虚偽内容が多々含まれている」との主張を勝手に組み合わせて「ありもしないことを縷々(るる)並べたような内容を作ったっていうことを(Aさん)本人も認めてますから」と発言している。Aさんが「認めた」とする行為の対象をでっち上げたこの事実は、7月24日の記者会見で集英社オンラインが質して発覚した。(♯4

「これじゃ足りん。4億にせえ」と副知事

こうした“前(マエ)”がある知事だけに、Aさんが何かを「認めた」と主張しても報道陣はもはや信用せず、8月7日の会見では根拠となるAさんの供述内容の開示を求める声が次々と上がったが、知事は応じていない。

「Aさんは生前、疑惑には誤ったものが含まれている可能性があることは認めたうえで県当局に『きちんと精査して』と申し入れています。
告発にあるパワハラやたかりには実体があり、Aさんが自分の告発文書を“噂話を集めた”と貶めるはずがない。そもそもAさんは少なくとも3月末まで県からの聴取を受けていないと言っていました。知事の発言は今後、信用性を問われることになるでしょう」(県関係者)

こうした状況で、優勝祝賀パレード疑惑との関連が指摘される、県の「中小企業経営改善・成長力強化支援事業」の予算増額の経緯を示した文書の存在が明らかになった。
同事業は金融機関が無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)を受けた中小事業者を支援すれば、1件当たり最高10万円を金融機関に支給するというものだ。

昨年秋、所管の産業労働部 地域経済課と財政課は補正予算の算定で、総計1000の事業者に金融機関が支援をすることを見込み、1件当たり10万円ずつ、計1億円を計上する計画を立てた。そこに片山副知事が「これじゃ足りん。4億にせえ」と増額を指示したことが関係者の証言でわかっている。(♯5

この過程で斎藤知事も野放図な支出拡大を指示していたことが発覚した。内部文書「令和5年12月補正予算 口頭指示メモ」には次のように書かれている。

〇課長査定時点における片山副知事からの指示
令和5年度12月補正予算項目を片山副知事に報告に行った際、片山副知事から財政課へ、事業廃止に向けて事業をソフトランディングできるよう、依然として金融機関等のニーズが高いことをふまえ、臨時交付金の活用を前提に、前年度補正額の1/2の4億円程度で事業設計するよう口頭で指示。その後、指示内容を財政課から産業労働部へ口頭で伝達。

〇知事査定における指示
知事査定(R5.11.21)において、全体をまるく4億円で計上するよう知事から指示。

公金支出の増額がいとも簡単にできる理由

これについて県関係者が解説する。

「片山副知事が4億円への増額を指示したのは11月中旬のことです。事業を巡っては11月14日の知事説明に使われた文書にも『1億』と書かれてありました。
しかし、この時点ですでに副知事の増額指示が出ており、あまりに急だったので増額の根拠を示せなかった担当者は知事に『ここには今1億円と書いてありますが、これから変わるかもしれません』と説明しています。

その後、11月16日に産業労働部が財政課に出した事業説明書には、総計4000の事業者を金融機関が支援するとの見込みをもとに、1件につき7万5000円~10万円の支援を金融機関へ行なうとして予算額を『3億7500万円』と書いています。
副知事の指示より少ないのは、4億円もの補助金をつけるほど、金融機関が事業者支援を行なうとの見通しが立てられなかったためでしょう。ところが11月21日にこの新方針の説明を受けた斎藤知事は『まるく』4億にしろと、さらに増額を指示しています。予算の根拠はありません」(県関係者)

公金支出の増額がなぜこれほどいい加減に実現するのか。

「ゼロゼロ融資に絡む事業の原資が国の臨時交付金だからです。県の財政には痛くもかゆくもないから財政課も通したのです」(同関係者)

結局、パレードに寄付をした金融機関への補助金は増額されていた。これについて斎藤知事は8月7日の会見で「4億円で制度設計するようにと片山副知事が財政課に指示をした」「補正予算はキリのいい数字で予算をつけるほうが打ち出しとしてははっきりするので、キリのいい数字にすることはある」と認めた。
記者から「補助金の増額と引き換えにパレードの寄付を要求しなかったか?」と質された知事は「私はそういったことはなかったという風に認識しています」とだけ答えた。

4億円の補助金については、支出が今年度に繰り越され、金融機関側にはまだ渡ってはいない。だが、阪神・オリックスの優勝祝賀パレードにカネを出した企業に国費が入ることに違和感を持つのは他球団のファンだけではないだろう。

告発文書が指摘した疑惑は「金融機関の幹部が補助金と引き換えに協賛金を支出したことを認めない限り、立証は難しい」と話す県関係者もいる。だが、この関係者は「パレード費用の調達に兵庫県が苦労し、自死したBさんが大阪府と調整していたことは確かだ」とも話した。
パレード資金の調達の闇は、疑惑の核心に浮上しつつある。

※「集英社オンライン」では、今回の問題について、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。
メールアドレス:
shueisha.online.news@gmail.com

X(旧Twitter)
@shuon_news 
 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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