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〈南海トラフ地震“注意”〉1週間以内にM8巨大地震の発生確率0.5%をどうとらえるか…お盆休みを前に海水浴場やホテルはキャンセル続出、首都圏もグラリ

集英社オンライン / 2024年8月9日 22時54分

宮崎県沖の日向灘で8日夕方に起きた地震。震源地が「南海トラフ巨大地震」の想定震源域だったことから、主に太平洋側に巨大地震が来ることに備えるよう政府が呼びかけている。お盆前のかき入れ時を直撃された海水浴場の関係者はがっかりしているが、9日夜には首都圏も大きく揺れ、地震への不安が高まっている。

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最悪の場合の被害想定では「32万3000人が死亡」

日向灘の地震は8日午後4時43分ごろ発生。マグニチュード(M)は7.1で、震源の深さは約30キロ。宮崎県南部では最もひどかったところで震度6弱の揺れが起き、家屋の被害も出た。幸い亡くなった人は確認されていない。問題は震源の場所で、南海トラフ地震に絡む地殻の動きがないか、気象庁は有識者による評価検討会を即時に開いた。

検討会は想定震源域やその周辺でM6.8以上の地震が起きた際に召集することが決められており、M8以上は「警戒」、M7程度以上は「注意」の情報を出すかどうかを決める。地震の規模が大きいほど後発の地震を誘発する確率が上がるとされるが、「注意」は1週間以内に巨大地震が発生する確率が約0.5%とされ、平時の0.1%より高い。検討会は協議の結果、2019年にこの運用が始まって以来初めて「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」を発表。今後1週間程度、大地震やそれに伴う津波に注意するよう、呼びかけた。

「南海トラフは、駿河湾から日向灘にかけ、プレートの境界に沿って伸びる海底のくぼ地です。このあたりでは過去に100~150年の間隔で大規模な地震が起きています。前回の大規模地震は1944年で、今年で80年が経つため、いずれは起きるだろうとみられていますが、その時期は現在の科学では見通せないんです。
今回気象庁が行なった『巨大地震注意』という発表は、リスクの大きさを示すレベルとしては3段階中2段階目のものですが、起きるかどうかははっきりとはわかりません」(災害担当記者)

ただ、一度起きると、その被害は大きい。関東から九州までの広い地域が最大で震度7の強い揺れに見舞われ、関東から沖縄にかけての太平洋沿岸は高いところで10メートル超の大津波に襲われるとみられている。

「最悪の場合の被害想定では32万3000人が死亡し、倒壊や焼失する建物は238万6000棟に上り、経済的な損失は日本の国家予算を超える約215兆円という天文学的な規模になります」(前同)

日本に暮らす多くの人の生活や人生が暗転すること必至の大災害なので備えが重要になる。しかし、今回のような怪しい揺れが起きてもそれが大地震につながるかどうかわからないのが、警戒を呼び掛ける政府としては悩ましいところだ。

岸田文雄首相は9日から予定していた中央アジア、モンゴル歴訪を取りやめることにしたが、これは地震が起きたときに行政の責任者が国内にいないのはまずいという程度の理由によるもので、地震発生が確実に近いと政府が見ているわけではない。

宮崎のホテルはキャンセルが続出

9日の地震と気象庁の発表を受け、JRが一部の路線で特急の運行を止めたり、NHKが災害対応画面で放送を続けるなどしているが、今のところ社会は平静だ。ただ、お盆直前の地震の騒ぎは、太平洋側の行楽地を直撃し、関係者は気をもんでいる。
震源地に近い宮崎市は、青島海水浴場を地震発生から遊泳禁止とし、9日までその措置を続けた。

「今まで経験したことがないほどめちゃくちゃ揺れまして、車を運転していたんですけど、パンクしたかと思いました」と話すのは宮崎市観光協会の職員Aさん。

「巨大地震注意の発表もあったので、青島海水浴場を訪れるお客さんが減ってしまうのでは、と心配です。今年はもともと暑すぎてお客さんが減っていました。1割か2割くらいは少なくなっているでしょうね。それに加えてこんなことになって…。
地震が起きた直後に津波注意報が出たんですけど、海水浴場ではライフセーバーさんたちがふだんから訓練している通りにお客さんを避難させ、けが人もありませんでした。9日は施設の点検を行なって遊泳を止めましたが、施設に問題はなく、津波注意報も解除されたので10日から海水浴は再開します。また地震が起きたり、津波の危険が迫ったりすれば、近所のホテルの上階に海水浴客が避難する手はずになっています。

今回の地震で南海トラフ地震をリアルに感じましたし、周辺の観光に影響が出るんじゃないかとも思います。宿泊施設に聞き取りをしていますが、キャンセルも出ていますし、とにかく心配です」(Aさん)

その青島海水浴場の近くにあるホテルに勤務する男性Bさんの悩みも深い。

「毎年お盆はお客さんに来てもらう時期で、今年も地震の前まではほぼ予約でいっぱいだったんですけど、キャンセルの連絡が増えています。あれだけ報道されれば心配もされるでしょうし、しょうがないと言えばしょうがないですけど、起きるかどうかわからない地震なので“風評被害”という気もします。この時期にぶつかったのはめちゃくちゃ痛いですね」(Bさん)

宮崎県では、8日夕方の地震のような揺れを経験したことがないという人が多い。その後、9日午後2時までに震度1以上の地震が14回起きており、余震がこの先も続けば客足はさらに遠のいてしまいそうだ。

9日夜は関東でもマグニチュード5.3の地震が

今回の震源地からは離れていても、太平洋側の行楽地はいずれも似たような状況だ。関西のリゾート、和歌山県の白浜町では4か所の海水浴場を閉鎖。町営温泉の営業を止め、花火大会も中止した。

町の温泉担当職員はこう証言する。

「『崎の湯』と『露天風呂 しらすな』の温泉2か所を1週間程度休業します。海岸に直接面していたり、海水浴場内で水着のまま入る温泉なので安全を最優先に考えました。人口が約2万人の白浜町には、年間約300万人の観光客の方にいらしていただいています。今回、休業する温泉はどちらも観光客の方に人気の場所なので、お盆前ということもあり『経済的な部分での打撃が心配だ』という声も届いています」

中止になった「2024南紀白浜花火フェスタ」を主催する南紀白浜観光協会の担当者は「打ち上げ場所の浜が使えない状況のため、お客さまの安全面を考慮して中止する判断に至りました。今日だけで約200件の電話対応をしました。『花火大会が中止になって残念だ』『ホテルをキャンセルしないといけなくなった』という声が多いです」と残念そうだ。

南紀白浜マリオットホテルにも地震が報じられた後、キャンセルの連絡や「現状を知りたい」という問い合わせが相次ぎ、9日の宿泊予定は約1割がキャンセルされたとホテル従業員のCさんは話す。

「きょうは海水浴場が閉鎖されていることを知らずに来たお客さまもいました。明日(10日)の花火大会が中止になったということもあり、『キャンセルするか迷っている』というお問い合わせの電話も多かったです。明日は今日以上にキャンセル連絡が多いことが見込まれます」(Cさん)

南海トラフ地震臨時情報を受け、JR西日本が特急「くろしお」を運休したため、ホテル側はキャンセル料を取っていないといい、お盆の繁忙期も相まって大きな損失が見込まれるという。
それでもCさんは「自然災害によるものなので仕方ないと考えております。今のところホテル周辺は地震の被害は受けておらず、ホテルは通常通り営業しているので、来ていただいたお客さまには楽しんでもらいたいです」と話している。

一方、9日午後7時57分ごろには関東でもマグニチュード5.3の地震が起き、神奈川県西部で震度5弱を観測。東京都内でも大きく揺れた。この地震による津波の恐れはなく、震源も南海トラフ巨大地震の想定震源域から外れているため、南海トラフ地震との関連はないとの見方が強まっているが、全国どこでも地震への備えを改めてしっかりと見直すことが求められそうだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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