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「祐希は“戻ってきた”と思わせる活躍ぶりでしたが…」恩師が見た、石川祐希と髙橋藍のパリ五輪。今後の日本バレー界に求められる進化とは?

集英社オンライン / 2024年8月13日 17時0分

届かなかったあと1点…関田誠大、石川祐希、髙橋藍の恩師が語る、パリ五輪・男子バレー日本代表に足りなかったもの「あそこでタイムアウトを取っていたら…」〉から続く

日本中の幅広い世代、諸外国の人たちも含めた多くの人たちを魅了した男子バレー日本代表。残した功績は、次世代にもつながっていく。中央大で関田誠大と石川祐希、富田将馬を、東山高では髙橋藍を指導した松永理生氏(現・東山高監督)に、パリ五輪を受けての今後の展望、育成年代や国内のSVリーグに期待すること、求められることを語ってもらった。

【写真】パリ五輪を戦い終えた男子バレー日本代表

石川はイタリア戦で「戻ってきた」が……

――大会前半、石川祐希選手の調子が上がらず、心配する声も多く挙がっていましたが松永さんはどのようにご覧になっていましたか?



松永理生(以下同) コンディションという話が多く出ていましたが、それは海外の選手も同じ。「それを理由にしてはいけない」と思っていましたし、多少悪かったとしても僕はそれほど心配していませんでした。大会中に僕が目にした記事の中には、石川が関田に「託してほしかった」とトスを要求しているとか、石川に気を遣っているという表現もありましたが、それもこれまでと変わらぬ石川の姿ですし、キャプテンシーを発揮しているだけだと思っていました。

――実際にイタリア戦は、第1セットから石川選手の攻撃が爆発する場面も多々ありました。

表現が正しいかはわかりませんが、「戻ってきた」と思わせる活躍ぶりでしたね。でも彼の中では、託されたボールを決められなかった悔しさのほうが上回っているでしょうし、イタリア戦の3セット目のマッチポイントでも関田は続けて石川に上げている。

やっぱり石川に決めさせたかったし、取らせないと、と思ったんでしょうね。それぐらい1、2セット目の石川は調子がよかった。でも3セット目に決めきれず、5セットまでもつれた結果、最後は西田有志選手にトスが上がって決めきれずに惜しくも負けてしまった。

でも、試合を終えてすぐ、僕は戦いを見ていたひとりとして、指導者のひとりとして彼らに「ワクワクさせてくれてありがとう」という謝辞をLINEで送ったんです。みんなすぐに返信をくれたのですが、石川からは「1点が取れなかった。さらに強くなります」と返ってきたので、この悔しさも力にして強くなってくれると信じています」

髙橋藍は「背負うものが大きくなりすぎた」

――髙橋藍選手はどのようにご覧になっていましたか?

表情は硬かったですね。プレーもどこか硬さが出てしまっていて、普段ならばブロックに当ててもっと飛ばせるボールが飛んでいかなかったり、飛んだ場所にレシーブがいてつながれてしまったり、なかなか思い通りの展開に持っていけなかった。

ディフェンス面は、ドイツ戦の時にはかなり硬さがあって、「大丈夫かな」と心配する場面もありましたが、試合を重ねるごとによくなった。特にアメリカ戦、イタリア戦のディフェンスは藍の力が存分に発揮されていたと思います」

――髙橋選手の硬さの理由は何だったと思いますか?

僕はかねてから「関田が長男、石川が次男、藍が三男」と言ってきましたが、彼は“三男坊”的なキャラクターというか、本来自由でやるべき人間だと思うんです。でも、兄たちが本調子じゃないことを感じ取り、背負うものが大きくなりすぎてしまった。もちろんこれからの日本代表を考えたら、背負うことはすごく大事で必要なんですけど、今大会はそれがプラスではなくネガティブに出てしまったところもあったのかな、と。

足首のケガの影響もあったと思うのですが、たとえばフェイクセットができる場面でもいかずに、確実さを求めて丁寧なトスを上げるシーンも多かった。もちろんそれも正解なんですけど、楽しむことを体現してきた選手なので、そこでも楽しむ余裕を持てていたら違ったのかもしれない。どの国も素晴らしい技術が結集して、逆境でも開き直りながら楽しめるチームが勝つ。そういう紙一重の戦いがオリンピックなんだと教えられました。

藍には「東山の生徒たちもみんなが応援していました」とLINEで連絡したら、「さらに強くなれるように、みんなのヒーローになれるように頑張ります」と返信がきました。真剣さの中で楽しむ余裕を持てばもっとすごい選手になるでしょうし、これからの日本代表を背負っていってほしいですね」

求められる次への進化は?

――パリ五輪に出場した日本代表は、世代を越えた幅広い人たち、みんなが応援するチームでしたね。

東京五輪に向けたところから始まって、「東京の経験を次に活かそう」とパリへの戦いがスタートした。日本人だけでなく、海外の人たちも魅了するチームでしたね。パリ五輪の会場で(元ポーランド代表で、日本のVリーグのパナソニックパンサーズでもプレーした)ミハウ・クビアク選手も真剣に応援してくれた。

それだけの魅力がある楽しいチームで、切磋琢磨した中で発揮する技術の見せ合い、巧さ、人がハッと思うものが蓄積されていた。東山高の生徒たちも試合を見ながら熱狂していました」

――高校生たちはどんな反応でしたか?

質問してくるようになりましたね。昔は単純に、プレーの質について聞かれることが多かったのですが、今回はイタリア戦の次の日、練習が終わった後に僕のところに5、6人の選手が来て「イタリア戦の敗因って何ですか?」と聞いてきました。

そこで僕が感じたことを伝えたら、納得して帰る。その姿を見た時に、技術に関してこれがよかった、ここが通用したというのはわかっているから、その先、勝負を分けた部分やゲームの流れが気になるようになったんだなと。それは、技術レベルや発想に関しては高校生もトップレベルに近づいているということですよね。しかも質問してきたのは、試合に出ている選手ではなく、なかなか試合に出られずにいる選手たちだったので、その反応は僕も嬉しかったです」

――ここから新たな日本代表がスタートし、高校生年代の現場でもさまざまな変化が求められ、その変化や進化がトップカテゴリーにもつながっていくはずです。高校生の指導者として刺激を受けたこと、「こんなことを実践したい」というイメージはありますか?

今の代表チームが高校生のレベルもグッと引き上げてくれたからこそ、次の進化を考えるとSVリーグがどうなるかが大事ですよね。特に僕が期待したいのは、ミドルブロッカー陣の成長です。

オポジットやアウトサイドヒッターは世界的にも有名なトッププレーヤーが来日するので、同じポジションの選手たちは試合に出るため、勝つためには成長しなければならない。同様の流れがミドルブロッカーにも起きてほしいですし、海外で通用するミドルブロッカーになるための挑戦をしてほしい。

あれほどミドルを使うことを得意とする関田が「使いたい」と思いながら使えなかったということは、さらにミドルの成長が必要なんだという裏付けでもあると思っています。

これからは個々のレベルアップももちろんですが、ポジションごとの技術力アップも不可欠。僕も将来を見据えた指導をしていきたいですし、今の高校生にも楽しみな選手がたくさんいますので、どんどん伸ばしていきたいですね。

 取材・文/田中夕子

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