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無印良品が強気な価格改定でも深刻な客離れを起こさない3つの理由。食品や家具で平均25%の値上げも業績好調を支えるブランドの底力

集英社オンライン / 2024年8月16日 8時0分

ウエルシアがアマゾンとタッグを組んでオンラインによる処方薬の販売を開始…ドラッグストアのさらなる淘汰と再編の契機となるか?〉から続く

無印良品を展開する良品計画の業績が好調だ。第3四半期の決算を発表した7月12日に通期業績予想の上方修正を行った。売上高に当たる営業収益を6400億円から6600億円へと3.1%引き上げている。無印良品は2023年に一部商品の価格を平均25%アップという強気の値上げを行ったが、客離れは限定的だった。この根強いブランドの強さの人気は一体どこにあるのか。

【画像】商品開発力も強い無印良品がメジャーにした食べ物

値上げ後は既存店でも増収をキープ

良品計画の2024年8月期第3四半期(2023年9月1日~2024年5月31日)の営業収益は、前期比13.7%増の4956億円、営業利益は同87.3%増の424億円だった。営業利益率は8.6%。前年同期間の5.2%から3.4ポイントも改善した。

かねて中期経営計画「3ヶ年ローリング計画」にて、2025年8月期の営業利益率を8.1%と設定していた。今期は前倒しでこれを達成しそうな勢いだ。

良品計画は調達原価をもとにある程度の値下げを加味した価格を設定し、店頭売価を決めるという特徴があるが、現在は値下げの抑制にも努めている。そのため、国内事業に限定すると、営業利益率は3.8%から10.5%まで大きく伸ばしているのだ。また、営業収益の4割ほどは海外事業によるもので、円安メリットも働きやすい。

しかし、国内事業の著しい収益改善を見ると、値上げや値下げ抑制効果が極めて効果的だったことがわかる。

良品計画は2023年1月13日に大型家具、プラスチック収納、布製品、食品の価格改定を実施。同年2月3日に生活雑貨も値上げに踏み切った。ポリプロピレンの収納ケースは1790円から2290円、脚付マットレスは2万7900円から3万2900円に引き上げられている。

無印良品の競合の一つが家具・インテリア業界大手のニトリだ。ニトリは海外で製品を生産して国内に輸入している典型的な円高メリットの会社。足元では急速に円高が進行したとはいえ、140円台後半という円安基調であることに変わりはない。

しかし、ニトリは基本的には値上げをしていない。競合が手頃な価格を武器にする中で良品計画は値上げを行ったわけだが、客離れは限定的だった。

2023年の国内既存店・オンラインストアの客数は前年の92.6%。価格改定効果で売上高は101.1%だった。既存店とはオープンから一定期間が経過した店舗を指す。新規オープンの一時的な集客効果が働かないため、恒常的な集客力を見ることができる。既存店が増収となっていることからも、集客にはさほど影響していないことがわかる。

2024年1月から7月までの既存店客数は100.8%。売上高は105.8%だった。良品計画は2024年9月にも菓子など41品目の値上げを実施する。収益性のさらなる改善に期待ができる。

行きすぎた消費社会に警鐘を鳴らした無印良品

無印良品はなぜこれほどまでに強いブランド力を維持できているのだろうか。その理由は大きく3つあると考えられる。

1つ目は良品計画が誕生した背景と、持続可能な社会という現代の概念が合致したこと。2つ目はターゲット層が値上げ耐性に強いこと。3つ目は商品開発力に強みを持った会社であることだ。

良品計画は西友のプライベートブランドを開発する会社として1980年にスタートしている。当時、西友を擁するセゾングループのトップといえば、実業家の堤清二氏だ。堤氏はバブル期の消費動向をとらえ、西武百貨店や西友を業界トップレベルにまで引き上げた立役者だった。実業家として華々しく活躍する一方、小説を発表するなど文学にも造詣が深く、教養があった人物としても知られている。

バブル期はDCブランドブーム真っ只中。数々の高級ファッションブランドのアイテムが飛ぶように売れていた。そんななか、シンプルかつ機能性の高い商品を取りそろえる無印良品は、ブランドの名を冠すれば高額でも売れるという時代のアンチテーゼとして誕生したのだ。

堤氏は一時、日本共産党に入党していたことでも知られている。

行きすぎた消費社会に反旗を翻しつつ、それを資本主義というシステムの中で表現したことは、何とも堤氏らしいやり方だ。

そして2000年代に入り、大量消費・大量廃棄型の経済が疑問視されるようになった。多くの人がそれを認識するようになったのは、2015年9月に国連総会で採択された「持続可能な開発のための17の国際目標」だろう。いわゆるSDGsである。

良品計画の売上高が2000億円を突破し、急成長し始めたのが2014年2月期からだ。消費者がサステナブル社会を意識するようになったタイミングとちょうど重なっている。

良品計画は中国やヨーロッパなどの海外でも高い支持を得ている。国際的な消費者意識の変化の中で、急速に力をつけたのだ。

また、サステナブル・ブランド ジャパン アカデミックチームが消費者を対象にした調査で、サステナブルなブランドとして1位を獲得している。得点は僅差でトヨタ自動車を上回った。持続可能な社会における代表的なブランドとなったのである。 

無印良品を選ぶ人の保有資産はニトリの2倍以上?

データマーケティングを行うヴァリューズは、無印良品のブランド調査を行っている(「無印良品に「惚れた」のはどんな人なのか?」)。スマートフォンアプリのユーザーを対象にアンケートデータを用いた分析をしたものだ。

それによると、アプリの利用者で最も多いのは40代女性で全体23.5%だった。次いで30代、20代と続く。なお、ニトリも40代女性が18.6%で高い割合を占めるが、無印良品よりも男性ユーザーが多く、女性比率が低いという特徴がある。

無印良品が20~50代くらいまでの女性に人気が高いのは、ブランドを展開する上で重要だ。

コンサルティング会社のデロイトトーマツは、「2024年度「国内消費者意識・購買行動調査」」を発表している。その中で、サステナビリティへの関心と消費行動を調べている。

それによると、40~50代の女性がサステナビリティにとても関心がある・どちらかといえば関心があると回答した割合は42.0%。20~30代女性が41.5%だ。

一方、男性は40~50代が31.6%、20~30代は38.9%。同じ世代でも女性の方が圧倒的に関心が高い。

また、先ほどのヴァリューズの調査によると、無印良品を利用するユーザーの保有資産は平均で1017万円。ニトリの483万円、ユニクロの563万円と比較して圧倒的に高い。富裕層にも支持されていることがわかる。

つまり、ターゲットが持続可能な社会への意識が高まる中、無印良品はその分野で圧倒的なブランドを構築することに成功した。ブランド選好度が高いのだ。しかも、ターゲットは富裕層も多いために値上げ耐性があったということなのだろう。

周辺アイテムにも手を抜かない

良品計画は商品開発力も強く、それが消費者を惹きつけてもいるのも間違いない。商品力の強さが発揮されたのが売れ行き好調のレトルトカレーだ。

衣類や家具、雑貨はブランド選好度が働きやすいが、食品はそうはいかない。美味しいか美味しくないか。シンプルなその要素が重要だからだ。どんなに洗練されたブランドの食品でも、美味しくなければ2度目の購入はない。

無印良品のヒット商品であるバターチキンカレーは、2024年で6代目を迎える。初代は2009年で、かなりのロングセラーだ。

初代を開発していた当初、無印良品はこの場所でしか買えないカレーを販売しようと、ハバネロカレーやイカ墨カレーのようなエッジを利かせたものを扱っていた。

しかし、奇をてらったものは万人受けしない。そこで、無印良品でしか買えず、マス層も狙えるものの開発に着手した。

当時、バターチキンカレーは日本ではメジャーな食べ物ではなかった。それを日本人好みの味に仕上げ、ヒット商品に押し上げた。バターチキンカレーそのものを国民に知らしめた商品としても知られている。

2012年からはインドやタイへと出向き、現地の味を学ぶようになって味を洗練させるというこだわりようだ。

こうした創意工夫を重ねて、無印良品は約7000点もの商品を扱っている。主力の衣類や家具、雑貨以外の食品という分野においても、徹底的な消費者目線で商品開発を行っている。こうした企業の姿勢も、ブランドの発展に手を貸しているのだろう。

取材・文/不破聡 サムネイル/Shutterstock 

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