――青木さんが小説家を目指したきっかけを教えてください。
小学生の頃から小説は書き続けていましたが、作家を目指したのは会社員だった20代後半になってからです。このまま会社勤めを続けていくのかと悩み、自分が本当にやりたいことは何だろうと考えた末に辿り着いたのが、プロの小説家になることでした。それまでは無理だろうと諦めていたけど、一生に一度くらい人生の岐路に立ってみよう、挑戦したうえで駄目なら諦めがつくと、小説の投稿を始めました。
――そして2002年に『ぼくのズーマー』でノベル大賞を受賞、作家デビューします。なぜコバルト文庫の新人賞に応募されたのでしょうか?
当時は長編小説が書けなくて、中編でも投稿可能な賞という理由で選びました。とはいえ、以前からコバルト文庫の読者で、中高時代は氷室冴子さんや新井素子さん、久美沙織さんの作品などをたくさん読んでいました。
――デビュー3年目で専業作家になるという大きな決断を下されます。
あの頃のコバルト作家は年に3~4冊新刊を出していたけど、会社員を続けながらそのペースで書き続けるのはしんどかったです。他の本を読んだり、調べ物をする時間も全然取れず、自分の中がどんどん枯れていく。デビュー当時から書き続けていたファンタジー小説に限界を感じていたこともあり、一度リセットしてやり直そうと決意しました。
20代後半で大きな決断をしたのに、今仕事を辞めたら次がないかもしれない30代でまた覚悟を決めなければいけないのかと思ったけど、それでも自分自身に賭ける道を選びました。幸いなことにその後『ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』(以下、『ヴィクロテ』)がヒットし、専業作家としてやっていけるようになりました。