約900万円の“高級軽自動車”に注文殺到のワケ…「販売数は想定数のおよそ2倍」購入者は? 性能は? 担当者を直撃した!
集英社オンライン / 2024年8月20日 11時0分
今夏、ケータハムカーズ ・ジャパンが限定販売した軽自動車「SUPER SEVEN(スーパーセブン)600 CLASSIC EDITION」。販売価格はなんと899万8000円。受注生産の期間限定品だが、想定のおよそ倍近くの数が売れたという。そこで今回は、同車を製造するエスシーアイ株式会社 取締役統括管理部長・大谷明弘氏にどんな人が購入をしたのかなど話を聞いた。
約900万円、日本唯一の“輸入軽自動車”
国土交通省の「令和6年5月末の自動車保有車両数」の発表によると、全体の車両数のうち41.12%が軽自動車での登録台数だったという。
軽自動車は普通車と比較して車両価格や維持費が安く、高コストパフォーマンスのため需要が年々増加しているのだ。
日本で販売されている一般的な軽自動車は、200万円前後の価格帯のものが多いなか、ケータハムカーズ ・ジャパンが約900万円という“高級”軽自動車を限定販売した。
それが6月21日〜30日の1週間限定で販売された「SUPER SEVEN 600 CLASSIC EDITION」だ。
「SUPER SEVEN」は、もともとイギリスの車両メーカーのロータス社が開発した車だ。1973年にロータス社の「SUPER SEVEN」製造中止発表を受け、ケータハム社が当時ロータス社のディーラーだったことから製造権と生産設備一式を譲り受けた。
「昨年、2023年はケータハム設立50周年となる節目の時期でした。日本のお客様向けに何か特別な限定モデルを発売したいと考え、既に海外で発売されていたSUPER SEVEN 600/2000をベースに、日本限定の『SUPER SEVEN 600 CLASSIC EDITION』を製作しました」(大谷氏、以下同)
欧州だけでなく日本でも人気を博しているこの車。レトロな外見と唯一無比な性能で注目を集め、1週間という超限定的な販売にも関わらず、販売直後から多くの問い合わせがあったという。
「短期間の限定発売でしたので想定数はおよそ10台でしたが、ただいま19台のご注文を頂いております。ケータハムの日本での年間販売台数は100台くらいですから、そのうち19台というは非常に高い数字なんです。
注文には、お客様注文以外にディーラー在庫注文というのもありまして、ディーラーが売れないと思えば在庫注文も少なく、売れると思えば多く注文が入るため、最初に〇〇台と設定して発売してしまうと、在庫を抱えるリスクがあるんです。
そのため短期間限定の販売方法をとったのですが、今回は想定のほぼ2倍の注文数をいただき、大変驚きました」
ケータハムカーズ全世界での販売台数は年間およそ750台と、そもそもの生産数が少ない。そんななかでの日本限定発売の限定モデルの製品が19台というのは、大きな割合を占めることになるだろう。
発注を受けてから一つ一つ丹念にハンドビルドでの生産となるため、今回注文を受けた製品は、来年3月〜4月頃の納品になるのだそうだ。
富裕層のドライブ愛好家から支持される「SUPER SEVEN」
最初の輸入元が日本で発売した当時、アルミグリーンのボディカラーを大量に仕入れたことで、日本では「SUPER SEVEN」といえばアルミグリーンカラーのイメージがついた。
そこで今回の限定モデルも、コアなファンに支持されているアルミグリーンのカラーに仕上げたのだと大谷氏は語る。
この約900万円の高級軽自動車、性能面ではどのような特徴があるのだろうか。
「現代の一般的な軽自動車は700kg〜1tの重量がありますが、こちらは440kgしかありません。この驚異的な軽さは4輪自動車で最軽量ではないでしょうか。
最初のセブンを作ったロータス社は“簡素化”と“軽量化”を追求していました。その思想を強く受け継いでいるモデルで、速度を出さなくても十分なスピードと風を感じられます。山や海際のワインディングロードのドライブを楽しめ、バイクのように思いのままに走行できるのが魅力です。
走ることだけにフォーカスし、屋根部分のルーフやエアコンなども排除しているため、現代の電子制御満載のスポーツカーとは対極にあるモデルなんです」
ドライブの趣味に特化した仕様は、高額な車両価格も相まって購入者が限られそうだ。
「顧客層はもちろんドライブ愛好家ですが、そのなかでもこの究極のライトウエイト思想に惚れたファンの方がメイン顧客となっています。ルーフがないため(ソフトトップはありますが強い雨では隙間から雨漏りします)、雨ざらしでの駐車は車的にも防犯的にも厳しいということを契約時にお伝えしているので、屋根付きガレージを持っている方が購入されていることが多いですね。そのため購入者は比較的富裕層にはなると思います。
趣味の車購入で大きなハードルになるのは家族の説得だと思いますが、車種は言わずに『軽自動車を購入したい』と家族に説明し許可をもらった方がいました。ご家族の方は普段使いできる一般的な軽自動車を想定していたのでしょう。納車時に『SUPER SEVEN』だったと車種を知らされたご家族は当然驚きますが車があまりに究極過ぎて笑い話となり、今は家族もSUPER SEVENを好きになりドライブを楽しんでいるという話も聞いたことがあります」
今後の展望は?
一般的なドライブ愛好家からすると「SUPER SEVEN」は“憧れ”“高嶺の花”と考える方も多いだろう。今後、もう少しお手軽なモデルを販売する予定はあるのだろうか。
「当社は大手メーカーのように年間何十万台も生産するわけではなく、購買力が違いますので、ひとつひとつの部品の値段も非常に高くなります。また、1台1台ハンドビルドで人件費もかかっており、価格はこれ以上下げるのは厳しい状況です。
現在発売の『SUPER SEVEN』のEVモデル(電動車)の発売だけでなく、EVスポーツカーProject Vの2026年発売に向けて開発していますが、あくまで開発・生産は英国ケータハム主導。
当社は今後も50年変わらず受け継がれてきた、『SUPER SEVEN』のクラッシックスタイルと独自性を尊重していきたいと考えています」
―――「SUPER SEVEN 600 CLASSIC EDITION」はまだ数台のディーラー在庫車両がある可能性が。日本唯一の“輸入軽自動車”に一度乗ってみたいものだ。
取材・文/逢ヶ瀬十吾(A4studio)
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