【新築マンション平均1億円超え】株価変調・金利上昇・円高のトリプルショックで高“値”の花のマンション価格がついに暴落!? 不動産専門家のガチ回答とは
集英社オンライン / 2024年8月31日 10時0分
東京23区内の新築マンション平均価格はついに1億円を突破した。都心部では中古でも70㎡の3LDKは1億を上回るという。「マンションが高すぎる」「誰が買えるの?」という声がSNSにあふれている。一方で、日銀は政策金利を8月から0.25%に引き上げ、日経平均株価の下押し要因となった。利上げは住宅ローンの重石にもなる。追加の利上げも予想される中、マンション価格はどうなるのだろうか。
1億円出してもワンルームしか買えない「超高級マンション」といえば
3億、4億は当たり前の物件も
不動産経済研究所によると都内における新築マンションの平均価格は2023年に1億円を突破し、今年6月には1億1,679万円となった。
都心では中古物件でも1億を超える。庶民の手に届かなくなったマンションに関して暴落論も聞かれるが、今後のマンション価格はどうなるのだろうか。都内のマンション事情に詳しい不動産専門家の稲垣ヨシクニ氏に話を聞いた。
そもそも、昨今なぜマンション価格は上昇しているのか。
「まず資材費やエネルギー価格上昇の影響があります。コロナ禍前の2019年と比較して建築費は30%以上も上昇しました。土地を含まない建築費だけでも坪単価250万円ぶんとなり、そもそもどの場所でも坪単価400万円以上の販売価格じゃないと成り立ちません。
三田ガーデンヒルズなど坪単価1300万円以上の物件も出てきています。3LDKで3億、4億、良い条件だとなんと10億円する部屋もあります」
根強いマンション需要も価格を下支えしているという。もともとは住友不動産など一部デベロッパーが実施していた第1期→第2期→第3期と値上げしていく手法が、三井不動産など他のデベロッパーにも広がっており、マンション価格をさらに押し上げている。デベロッパーが値上げするのは、それでも売れるためだ。
東京はいまだ人口が増えているし、新築マンションの供給数が減っているということもある。
では、需要を下支えする“億ション”の購入者はどういう層なのだろうか。
「大きく分けて2つの層がいます。8~9割が『パワーカップル』といわれる人たちで、世帯年収が1,500~4,000万円の層です。そして残りが居住目的の外国人購入者です。湾岸エリアだけは例外で購入者のおよそ3割が外国人購入者となっていますが、通常はそれくらいの比率です。
マンション需要・価格の需要増加に対しては金融機関も従来の最大35年からローン期間を延ばすなどして対応しています。なんと50年ローンも出ています。ちなみにオーナーや経営者などのいわゆる『スーパー富裕層』は5~30億円の物件を買うので、一般的な相場には反映されません」
主な需要の担い手は都内で働くパワーカップルである。巷で聞かれる、インバウンドや富裕層による「買い占め」で一般人には手が届かないといった噂は誤りのようだ。
都心・湾岸を中心に暴騰、それにつられて中古物件も…
そして中古マンションの価格も新築につられて上昇しているという。
「新築で特に価格が上昇しているのは港区、中央区、千代田区と豊洲・勝どき・月島などの湾岸地区です。そして、こうした地区では近くの新築物件につられて中古物件の価格も伸びる動きがみられます。
26年4月に竣工予定のグランドシティタワー月島は月島駅から徒歩5分で平均坪単価850万円以上の販売価格ですが、駅直結のキャピタルゲートプレイスザ・タワーは2015年竣工にもかかわらず、駅への近さがメリットとなり高い物件は坪800万円台後半で取引されております。
同様に品川駅の港南口にできるリビオタワー品川は2026年竣工予定で、価格は未定ですが、近隣のタワマン価格はここ1年で坪400万から550万円に上昇しました。こうした動きを振り返ると、今後の新築マンションの上昇に伴って都内の中古物件も堅調に推移すると考えられます」
新築の供給が続くエリアでは中古物件も上昇し、相場全体が上がるという話である。では、新築の供給が無いエリアはどうなるのだろうか。
「湾岸に関して言えば、近隣に新築物件がなくても値上がりする動きが見られます。
例えば昨年竣工したパークタワー勝どきは今年に入ってから中古の価格が坪単価950万円と異例の値上がりを見せました。駅直結とそのデザインが評価されているのですが、やはり買いやすい価格ではありません。
そこで、高すぎる新築を避け、豊洲や有明の中古物件を検討するという消費者の動きがみられました。2019年に竣工した有明のシティタワーズ東京ベイはこうした動きを受け、坪単価が380から580万円に急上昇しています。」
都心・湾岸エリアでは中古、新築問わずマンション価格の上昇が続くようだ。北区や葛飾区のようなエリアにおいても、駅前にあるシンボルタワーやタワマンなど、限定的ではあるが上昇が見込まれると稲垣氏は話す。
しかし、そんな上昇が続く中で起きたのが、日銀の利上げをきっかけとする株価の変調と円高だ。日銀は8月1日より政策金利を従来の0~0.1%から0.25%に引き上げたことで、株価は一時ブラックマンデー超えの下落幅を記録し、為替も円高方向に流れが変わった。
これによってマンション価格は下がるのではという「期待の声」がSNSであふれた。果たして本当に下がるのだろうか。
株価・金利・為替のトリプルショックで暴落!?
日銀のさらなる利上げも想定されるが、まず金利の変動はマンション価格にどう影響するのだろうか。
「住宅ローンの変動金利は現在、最安で0.3%前後です。日銀は今後の利上げ可能性について触れており、金利次第では買い控えが起きるかもしれません。
1億円の物件を想定した場合、0.375%→0.525%→0.975%の変動金利ごとに月の支払額は25万4,099円→26万0,691円→28万1,122円と上昇します。0.375%と0.525%で差額は6,592円ですが、0.975%との差額は約2万7千円にもなります。
これだけ差があると、マンション需要に影響するのではないでしょうか。0.7~1.0%の実行金利がそのラインと考えられます」
ただし、短期間で急激に利上げしなければマーケットに影響しないと稲垣氏は見ている。
急激に上昇すると買い控えのマインドになりうるが、徐々に金利が上がれば購入マインドにそれほど影響はしないと考えられるからだ。
それでは円高はマンション下落につながるのだろうか。
「為替は外国人所有者の動向に影響します。円高局面では保有者が得するので、トレンドになると投げ売りに出るかもしれません。1ドルが160円の時に1億円のマンションを購入された海外の方は、1ドルが120円になると2499万9960円もの利益が出ます。
海外勢が好むマンションは1億超の物件が多いため円高の具合によってはかなりの数が売られる可能性があります。もちろんそれを飲み込むほどの内需があれば問題ありませんが」
それでは株価下落のほうはどうだろうか。一般に円高になると株価に下落圧力がかかる。そしてこれまでの推移をみると、日経平均とマンション価格には90%の相関関係があるという。円高になり株価が下がれば、少し遅れてマンション価格が下がるということだ。
「主要客層であるパワーカップルの場合、株式投資で含み益を得ているでしょうから、株価下落で含み益が減るとマンション購入のマインドが下がるかもしれません。投資家の方も同じです」
ということは利上げ、為替、株価下落のいわば「三重苦」でマンション価格は下がると見て良いのだろうか。
「いえ、結論でいえば都内のマンション価格は少しずつ上がると考えています。その3つの影響はあったとしても、急激な変化でなければ建築費の増加や堅調な需要に支えられ、マンション価格も堅調に推移するでしょう。もし下がるとしたら、震災や有事、経済ショックという本当に深刻な事態が起きてしまった時だと思います。
ただ、リノベーションの中古物件も含めれば、買いやすい物件は都内でも数多くあります。例えば田町にある1982年築のリフォーム物件は6500万円台で、世帯年収1000万円の世帯でも手が届く範囲です。華やかな話だけにとらわれずにしっかり探せば、よいマンションは必ずあります」
これから新規購入を考えている層にとって価格高騰はつらい話だが、自分の希望条件を見据えつつ、根気強く良い物件を探していく必要がありそうだ。
取材・文/山口伸 写真/稲垣ヨシクニ
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