1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 経済
  4. ビジネス

〈明暗二極化するアウトレットモール〉ECサイト全盛期にもかかわらず三菱、三井が業績好調の理由。一方、苦戦する大型商業施設の悲惨な末路は…

集英社オンライン / 2024年8月29日 8時0分

「販売店に不当ノルマ」でハーレーダビッドソン日本法人に立ち入り検査…問題の元凶は車体へのこだわりを捨てた“マーケ偏重戦略”にあった〉から続く

三菱地所・サイモンの御殿場プレミアム・アウトレットは2023年度のテナント売上高が前年の1.3倍近く伸び、1240億円となった。国内のアウトレットモールで1000億円を超えた例は初めてとなる。その要因としては国内の消費が回復したことに加え、インバウンド需要が売上増に貢献している。ただし、アウトレット業界では三菱地所・サイモンと三井不動産商業マネジメントの2強の寡占化が進んでおり、水面下では顧客の食い合いが起こっている。

【画像】テナント売上高1000億円越えしたアウトレットモール

EC化が進んでもアウトレットモールが廃れない理由

御殿場プレミアム・アウトレットは、2020年4月に増床リニューアルオープン。2000台収容の駐車場を新設、店舗面積1万7000㎡に88店舗が加わり、小田急グループのホテル「HOTEL CLAD」と日帰り温泉施設「木の花の湯」が開業。ショッピングだけにとどまらない一大リゾート施設へと変貌を遂げた。

御殿場プレミアム・アウトレットは、消費者心理をそのまま形にしたような施設だ。

アウトレットモールに足を運ぶ目的は大きく2つにわかれる。1つは安く買い物をすること。もう1つがレジャーだ。

JTB総研は「アウトレットモールに関するアンケート調査」を実施しており、「アウトレットモールへ行こうと思ったきっかけ」を尋ねている。その中で「家族等に誘われたから」(18.4%)と「家族で出かけたくなったから」(15.9%)という回答は、合わせて34.3%に及んでいる。

一方、「バーゲンがあったから」(23.7%)、「新しいショップがオープンしたから」(7.9%)、「買いたいものがあったから」(2.1%)は、合計で33.7%。家族でのレジャーとショッピングの要素が拮抗しており、ショッピングモールの目的はこの2つに集約されるというわけだ。

この調査の中で、アウトレットモール以外に行った場所として、最も多い回答は「温泉」だった。

アウトレットモールは百貨店など正規取扱店と顧客の取り合いを避けるため、都市部から90~120分程度の郊外に大型店を出店するのが一般的だ。その多くが高速道路のインターチェンジ付近に建設したこともあり、レジャー目的で訪問する顧客が多くを占めるようになった。

洋服などを安く買いたいのであれば、ZOZOTOWNなどのECサイトで十分であるし、遠くまで行かずともUNIQLOやGU、ZARA、H&Mなど都心にあるファストファッションでも質の高い商品を安価で手に入れることができる昨今。コロナ禍でEC化が進んだにもかかわらずアウトレットモールの集客力が強いのは、非日常体験ができるレジャー施設という要素があるからなのだ。

千歳・レラの弱点を克服するアウトレットモールを三井が出店

三菱地所のアウトレットモール事業が発表した、2024年3月期の営業収益は前期比12.4%増の573億円だった。2021年3月期は400億円台まで沈んだが、2023年3月期には早くも500億円台に達していた。なお、コロナ前の2019年3月期は466億円だった。2024年3月期は、そこから100億円以上も上積みしている。

そして、三菱地所は現在、店舗面積3万㎡、150店舗の大型アウトレット「京都城陽プレミアム・アウトレット」の開業をも控えている(2025年3月末事業完了予定)。

一方、三井アウトレットパークも好調だ。

主力施設であるMOP木更津は2024年3月期の店舗売上が640億円となり、前年の1.2倍に拡大した。ジャズドリーム長島が14.0%増の570億円、滋賀竜王は11.1%増の300億円となっている。

木更津は2025年夏にリニューアルオープンを控えており、増床で店舗数は330。国内アウトレット最大となる見込みだ。

大手が好調をキープする中、集客に苦戦する施設も目立ち始めた。その一つが新千歳空港近くにある千歳アウトレットモール・レラだ。

2024年3月末までに多くのテナントが閉店。9月1日からアトリウム区画の使用を停止すると発表している。

この施設は2005年にオープンし、2006年に早くも増床工事を行うなど、客足は好調だった。しかし、風向きが変わったのは2010年。札幌中心部と新千歳空港の中間に位置する北広島に三井アウトレットパークがオープンしたのだ。

レラの店舗数が145。三井は2回の増床工事を経て174となっていた。三井は知名度の高いテナントを集めたうえ、イスラム式礼拝堂を設置するなど、早くもインバウンド需要の高まりに目をつけていた。

レラは屋外型で、三井は屋内型。レラは開放感があるものの、冬場の厳しい寒さの中ではデメリットが目立つ。アウトレットのメインターゲットは、子供づれの家族であるため、屋内型で安心して過ごせる三井アウトレットパークに軍配が上がったというわけだ。

北広島のアウトレットパークは、三井が北海道に初進出したプロジェクトだった。アウトレットモールの商圏人口は200万人から300万人と言われている。三井アウトレットパーク札幌北広島は、札幌市からレラへの買い物客をせき止めるかのように出店した。商圏を奪いに行ったのは明らかだ。

わずか1年で閉店となったマッスルパーク

レラを開発したのはアメリカの不動産投資会社ラサール・インベストメント・マネージメントだ。

投資会社の場合、建物を所有して運営は外部に委託するのが一般的だが、ラサールは施設運営に積極的に関わってきた。2009年には西武プロパティーズ(現:西武リアルティソリューションズ)と商業施設企画のプロッドと委託契約を締結している。

2社と協業体制に入ったのは、三井の北海道進出に備えてのことだろう。西武プロパティーズはリゾート型ショッピングモールの先駆けである「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」を成功させた実績もあった。

しかし、契約締結後から敗色は濃くなり始める。

それを象徴するのが新設した「千歳マッスルパーク」だ。3期拡張工事で2010年にオープンしたが、わずか1年ほどで閉鎖された。

このアトラクションは、TBSの人気番組「SASUKE」などの企画制作をしていた樋口潮氏が代表を務めるモンスター・ナインが運営していたもの。会社は2011年11月に破産手続きを開始している。

マッスルパークは「SASUKE」にチャレンジできる、日本でも数少ないスポーツテーマパークだ。しかし、料金とクリアする難易度が高かったために集客に苦戦。短期間での営業終了となっている。その後、「キッズUSランドレラ店」として再オープンしたが、アトラクションの一部は閉鎖されたままだった。大規模な一区画を使い切ることなく終えてしまったのだ。

集客力を高めるための増床工事が欠かせないビジネスモデル

2023年6月には八ヶ岳リゾートアウトレットを運営する八ヶ岳モールマネージメントが事業を停止して関係者を驚かせた。

この会社は2006年7月に開業した茨城県初のアウトレットモールである大洗リゾートアウトレットの運営も行っていた。しかし、2009年に三菱地所があみプレミアム・アウトレットを出店し、こちらも千歳アウトレットモール・レラ同様に客足を奪われた形になった。

アウトレットモールは、集客力を高めるために絶えず増床工事を繰り返す必要がある。業績のよい施設に共通する特徴だ。そのため、資本力の弱い会社が運営するアウトレットモールの集客力が落ちると、リニューアル工事ができずに慢性的な売上減に見舞われるようになる。そこにコロナ禍が重なればひとたまりもない。

今後ますます、大型の商業施設は資本力が十分な大手2強の寡占化が進みそうだ。

取材・文/不破聡 サムネイル/Shutterstock

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください