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〈靖国落書き男を逮捕〉日本に引き渡しならずも中国当局は“見せしめ”で身柄拘束。落書き模倣犯、NHK中国籍スタッフによる「南京大虐殺を忘れるな」との不適切発言など日中トラブル続々…

集英社オンライン / 2024年8月28日 20時55分

〈あの靖国“放尿”迷惑男に逮捕状〉防犯カメラ調達役を確保。「脳がダメージを受ける」と中国に逃げ帰った“売名男”は性犯罪の“前歴”も?引き渡し不能でも待ち受ける“懲罰”とは〉から続く

中国の公安当局は、今年5月末に東京都千代田区の靖国神社の石柱に放尿するしぐさをし、スプレーで落書きした中国人の男を別の恐喝容疑で拘束した。当局は発生直後から男の行動に眉をひそめており、“別件逮捕”で動きを封じた可能性がある。一方、この男に触発されたのか、8月にも中国人が靖国神社に落書きをし、さらに、このニュースをNHKの国際放送で伝えた中国人スタッフが原稿にない歴史問題がらみの日本非難を口にするなど、問題は新たな展開を見せている。

【画像】今年5月、靖国神社に向かい“挑発ポーズ”を何度もとって撮影していた男

5月の落書き犯を中国当局が別件で逮捕

中国公安当局が逮捕したのは上海市在住とみられる董光明(とう・こうめい)容疑者(36)。「鉄頭」と名乗って中国の動画サイトでお騒がせ映像を流して名を売る“迷惑系ユーチューバー”だ。

「董容疑者は5月31日夜、神社入り口の石柱に登り柱に放尿するようなしぐさをし、赤色のスプレーで石柱にアルファベットで『トイレ』と書き、その様子を撮影した動画が6月1日に中国の動画投稿アプリ『小紅書』(レッド)にアップされ拡散しました。

警視庁は映像や周辺の防犯カメラの解析から後に董容疑者を特定しましたが、董容疑者は動画を撮影したとみられる中国人の許来玉(きょ・らいぎょく)容疑者(25)とともに落書きした後、羽田空港に直行し、6月1日早朝には上海に帰国していました。動画の投稿はその前後に行なったようです。

董容疑者は6月3日には中国の別の動画配信サイト『哔哩哔哩(ビリビリ)』に帰国宣言を投稿し、神社での狼藉は東京電力福島第一原発の処理水放出に抗議するためだという趣旨のことを主張しました」(警視庁詰め記者)

警視庁は礼拝所不敬と器物損壊容疑で董、許両容疑者の逮捕状を取り、7月にはスプレーを買って董容疑者に渡したとみられる埼玉県在住の中国籍の男を共犯として逮捕した。日本と中国との間には犯罪人引渡条約がないため、董、許両容疑者を日本で裁ける見通しはない。

「ただ中国外務省はこの事件の発覚直後、靖国神社は『日本軍国主義が発動した対外侵略戦争の精神的道具とシンボルだ』と従来の表現で否定的に指しながら、董容疑者らの行動については『外国にいる中国国民が現地の法律や法規を遵守し、理性的に要求を表現するよう改めて注意する』と発言しました。

日本との緊張のレベルを維持する姿勢を明確にしている習近平体制としては、靖国神社への狼藉を非難することはできませんが、個人の違法行為が原因で軋轢が深まることは日本に理があることになり格好が悪いので、みっともない犯罪は許さないという表明をしたと言えます。

このため、何らかの形で董容疑者らの動きを封じ、同種の事件再発を止めたい思惑はあるでしょう。今回の別件逮捕は、まさにそのような状況でなされました」(外報部デスク)

新たな落書き犯も身柄引き渡しはされない見込み

そもそも董容疑者は、ネットショッピングの商品を糾弾する映像で視聴者を集めたりする迷惑系ユーチューバーで、性犯罪で収監されSNSのアカウントが凍結された前歴があるとの情報もある。叩けばホコリはいくらでも出るような怪しげな人物なので、中国公安もその気になれば摘発する材料を探すのは難しくなかったことだろう。

「拘束された容疑は、日本に来る前の今年5月、ネット販売業者を脅して数百グラムの金を脅し取ろうとしたことなどとみられています。地元当局は、証拠品も押収しているようです」(外報部記者)

だが、模倣犯はすでに生まれている。

「8月19日の未明に、またも靖国神社の石柱に、フェルトペンで書かれたとみられるトイレを意味する中国語の『厠所』や『軍国主義』など計6つの落書きが見つかったんです。前夜に不審な人物が石柱の台座に上った姿を防犯カメラがとらえていました。

犯人とみられる男は事件の数日前に知人らと来日して新宿区内のホテルに泊まり、現場には一人で行ったとようです。

この男も、犯行直後の19日の午前中に、羽田空港から中国に出国していました。董容疑者とまったく同じ手口の“ピンポンダッシュ”のような逃げ方です。男は落書きが発覚する数時間前にその写真を中国のSNSに投稿し『この後香港に行く』とも書いていました。

警視庁が引き続き捜査をしていますが、器物損壊などで逮捕状を取っても身柄引き渡しを受けられないのは董容疑者の事件と同じです」(社会部デスク)

靖国神社を巡っては、本殿に向かって中指を立てて侮辱するような写真が中国のSNSに多くアップされている(#1)ほか、今年8月15日の終戦記念日には境内で中国語でまくしたてる人物と参拝者の間で口論も起きた。

こうした騒ぎや2回の落書き事件の背景には、靖国神社が「軍国主義の象徴」と中国や韓国で認識されている現実がある。

領空侵犯を受けたなかで日中友好議員連盟が訪中 

2回の落書き事件などは「単純粗暴犯」ともいえるが、8月の落書きはさらなる余波を誘発した。

「この落書き事件を伝えた8月19日午後のNHKの短波ラジオと衛星ラジオ、ラジオ第2放送の中国ニュースで、中国籍の40代の外部スタッフが原稿にはない発言をしました。NHKの説明では、落書きのニュースで、原稿にはない『「軍国主義」「死ね」などの抗議の言葉が書かれていた』との言葉を加えて伝えました。

さらにこのニュースの後に『魚釣島と付属の島は古来からの中国の領土です。NHKの歴史修正主義とプロフェッショナルではない業務に抗議します』という中国語の発言と、さらに『南京大虐殺を忘れるな。慰安婦を忘れるな。彼女らは戦時の性奴隷だった。731部隊を忘れるな』との英語の発言を続けました」(社会部記者)

魚釣島とは沖縄県尖閣諸島の中国での呼称だ。NHKは8月22日に「日本政府の公式見解とは異なる発言」であり「NHKが、放送法で定められた担うべき責務を適切に果たせなかったという、極めて深刻な事態であり、重く受け止めています。深くお詫び申し上げます」と謝罪を表明したが、責任問題が本格化するのはこれからとみられる。

この中国籍の外部スタッフはNHKの関連団体と業務委託契約を結び、22年も前の2002年からニュース原稿の中国語への翻訳や読み上げの業務を行なってきた人物。

董容疑者や8月の落書き男のように、失うものがない日本から中国へ逃げ帰ればいいと考えるような立場ではなく、長年従事したNHKの仕事を失うことを承知したうえで腹をくくって発言したことになる。

NHKは損害賠償請求や刑事告訴も検討しているというが、実効性があるかは疑わしい。

日中間では、8月26日に中国人民解放軍の「Y-9」情報収集機が長崎県五島市の男女群島沖の日本領空を侵犯した。

「中国による領空侵犯は初めてで、日本への軍事的圧力を一段階高めた形だ。中国外務省が『恥ずかしい真似はやめろ』と自国民に警告しても、同省よりはるかに強い力を持つ軍が日本に圧力を強めている姿を示せば、国民はそれが習近平政権の意志だと受け止めるでしょう」と国際部デスクは話す。

ところが領空侵犯された側の日本からは、翌27日に二階俊博・自民党元幹事長を会長とする超党派の日中友好議員連盟の一行が2019年以来となる訪中を始めている。29日までの中国滞在中に中国外交トップの王毅(おう・き)共産党政治局員兼外相に会う計画を立て、習近平国家主席との面談も希望し、日中間の懸案解決を模索するとしている。

だが、領空侵犯を受けた側の国会議員の集団が、直後に相手国を訪問することがどういうメッセージを送ることになるのか、彼らは理解しているのだろうか。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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