〈追及・斎藤兵庫県政〉「人が変わってしまったのかな…」学生時代までは“おねだり”ナシ、とにかく賢い優等生…ターニングポイントは総務省時代?他県職員からも“同情”されたパワハラ&たかり知事ができるまで
集英社オンライン / 2024年8月30日 13時55分
〈<兵庫県職員アンケート全容入手>「ボクは知事なんだぞ!」カニ、靴、革ジャン、姫路城のレゴ…“おねだり知事”のあきれたタカリ癖「視察先は何がもらえるかで決めている」パソコンを投げつけられた職員も〉から続く
「たかり」との表現がぴったりの恒常的な特産品おねだりや、些細なことで癇癪(かんしゃく)を爆発させるパワハラ癖。兵庫県職員のアンケートで数々の狼藉が挙げられた斎藤元彦知事が特異なのは、いまだに一言の謝罪もしていないことだ。来年度予算が成立する見通しが「ゼロ」(県関係者)というほど県政が停滞しても「県政を前に進めることが私の責任」と強弁している。何をこじらせればこうなるのだろうか。
〈カニ、靴、レゴブロックも…〉おねだりにパワハラは日常茶飯事…公表された兵庫県職員アンケート中間報告
祖父は有力者、幼少期は物静かで模範的な子どもだった
1977年生まれの斎藤知事は、地元神戸市須磨区の公立小学校に通っていた。東大からキャリア官僚になっただけに、当時から勉強ができることでは評判だった。小学校時代の同級生の母親が40年近く昔を振り返る。
「斎藤くんはとにかく模範的な生徒さんでしたわ。やんちゃな元気のいいグループとはちょっと距離感ある感じ。息子から聞いてたのは『とにかくあいつは賢いやつだわ』って話でしたね。近所でも、神童ではないですけどそんな感じに見られてましたわ。物静かで、先生の言うこともよく聞くおとなしい子やったみたいです。
お母さんも物静かで、お父さんも物腰柔らかい感じの人でした。しつけはしっかりしてたん思いますが、そのやり方も叩いたりとか人格否定みたいなことではないでしょうから」
斎藤少年がほかの子と違ったのは、祖父が地元の有力者だったことだ。本人の公式ウェブサイトで「長田区と須磨区でケミカルシューズ製造業を営んでおりました」と紹介する祖父は、神戸の地場産業、ケミカルシューズの業界団体トップに1971年に就任した人物。「ベルトコンベアーを導入した作業工程の機械化を進め、ケミカルシューズ業界をけん引し、大きくした立役者です」と地元記者は話す。
小学校時代の同級生の母親も「おじいちゃんが手広く商売やってはって斎藤君はおじいちゃん子だったって話は聞いたことありますわ」と回想。祖父は幼少期から斎藤少年にとって大きな存在だったようだ。
そんな斎藤知事は、中学と高校の6年間を実家を離れた愛媛県松山市の進学校で過ごす。阪神淡路大震災が襲った時の神戸にはいなかったことになる。
浪人、留年、平成不況で親の家系が急変
松山でも斎藤知事は好印象を残している。
「正直、今の報道とまったく結びつかないというか……。なんていうか印象がかけ離れてますね。高校高学年の頃は、ウチにも何度か遊びに来ました。斎藤さんは挨拶もしっかりしましたし、礼儀正しかったですよ。活発な子だったのでウチの子にも明るく話しかけていましたが、高圧的な部分なんてひとつもありませんでした」(高校時代の同級生の母親)
そして女性はこうも言う。
「ウチに遊びに来た時は晩ごはんまで食べて行くことが多かったのですが、それこそ今言われているおねだりみたいなことも言いませんでしたし、何か『ください』みたいなことを言われた記憶もありません」
つまり高校時代まではパワハラ気質もおねだり癖も見えなかったというのだ。
この女性は「今言われているような(人に)強くあたる子なら、息子からも友達にも慕われてなかったと思いますし、やっぱりどこかで変わってしまったのかもしれないですね…」と首をかしげる。
別の同級生の父親も「息子は今回の斎藤君の報道を見た時に『人が変わってしまったんかな』『こういうことするタイプではなかったんだけどな』って言っていた。息子は斎藤君と寮も一緒で、中・高6年間仲が良かったんだ。息子が、人が変わってしまったって言うんだから、当時と今報道されている斎藤君はかけ離れてるってことなんだろうな」と話している。
一浪後、東大経済学部に進んだ斎藤知事。秀才青年は意外なことに大学で留年している。
「平成不況で、親の家計が急変しました。一時は在学継続をあきらめかけたのですが、育英会の奨学金に救われました。ここで初めて、セーフティーネットの重要性に気づき、行政、そして政治の道に進むことを考えはじめました」(本人ウェブサイト)
そして、本人の話ではここでも祖父の存在は大きかった。
「『地方自治を司る総務省もおもしろそうだ』と思い、相談してみました。すると、祖父はこう言うのです。『名前の元彦は、元兵庫県知事の金井元彦さんから命名した』と。初めて知った名前の由来とこれまでの人生経験が重なり、私は総務省を選ぶことを決めました。地方自治の道を志し、いずれ、兵庫のために尽くすことが、入省時に抱いた目標と夢でした」(同)
その時からいずれは兵庫県知事にとの思いを抱いていたらしい斎藤青年。三重県や新潟県佐渡市、福島県飯舘村、宮城県に出向し東京と地方を行き来する生活を送る。
だが、この時期に兵庫県知事就任後と同様に部下職員にパワハラを行っていた気配がある。兵庫県議会が行った県職員アンケートにこんな回答があるのだ。
「昨年(2023年)夏に山梨県で開催された全国知事会議で本県幹部と担当職員がエレベーターで乗り合わせた相手から、『斎藤君のところか。パワハラで大変だろうけど、がんばって』といった趣旨のことを言われた」
公開されたアンケートの記述では、兵庫県職員に同情の言葉をかけてくれた相手がどの自治体の職員かは明らかではないが、「自分たちが受けた被害を、今兵庫県職員も受けている」との認識がなければ出ない言葉だろう
兵庫に出向した経験ナシ、何もわからない これ以上ない“軽い神輿”
さらに、斎藤氏は宮城県に出向した時代、阪神淡路大震災の経験から東日本大震災の被災地支援にも力を入れた兵庫県が宮城に送った幹部職員らと接近。宮城の特産品をもじり「牛タン倶楽部」と陰口をたたかれるほどに結束を強めていく。
「総務省勤務中、最後に大阪府に出向した斎藤氏は、松井一郎、吉村洋文の2人の維新知事からのおぼえがめでたく、牛タン倶楽部の助力と維新の推薦を得て3年前の知事選でついに兵庫県知事の座を手に入れました。
しかし“五国”と呼ばれ地域性が多様な兵庫県政のかじ取りは易しくありません。兵庫に出向した経験がなく何も分からない斎藤氏をこれ以上ない“軽い神輿”だと喜んだのが牛タン倶楽部。彼らがやりたい放題の県政運営をし、乗せられて良い気分になった斎藤氏はパワハラ、たかりといった個人的な気質や欲望を解き放ったのではないでしょうか…」(県関係者)
祖父を見て「地場産業を大切にしたい」と思ったことが政治を志す原点になった、とアピールする斎藤知事。だが、県内あちこちの特産品をタカリ倒し、「播州織の生産現場を視察した際、ネクタイを試着してそのまま(つけて)帰った」(職員アンケート)という手法まで編み出していたことが明らかになっている。
こうした知事の“破廉恥罪”や、昨年秋の阪神・オリックスの優勝祝賀パレードに絡んだ公金不正支出疑惑などを告発文書で世に知らせた元西播磨県民局長のAさんは、疑惑隠蔽が目的と疑われる人事報復を受けた後自死に追い込まれた。
さらにパレードを担当した課長Bさんも自死している。二人の死の背景に何があったのか。県議会の調査委員会(百条委)は8月30日から、斎藤知事と牛タン倶楽部の片山安孝元副知事(7月末に辞任)、井ノ本知明・前総務部長、小橋浩一・前理事、原田剛治・産業労働部長らへの証人尋問を含めた真相究明作業を本格化させる。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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