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「サビエル」じゃなくて「シャヴィエル」⁉ 一部教科書での表記変更で混乱する教育現場…テストではどちらを正解にするのか現役教師に聞いてみた

集英社オンライン / 2024年9月7日 9時0分

8月31日(土)放送のTBS報道・情報番組「情報7daysニュースキャスター」で気になる話題が取り上げられた。それは、日本に初めてキリスト教を伝えたとされる宣教師フランシスコ・ザビエルの名前の表記についてだ。一部の教科書では、「ザビエル」部分を「シャヴィエル」と表記する場合があるという。コロンブス→コロンなど、教科書表記が見直されることはこれまでにもあったが、これに対して教育現場では困惑の声が上がっている。

表記変更で困惑する、ものまね芸人のザビエル佐藤氏

2010年以降に見られるようになった「シャヴィエル」表記

1549年(天文18年)に日本に初めてキリスト教を伝え、「東洋の使徒」と呼ばれた宣教師フランシスコ・ザビエル。学生時代、この表記で名前を記憶した人も多いだろう。



しかし現在の一部の教科書では、「フランシスコ・シャヴィエル」という表記が使われているという。そしてフランシスコ・ザビエル以外にも、イタリアの航海者コロンブスが「コロン」と記載される場合があるなど、表記が変更されるケースが増えているそうだ。

これに対し、前出の番組内でコメンテーターを務めた元フジテレビアナウンサーで弁護士の菊間千乃氏は、「昭和脳なので、ザビエルはザビエルだから。シャヴィエルとか、ちょっと何言っているんですか?という感じになりますよね」と納得できない表情を見せていた。

では、実際に教育機関で使用されている教科書では、どのような表記になっているのか? ある教育ジャーナリストは、次のように語る。

「2010年以降、一部の教科書では《フランシスコ・シャヴィエル》と表記され始めているようです。これまで英語読みである《ザビエル》にしていたものを、ポルトガル語読みにしたということです」

現在、全国の中学校では、東京書籍が刊行している社会科の教科書が最も多く使われている。教科書改訂は、4年に1回の頻度で行なわれているが、東京書籍ではどう対応しているのか。

そこで「シャヴィエル」の表記に関して問い合わせてみたところ、次のように回答してくれた。

「弊社の中学教科書は、2025年4月から、改訂されたものが全国で使用される予定です。内容については、今年9月半ばまでは口外しないように文部科学省から言われているため、お伝えできません。しかし現在、弊社で出版している文部科学省検定済教科書『新しい社会 歴史』では《フランシスコ・ザビエル》と表記しています」

では、「シャヴィエル」と表記しているのは、どの教科書なのだろうか。ほかの出版社にも問い合わせてみた。

「歴史の中学教科書では、すべて《ザビエル》表記にしていますし、弊社では2025年4月の教科書改訂の際にも変更する予定はありません。しかし、高校の日本史の教科書はすべて《ザビエル》と表記していますが、世界史の教科書では《ザビエル(シャヴィエル)》としているものもあります」(某教育系出版社)

表記の変更は「子どもや教師にとって大きな負担」

このように一部の教科書の変更で、にわかに浸透しつつある「シャヴィエル」の表記。こうした教科書改訂を、教育現場はどう捉えているのか。兵庫県の公立小学校教諭に聞くと、「子どもや教師にとって大きな負担」と語る。

「4年に一度、現場で教科書の改訂内容を目にしていますが、とうてい子どもたちの実になるものとは思えませんし、大きな負担になっていると思います。当然、教師にとっても同じで『あれ? 今までどうやって教えていたっけ?』と常に苦戦しています。

私自身、小学生のときは学年によって円周率を「3.14」で習ったり、「3」で習ったりと振り回されてばかりでしたよ。学習塾に通っている同級生は当然、難しいほうで習いますよね。なので、親の収入によって教育格差がどんどん広がっていくことを実感しました。

文部科学省には、子どもたちや教師のことをもっと考えてほしいと思います。今のままでは、子どもが振り回されるだけで、とても意味のある内容改正とは思えない。無意味な教科書改訂に時間を割くのであれば、教員不足をはじめ、不登校の問題など積み上がった問題に対して、ひとつひとつ解決していく姿勢を見せてほしいと、正直思います」(30歳・男性・兵庫県公立小学校教諭)

現場の教師に話を聞くと、表記の変更とは別に、教科書改訂にはさまざまな問題が隠れていることがわかった。長野県の公立小学校教諭は「文部科学省は教科書改訂にあたり、どんな狙いで行なったのか、説明してくれない」と不満を漏らす。

「教科書改訂に反対する教師はいませんし、なかには『今回はどう変わったのだろう』と1ページ1ページ確認しながら、楽しんでいる様子の教師もいますよ。でも、やはり『こういう狙いで変えた』ということは説明してほしいですし、何より、どの箇所をどのように変更したのか提示してほしいと思います。

我々は文部科学省が定めた内容に従って子どもたちに指導する必要があるので、仕方がないことだとわかっていますが、大変そうにしている児童を見ると複雑になります。学習指導要領改訂によって中学校で習う内容が小学校におりてくることもあり、苦戦している児童もいるんです」(20代・男性・長野県公立小学校教諭)

テストで「ザビエル」と書いたら不正解? 

「シャヴィエル」表記の問題について気になるのは、全国の教科書が「シャヴィエル」に変更された場合、テストで「ザビエル」と書いたら不正解になるのかどうか、という点だ。これについては、東京都の公立中学校教諭が次のように見解を述べた。

「歴史上の人物名に関しては、仮に改訂前の教科書に記載されていた名前をテストで書いたとしても、マルにすることになると思います。テストで確認するのは、あくまでも正しい知識を持っているかどうか。改訂前の名前を書いたからといって、間違いにはならないと考えます」(30代・女性・東京都公立中学校教諭)

また、「シャヴィエル」表記が一般的になった場合、ニュース番組などテレビではどのように発音するのだろうか。これについて、テレビ朝日アナウンサーを辞めたのち、『TOKYO MX NEWS』のキャスターとしても活躍した現フリーアナウンサー・石井希和氏に聞いた。

「私がテレビ朝日にいたときは、年に1回くらい、全局のアナウンサーが集って言葉の統一表記や発音やアクセント、さらに新しく登場した言葉など、要注意の言葉についてどう伝えるか、という勉強会が行なわれていました。また、それ以外にも新しく出てきた企業名のアクセントなどは、NHKのニュース番組などをよくチェックし、それに参考にしていました。

教科書の表記が『ザビエル』ではなく『シャヴィエル』に統一されたら、いずれニュースやテレビなどで読み上げる際も、『シャヴィエル』に変わると思います。アナウンサーは“伝わる言葉で伝える”のが使命ですから、認知度が高い言語を採用していくことになるのでは」

何年後になるかわからないが、「フランシスコ・ザビエル」ではなく、「フランシスコ・シャヴィエル」という名前が全国的に使われる日が来るのかもしれない。

#2では大分の銘菓「さびえる」や歌マネ芸人「サビエル佐藤」に話を聞く。

取材・文/河合桃子
集英社オンライン編集部ニュース班

「ザビエル」の教科書表記が「シャヴィエル」に⁉「ずばり、名前を変えますか?」大分県の代表的銘菓「ざびえる」や、博物館、銅像、そしてあの“歌まねタレント”にも聞いてみた〉へ続く

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