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〈追及・斎藤兵庫県政〉「告発者は誰だ!」4人の県職員の1年分のメールを勝手に閲覧…徹底した“犯人さがし”と恫喝…百条委では産業労働部長がしどろもどろに「トータルでいえば知事の指示」とも

集英社オンライン / 2024年9月6日 17時46分

〈甘かった百条委員会の追及〉兵庫パワハラ県知事、答弁拒否が許されない場で「コメントは差し控える」“公開処刑”によって自死に追い込まれた県幹部への処分は「適切だった」と主張変えず〉から続く

斎藤元彦兵庫県知事やその側近の違法行為疑惑を告発した元西播磨県民局長、Aさん(60)が自死に追い込まれた事件。県の中枢にいる幹部がAさんの協力者をあぶりだすため、別の2人にもパソコン押収などの“強制捜査”をかけようとしたほか、少なくとも4人の県職員の1年分のメールを本人にも無断で調べていたことが分かった。幹部らの間で違法な個人情報の伝達が蔓延していたことも露呈した。

〈カニ、靴、レゴブロックも…〉おねだりにパワハラは日常茶飯事…公表された兵庫県職員アンケート中間報告

協力者わり出し、3人に“同時ガサ入れ”計画

Aさんは3月12日、斎藤知事や側近による公金不正支出や選挙違反、日常的なパワハラやタカリなど7項目の違法行為疑惑を書いた匿名の告発文書を県議や記者ら10人に郵送した。

3月20日に文書の存在を知った斎藤知事は、翌21日には“牛タン倶楽部”と陰で呼ばれる側近グループの片山安孝副知事(7月末に辞任)と井ノ本知明県民生活部長(4月に総務部長昇進後、更迭)、原田剛治産業労働部長、小橋浩一総務部長(4月に理事昇進後、更迭)の4人を集め調査を指示。その後、小橋氏はAさんのメールの解析を人事課に命じている。

「これら県幹部はメールの中に告発文書の骨子があるのを見つけ、Aさんに(攻撃の)狙いを定めました。ただ、ほかにも協力者がいると疑い“同時ガサ入れ”を試みます」(県関係者)

関係者によると、牛タン倶楽部は「庁内調査手順」という文書を作成。3班に分かれ、Aさんとともに、仲が良かった県職員のXさん、Yさんの計3人の職場に3月25日午前に同時に踏みこむ計画を立てる。当日、Aさんがいた西播磨県民局長室に入ったのが片山副知事ら2人だった。その際の約50分間のやり取りの音声が残っている。

「片山副知事が『誰に聞いたんや?』と詰問しましたが、Aさんは『言えません』『みんな噂してますよ』と、情報元を明かすことを頑なに拒んでいました。すると片山副知事は『噂をまとめたということやな』と、勝手に整理しています。

ただ、この時の片山知事の本当の狙いは、協力者の割り出しでした。人事ラインの幹部が『こんな告発は絶対一人ではできひん』と主張したため、拡散させた仲間がいると思っていたようです。

結局、Aさんのパソコンから告発文書を郵送した10人の宛名ラベルのファイルが出てきたため、“単独犯行”との見方に落ち着いたんです。実際にXさんの職場にはガサが入りましたが、パソコンの押収まではありませんでした。Yさんは職場に不在でその日は調べは受けていません」(県関係者)

 「噂をまとめた」との片山副知事の勝手な解釈を聞いた斎藤知事は、翌々日の3月27日の記者会見でAさんを「嘘八百」「公務員失格」と罵倒。文書の内容が次々と事実と判明している今も「Aさんが噂話を集めて書いたと認めたので、文書には真実相当性がない。そのためAさんは公益通報者として保護される対象ではなく、懲戒処分は適正だった」との趣旨の主張を続けている。

告発つぶしのため、無関係の職員に同意のない調査が行われていた

Aさんはその後、4月4日に県が設けた公益通報窓口で手続きを取るが、県当局はAさんの行為が公益通報に該当するか否かを判断する前の5月6日に、減給3か月の懲戒処分を出す。

「さらにAさんのパソコンから抜き出した私的なデータを、井ノ本氏は県議に見せて回り、斎藤知事を選挙で推した維新の県議は、これを文書問題調査特別委員会(百条委)で公開すべきと主張しました」(社会部記者)

「公益通報者保護法では誰が告発したかを詮索することも禁じられています。しかし知事らは最初から“犯人探し”をしてAさんを特定し処分を急ぎました。疑惑をかけられた当人やその支援勢力が、告発者を死に追いやったんです」(フリーランス記者)

それだけではない。9月5日、この問題を解明する百条委に証人として呼ばれた原田部長への質疑で、告発つぶしのため、無関係の県職員に本人の同意のない調査が行われていたことが分かった。

原田部長は百条委で、3月21日に知事が側近4人を集めた時に「知事からは(告発文書の)出所とか事実確認をしようとは言われた」と話した。それに対し、奥谷謙一委員長から「事実確認などしていないではないか」と突っ込まれると「私は直接の担当じゃないんで…」としどろもどろに。

さらに「文書の作成者を探そうとなったのではないか。知事からの指示なんですね」と詰められ、「トータルで言えばそう」と認めた。この日のうちにAさんのメール解析が命じられたのは先述の通りだが、対象はそれだけではなかった。

「原田部長の部下、産業労働部の4人の職員の1年分のメールを調べろと指示が出ている。中でも、(Aさんへの調査と)同じ(3月)22日に調査された人が2人いる」

独自に県職員らから情報を収集してきた竹内英明県議に百条委でそう迫られた原田部長は、これも事実だと認めたのだ。

収賄の疑いで兵庫県警は原田部長を事情聴取 

産業労働部の職員が標的にされた理由は、Aさんが告発文書で書いた7項目のうち、「知事のおねだり体質」を暴露した具体例に関係する職場にいたためとみられる。

告発文書にはこうある。

〈令和5年8月8日に加西市のコーヒーメーカー会社を視察した斎藤知事は、会社が渡そうとしたコーヒーメーカーの受け取りをマスコミがいる前では拒んでみせたが、同行した原田部長に「みんなが見ている場所で受け取れるはずないやろ。失礼な。ちゃんと秘書課に送るように言っておけ!」と指示し、後日無事にゲットした〉

9月5日の原田証言では、この製品は原田部長の求めで会社から原田部長に送られ、告発文書が出た後の3月27日に大急ぎで会社に返却している。

本人は百条委で「開封もしていない」と主張したが、実際に使われており返却されたのは別の製品だとの見方や、ほかにトースターも贈られ知事が使っていたとの証言もあり、実態は不明だ。収賄の疑いがあり、兵庫県警は原田部長を事情聴取している。

そして、原田部長が人事課にメール調査の標的として名指しをした部下職員は、自身の秘書と、コーヒーメーカーを一緒に返却しに行った総務課副課長だった。

「指示したというか、(Aさんの情報の)出所(調査)という意味で、(ネタ元になった)可能性があることでその4名の名前を挙げましたけど、意図を持って調べたとかは、私は知りません」(原田部長証言)

名を挙げるということはその4名を「調べろ」ということにほかならず、悪質な指示の弁解にもなっていない。この被害者の中には最近竹内県議に確認を求められた時に「メールを調べられていたことを知らなかった」と話した人もいる。

「人事課のほうから聞いた」→「3月25日に片山副知事から聞いていた」

先述の通り、Aさんは7項目の疑惑を告発。このうちタカリ問題はコーヒーメーカー問題を含め4つ、パワハラでも4例を示しながら「枚挙にいとまがない」と書いている。合計で13の具体的な問題行動が記されている中で、ネタ元と疑われメール記録などを調べられたのが産業労働部の4人だけとは考えにくい。

例えばパワハラ問題でも、斎藤知事が会議の会場建物のそばまで公用車で近づけなかったことに怒って出迎えの県職員を怒鳴り散らした事件をAさんが告発文書に書いたところ、片山副知事はAさんを県民局長職から解任した当日の3月27日に、Aさんにこの話を伝えた野北浩三・東播磨県民局長を「あまりしゃべりすぎるなよ」と恫喝している(♯12)。

ほかの疑惑でも関係する職員への徹底した調査や口封じが行われた疑いは強い。

原田部長の証人尋問で浮かび上がった県幹部のおぞましい生態はこれだけではない。原田部長は、井ノ本氏が持ち歩いていたAさんの個人情報を3月下旬には「(自分も)聞いた」と証言した。

人事担当職員以外が他部署の職員の個人情報を保有することは個人情報保護法に違反する疑いが強く、原田証言は違法行為が広く蔓延していたこと思わせる。

「誰から聞いたのか」と問われた原田部長は、はじめ「覚えていない。人事課のほうから」ととぼけたが、追及されると記憶をたどる仕草をした後、「たぶん上の方の人間、人事課長、副課長とかがいる場で(聞いた)」と証言したのだ。

 ところが原田部長の直後に非公開で証人に立った別の県幹部は「人事課はそのような情報を原田には伝えていない」と主張。

人事課も原田発言に抗議し、結局原田部長は6日午前に証人として再出頭し、「3月25日に片山副知事から聞いていた」と発言を訂正しながら、この情報が他の場でも話題になっていたとも話した。

原田部長が説明を変えた真意は不明だ。この情報を触れ回っていた井ノ本氏は9月5日の百条委に証人として証言を求められていたが、「殺害予告を受けている」などと主張して出席を拒んだ。

Aさんの人権がぞんざいにに扱われた実態の解明を目指す百条委の前に、さまざまな壁が立ちはだかる。百条委は真相にたどり着けるのだろうか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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