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<追及・兵庫県政>「言いかた気をつけたらよかったな…」自死した元局長の個人情報を、維新国会議員が一般人に漏えいしていた⁉ 記者の直撃に議員は…百条委は「事実であれば極めて深刻な話」

集英社オンライン / 2024年9月9日 19時1分

〈兵庫県知事・不信任決議秒読みか〉「(県庁に届く贈答品は)私が全部いただく」おねだり知事のあきれた“マイルール”に百条委員会では「支離滅裂やん」と大ブーイング〉から続く

兵庫県の元西播磨県民局長・Aさん(60)が斎藤元彦知事や側近らの違法行為疑惑を指摘する告発文を送った後、県から人事報復を受けた末に自死に追い込まれた問題で、維新の会所属の現職衆院議員が、県が押収したAさんの公用パソコンに入っていた個人情報とみられる内容を一般の有権者に話していたことが発覚した。議員本人は集英社オンラインの取材に、情報を話したことを「それは事実」と認めた。

〈直撃写真〉「可能性もあるという意味で言いました」記者の直撃取材に応じた維新の会・掘井健智衆院議員…ただし2度目の接触には「コメントできない」と取材を拒んだ

維新の会所属議員がAさんの個人情報を一般人へ漏えい

この個人情報を巡っては、知事側近の井ノ本知明前総務部長(7月末に総務部付に更迭)が県会議員に見せて回っていたとの証言が相次ぎ、県が調査している。

他にも、同じく知事側近の片山安孝元副知事(7月末に辞職)と原田剛治産業労働部長が、いずれも見聞きして知っていると、疑惑を調査する県議会調査委員会(百条委)の場で認めている。こうした行為は個人情報保護法に違反している疑いがある。

さらに百条委では、維新の会の増山誠県議がこの情報をすべて委員会で公開せよと要求し、認められなかった経緯がある。

Aさんの知人は「井ノ本前部長はAさんがメディアや警察に送った告発文書の信用性を貶めるため、個人情報を関係者に見せて回ったのです。この行為と百条委での公開要求の声がAさんを死に追い込む決定的な契機になったとしか考えられない」と指摘。Aさんの個人情報が適正に管理されていなかったことは重大な問題に発展しつつある。

さらに県職員でもない国会議員が街頭で一般の人に伝えていた疑いがわかったことで、事態の深刻さはいっそう増した。

問題の国会議員は兵庫県加古川市を地盤にする比例近畿ブロック選出の掘井健智衆院議員。発言は9月2日午前7時半ごろ、JR加古川駅の南口で辻立ちをしていた掘井議員と、知事の問題での維新の立場を尋ねた40代の男性、Fさんとの間の会話で出た。

Fさんが当時のやり取りを話す。

 「維新は知事問題をどう考えてるんですか、と尋ねたんです。斎藤知事は3年前の知事選で維新の推薦を受け、そこに自民党が相乗りして知事になったんですよね、と聞くと掘井さんは『いや、どっちかというと自民党さんが主導した』と言いながら、でも維新も推薦した責任はあると認めました。

その後掘井さんは、百条委では疑惑解明には限界があると言いながら、Aさんの告発文書は『自民党が一緒につくった』と主張したんです。さらに3月25日に片山副知事がAさんから公用パソコンを“押収した”と言い、県当局がそのパソコンから抜き出したものだとする個人的な情報の中身を話したんです。まさに『死人に口なし』。

維新が問題をどうとらえているのか、を聞いているのにそれに答えはなく、真偽不明の個人の情報を持ち出す。『一般の有権者にはこんな話でもしておけば誤魔化せる』と思っているのかと感じました」(Fさん)

駅前のやり取りで、出勤する人がそばを通るほか、掘井氏のスタッフも2、3人、声が届く近さにいる状況だったとFさんは話す。

掘井議員を直撃

これに絡んでは、9月6日の百条委で、斎藤知事の証人尋問の際に委員会メンバーの丸尾牧県議が次のように質問した。

「9月2日11時ごろに友人から連絡が入った。自民党からの話もあった。私の別の友人がJRの駅前で話した国会議員から元県民局長(Aさん)のプライバシー情報の一部が語られた。私のところにも音声データが届いています。国会議員本人の声です。

事実であれば極めて深刻な話で、兵庫県が情報流出源になる。早急に事実を確認し、事実とすればどういう経緯で情報が流出したのか確認する必要がある。事実は確認したか」

斎藤知事は直接答えず、井ノ本氏らに絡む調査を検討しているとだけ答え、丸尾県議は入手した音声データを提供するので県が調査をせよと求めた。

掘井氏が実際に指摘されたような言及をしているとしたら、県庁外に漏えいした情報をさらに一般の人に伝えたという点で、井ノ本前部長の行為より深刻な言動だといえる。

Fさんの証言は事実なのか。もしそうなら、掘井氏はどこから情報を聞いたのか。9月8日午後、現場のJR加古川駅に近い加古川市総合福祉会館で国政報告会を開いた掘井氏に直接尋ねた。

――加古川駅前で9月2日、パソコンから得た情報を話しましたか?

「ひとつ言えるのは、僕は意図的というか拡散したとかではないです。僕の情報っていうのは県の中で記者さんが僕に言ってきたことだから。その話を聞きましたよ。僕は信じたところはあるよね。『可能性のひとつとしてあるんかな』と、僕は考察するわけですよ」

――その可能性のひとつと思われることを話されたと?

「それはね、話の流れで僕は思うところもあると。それを考察したらこういう可能性もあるという意味で言いました」

――維新の県議から話を聞いたということはでなく?

「いや、記者。記者さんがやっぱり言うんや。百条委で何人かに言っている感じしません?百条委の質問の中で、(百条委に証人として出席した県の)職員さんが議員さんに言ったみたいなことが、答弁であったような気いするねん」

――県政記者クラブなどに所属し、情報を知っている可能性がある記者ですか?

「わからへん。僕は政治家ですから、付き合いがいっぱいあります。どこの記者さんかはわからへん」

――パソコンの中から出てきた情報の内容を話した人(相手)が少なくとも一人はおられたんですか?

「いますいます。それは事実ですよ。だからそれは事実ですよ。そういうことなんですよ。だから、もっと言いかた、気つけたらよかったな、いうのはありますけど」

個人情報保護法の制約で、疑惑とは無関係のAさんの個人的な情報は、百条委でも厳密に扱いが統制されており、「百条委で内容が語られたのではないか」との掘井氏の発言は誤りだといえる。また、情報入手先は記者だと言いながら、所属は「わからない」と答えたところが目を引く。

国政報告会後、掘井議員の態度は一変

掘井氏の今回の行為に絡んでは、前述の通り9月6日の百条委で丸尾県議が発言した直後、記者団が同委メンバーでもある維新の県議団団長の岸口実氏に対し、丸尾県議が挙げた国会議員は維新所属だと指摘しながら「党内調査はしないのか」と質問している。

岸口県議はその際、「ちょっと確認はしたいと思います。ただ、私が県連で調査する立場ではないので、しっかり役員会でそういう質疑の中でそういう話が出たということで、あとは追っかけたいと思います」と答えている。

だが、維新内部ではその後も掘井氏の行為の深刻さは本人も含め認識されていなかった気配がある。

掘井氏は9月8日午後1時半すぎに、取材に対して前述の回答をした後、予定していた国政報告会に入ったが、これが終わった直後の午後3時半すぎには、こわばった表情で「党の方針があるから、コメントできない」として一切の事実確認を拒むようになったからだ。

この2回の記者との接触の間に、掘井氏が党関係者と連絡を取り合い、状況をようやく認識した可能性も考えられる。

こうした中、知事選で斎藤知事を推薦し、問題発覚後も最後まで支援してきた維新は、掘井氏が取材を受けた8日午後、これまでの方針を大転換して斎藤知事に辞職を求めることを決定。

9日午後には藤田文武幹事長が記者会見で「県政に停滞を招いた。辞職して出直し選挙で民意を問うことが政治家に許されたひとつの手段だ」と表明した。
兵庫県幹部に対しても馬場伸幸代表らの名で、斎藤知事宛の「申入れ」を伝えた。

「県議会ではすでに、最大会派の自民党など維新以外のすべての会派が辞任要求で足並みを揃え、12日に要求を行なう方針で維新に同調を求めていました、維新は他会派と足並みをそろえていては知事をかばったせいで悪化したイメージを払しょくできないと踏んで、“抜け駆け”のように9日に辞職要求を出した形です」(兵庫県議関係者)

しかし斎藤知事は、維新の動きが顕在化した9日午前にも記者団に「百条委員会の調査にしっかり対応することと、県民のみなさんの暮らしや生活にとって大切な事業をこれからも進めていくということです」と述べ、辞職する気配をまったく感じさせなかった。

 いずれにせよ全会派が知事辞職を求めることになった。9月19日開会の県議会では10月3日の補正予算通過を待って不信任決議案が可決される公算が高まっている。同決議案が採択されれば斎藤知事は失職か議会解散のどちらかを迫られる。

「県政の混乱を避けるため、不信任された知事は身を引くのが普通でしょうけど、斎藤知事は今や敬愛する維新の吉村洋文大阪府知事の言うことにも耳を貸さなくなっているとの情報もあり、県議会を解散してしまうかもしれません。

そうなれば、衆議院解散を受けた総選挙とのダブル選挙の可能性もあります。維新には両方の選挙で相当な逆風が吹く可能性があります」(県関係者)

そんな状況で勃発した掘井議員の問題。さらなる打撃が必至となった維新には、党として早急に説明する責務があるのではないか。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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