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“夏フェス卒業”を発表した、サザンオールスターズのここ10年の軌跡…「国民的ロックバンド」でありながら、「日本ロック史における最大の革命児」桑田佳祐の唯一無二のバランス感覚

集英社オンライン / 2024年9月21日 13時0分

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サザンオールスターズが9月14日より行われる「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024」で夏フェスへの出演を最後にすることがニュースになった。オフィシャルHPで「我々高齢者バンドにとって、令和の夏は暑すぎるよ(笑)。」と桑田佳祐が発表したのだ。夏フェスを最後にするサザンは今後、なにかが変わっていくのだろうか? 『サザンオールスターズ1978-1985』『桑田佳祐論』の著者、スージー鈴木氏に2013年の活動再開以降の彼らの活動を解説してもらった。

【画像】サザン活動再開とともにリリースされ、その後10年の活動の指針となったシングル

1億人を喜ばせようという「業」のようなもの

まず、率直に今回のサザンの「夏フェス卒業」をスージー鈴木氏はどう受け取ったか。

「初めに聞いたときは8月と勘違いして(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』は今年、8月と9月の2回行われる)、一大事と思ったら9月だったから、暑さ的にはまだよかったと思います。僕は桑田佳祐が1956年生まれということを念頭において活動を見ているんですが、もう68歳ですからね。精力的に動いていますが、あまり無理はしないでほしいというのが、ファンとしての正直な気持ちです。

サザンは2009年に一度、音楽活動を中断する話が出て、大騒ぎになったことがあります。ロックミュージシャンが徐々に高齢化していて、アルバムが数年に一枚のペースになったり、活動がゆっくりになっていく中で、今から考えると適切な判断だったと思います。

サザンのライブを見ると『この人たちは本当にライブが好きなんだな』という感動と、1億人を喜ばせようという「業」を感じます。ビジネス的な要請もあるかとは思いますが、年齢的にも規模をあまり大きくしすぎず、小さいホールも含めた、いい感じのバランスでライブ活動をやってもらえればと。今年で夏フェスが最後だから、不安だ、どうなるんだろうってあたふたしてるファンはあまりいないんじゃないですかね」

デビューから46年、一線で活躍を続けてきたサザンだが、もちろん長い歴史にはいくつかの節目があった。

前述のツアー中断もそうだし(再開したのは2013年、以降はサザンか桑田佳祐のソロでほぼ毎年ツアーを行なっている)、2010年には桑田の食道癌の手術もあった。

その後、ファンの不安を払拭するように、2013年にシングル「ピースとハイライト」が発表された。社会への不安や希望を歌った同作は、桑田らしいウィット抜きのストレートな歌詞が一部で話題となったが、サザン復活を告げた作品だった。

「僕はこの曲がすごく好きなんです。“メッセージソング”という人もいるけど、その言葉から想起されるような、切先鋭いものではなくて、押し付けがましくなくて、あっけらかんと歌っている。MVもコントみたいですし。メッセージソングといえば、去年は『Relay〜杜の歌』で神宮外苑のことも歌っていました。国民的バンドが社会情勢を歌うのは、気持ちがいいなと思います。もっと若い人たちもやればいいのにと思う。

あの(『ピースとハイライト』発売時の)騒ぎは、いかに世間がサザン・桑田の音楽を聞いていなかったかの現れですね。もっと鋭いメッセージ・ソングもいくつかあったし、1982年の紅白でやんちゃしたりとか、昔の方がヤバかったのに、なんでそれを忘れているんだろうと思った記憶があります」

ロックのビートで老後を歌うという大実験

2015年にはサザンとして前作『キラーストリート』から10年ぶりとなるアルバム『葡萄』を発表した。

「この中では『栄光の男』と『はっぴいえんど』がよかった。『栄光の男』は長嶋茂雄の引退を立ち食い蕎麦屋で見て、最後はしょーもないセクハラで終わるって曲で、『はっぴいえんど』は自分の死のことを考えた“老後ロック”です。

桑田はスーパーロックスターだけど、歌詞にスーパーなところを出すことってほとんどなくて。老いぼれた昭和世代の男をロックにのせて歌うという、今まで誰もやったことがない実験をしているんです。

これは山下達郎も佐野元春もしない(できない)こと。シニアになってティーンエイジの恋を歌ってもいいけど、なんていうんですかね、ロックンロールとコレステロールの融合というか、ロックのビートで老後を歌うっていう大実験が今、行われているんですよ」

2021年に発売された桑田のエッセイ集『ポップス歌手の耐えられない軽さ』では「ライヴの楽しさと、お客さんあってこそのサザン」と綴っている。

「桑田は常に現役感覚というか、管理職のようにはならないところが魅力ですね。一線の営業マンとしてライブをやっていますよね。昔出版された本(『ブルー・ノート・スケール』)のあとがきで、インタビュアーの渋谷陽一は『ついに一回も桑田佳祐の口から、自分を絶対化したり、特殊化する発言が出なかった』と評しています。自分を絶対化しないからこそ、老後とか死とか、昭和世代の現実を歌う。

これから等身大の病気ロック、介護ロック、葬式ロックを歌えるのは桑田だけだと思う。まあ、本人はすごく健康に気を遣ってるでしょうけど」

サザンの最新シングルはドラマ『新宿野戦病院』の主題歌でもある「恋のブギウギナイト」と「ジャンヌダルクによろしく」、そして今秋には9年ぶりとなるアルバムの発売も予定されている。

「恋のブギウギナイト」は80年代ディスコを想起させるファンクチューン、「ジャンヌダルクによろしく」は70年代を彷彿させる横ノリのロックンロールだ。

昨年は「Relay〜杜の歌」以外に「歌えニッポンの空」「盆ギリ恋歌」など新曲が3曲発表されている。鈴木氏はどう見ているか。

「バランスをうまくとっているなと思いますね(笑)。メッセージソング、ラブソング、コミックソング……など、どこかに偏らず、満遍なく1億人をおさえていく戦略を徹底してやっている。

僕としてはあまりバランスをとりすぎず、正五角形が四角形、三角形のバランスになってもいいから、もっとジャンルを絞っていただいてもいいぐらいに思いますが、でも今の曲にあれこれいうよりも、新曲を出し続けていること自体にリスペクトです」

最後の夏フェス、セトリを大胆予想?…

鈴木氏もいうように、デビュー以来サザンはヒット曲を連発していたが、反面やんちゃなところもあり、下ネタ満載の曲もあれば、桑田佳祐がテレビ番組で、安倍晋三元首相を曲名にもじった「アベーロード」を歌って政治を茶化すなど、正しくロックな活動をしてきたバンドである。それが1億人のリスナーを想定するような「国民的ロックバンド」にいつ変わったのだろう。

「1985年に『KAMAKURA』を出して、一時活動休止に入ります。それで1988年に『みんなのうた』を小林武史のプロデュースでリリースし活動再開。その後『真夏の果実』や『涙のキッス』など、派手なタイアップをやり出した頃からじゃないでしょうか。

1990年にアルバム『SOUTHERN ALL STARS』を出したんですが、僕はこれ以降を『メガサザン』と呼んでます。ちょうどレコードからCDに変わる時代で、サウンドもハイファイで高音がきいた、キラキラした音になるんですよね。

サザンのファンって、マニアックな人の割合は割と少なくって、あの曲が好き、当時の自分を思い出すからって人が多いんですよ。でもポップスってそういうものですよね?」

デビュー以来、コンスタントにヒット曲を飛ばしてきたサザンだが、「国民的ロックバンド」というイメージがよくも悪くものっぺらぼうな印象を与えてしまい、本来の評価がされていない面もあるのかもしれない。

「桑田は日本のロックに革命をもたらした『日本ロック史における最大の革命児』だと僕は思ってるんです。あの歌い方と、サウンド、歌詞のラディカリズム。

以前、村上龍が、洋楽しか聴かずに日本の音楽はダサいと思ってたらしいんですが、初期のサザンに出会って、これで『アメリカン・グラフィティ』ならぬ『ジャパニーズ・グラフィティ』って映画が撮れると思ったらしいんですね。

つまり、アメリカ人が昔から享受していたポップスを、日本人が初めて手に入れたって書いていた。そんな一番の革命をした人があいかわらず下ネタをやっている、そのバランス感覚がいいですよね」

最後の夏フェス出演となる9月23日の「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」ステージは、全国300館以上の映画館でライブビューイングも実施される。鈴木氏の演出予想はこうだ。

「フェスの定番曲である『マンピーのG★SPOT』は必ずやると思うんですけど、見どころはその曲を歌うときにホースで水を撒くか、男性器の被り物をするか、それと渋谷陽一(『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』の元プロデューサー)への言及があるかどうかですね。前の『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』では被り物に『渋谷陽一』って書いてあったんです(笑)。それを見るのを楽しみに映画館に行こうかなと思ってます」

夏フェスは今年で最後だが、サザンオールスターズとしての活動は、桑田佳祐のポップスターとしての「業」がなくならない限り続きそうだ。昭和世代のオヤジでなくとも、もしかしたら最後となる「国民的バンド」の勇姿はぜひ目撃したい。


取材・文/高田秀之

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