「僕がきゃべつだって家族も知らないんです」1年間で約3億円“投げ銭”されるVライバーに「高額を貢ぐファン」「アンチ」「配信中の事故やトラブル」について訊いてみた
集英社オンライン / 2024年9月14日 12時0分
2023年3月から「TikTok LIVE」にて「Vライバー」として活動しているきゃべつ氏(29)。今年6月にはアジア圏のトップライバーが参加する大規模イベントの日本代表に選ばれるなど、同業界で圧倒的な人気を誇っている。活動を始めてから、すでに投げ銭で合計3億円以上をもらっているとのことだが、“貢がれる”ことに対してはどう思っているのか? また、やはりプライベートでは豪勢な生活を送っているのか? 本人に訊いてみた。
〈画像〉取材に答える「アバターではない」リアルなきゃべつ氏に「大金を稼いだことで、生活は変わりましたか?」と質問すると…
「配信は娯楽。リアルを充実させてから、投げ銭を楽しむべき」
──きゃべつさんは、配信者としては売れているほうなのでしょうか?
きゃべつ(以下同) おそらく国内トップ30ぐらいには入っていると思います。Vライバーとしては、TikTokの中ではたぶん1位です。Vライバーは世界的にもまだまだ少ないので、僕がTikTok LIVEで日本一である時点で、同時に世界一でもあるんです。最近もずっと右肩上がりですし、配信のイベントが重なると、さらに収益が多くなるのは事実です。多いときで、月間総ギフト額で約4000万円近くはいきました。
──Vライバーに投げ銭するのは、つまりリスナーが“貢ぐ”ということですよね。昨今のホスト問題ではないですが、あまりにも法外な金額を貢ぐと、問題も起きると思いますが……。
たしかに高額な投げ銭が問題化していて、今後規制が入るとも予想されていますが、これはもう7~8年前ごろからあるカルチャーです。18歳未満は規約で投げ銭できないようになっていますし、僕のリスナーさんは9割くらいが30〜50代の女性です。
──ファンの中には、借金して投げ銭をしている人も多いと言われています。申し訳ないと思いませんか?
そういう人がいるのは知っていますが、僕はそれを望んでいませんし、定期的に「無理して投げ銭しないでください」とも言っています。僕自身、配信は娯楽だと思っていますし、投げ銭やギフトは自分の生活をすり減らしてまでするものではない。なので、僕としては「リアルを充実させてから、投げ銭を楽しみましょう」って言うようにしています。でも、配信者としても、今後こうしたことが問題になっていくだろうなというのは感じています。
ホストにハマる女の子が体を売るのと似た怖さを感じることはあります。それこそ、会社に勤めている人がクライアントのカード情報を使って投げ銭してしまった、というニュースが去年報じられていました。そういったことは自分も望んでいないですし、投げられた側としても複雑ですよね。
一番高い買い物は「70万円くらいのパソコン」
──大金を稼いだことで、生活は変わりましたか?
いや、けっこう質素だと思いますよ。家賃30万ぐらいの2LDKに住んでいるのですが、毎日のように高級なものを食べに行くわけでもなく、家にいることが多いので、「Uber Eats」ばかり使っています。高級寿司店やキャバクラも、自分からは率先して行かないです。起業してから6年経ちますが、自分から誰かを連れていったこともないです。「きゃべつが来た」って写真を撮られるのも怖いですし、行ったとしても正体は絶対に明かしません。
地元の友だちも、僕がきゃべつだということは数人しか知りませんし、何なら家族にも教えていません。これは自分を守るための術というか……だから、「タレントと付き合いたい」とかもないですね。
たしかにお金は看護師時代より増えましたが、当時の生活も別に不幸だったわけでもなくて。昔から仲のいい友だちとご飯を食べるだけで充実感を感じていたので、お金が入るようになっても、その部分は変わっていないんです。高級時計を身につけたいとかもなくて……一番高い買い物は70万円くらいのパソコンかもしれないです。税金もちゃんと払ってますよ(笑)。
僕としては、数字を分析してお金やリスナーがちょっとずつ増えていくのが楽しくて。その結果として、ギフトをいただいているという考えなんですよ。自分が作ってきたものが積み重なり、それが結果として現れると、もっともっと上げていきたいという意欲に変わりますよね。だからお金が欲しいというよりは、仕事として今の活動が楽しいんです。
もうすぐ30代にもなりますし、会社を大きくしていきたいという思いもあります。きゃべつが起点となって会社が発展することがあってもいいと思いますし、その逆があってもいい。そのためにも、きゃべつという存在をもっと大きくしていきたいです。ライバー業界はまだまだ狭いので、それを表舞台に広げていきたいという気持ちもありますね。
──素顔を見せないことを心がけているようですが、配信中、アバターが外れる事故などはあるのでしょうか?
しっかり設定してれば、ないですね。業界ではたまに画面の切り替えミスなどが起きますが、最近のアバターアプリではカメラの映像自体を画面上で見えないようにすることもできるので、自分の顔が映ること自体がないんですよね。
配信のときは本当にアバターだけ映していて、体を映すのは、基本的にはウォーキング配信で足元を少しだけ撮るぐらい。今日のインタビューは、手元くらいは撮影していただいて大丈夫です(笑)。
──配信中にしゃべりすぎてしまったり、口が滑って余計なことを発言してしまったりする事故が起きることもあると思います。さらに、その一言が切り取られて、SNSなどで拡散されることもある。そのような事故を、どう防いでいますか?
おっしゃるとおりで、配信中は言葉の選び方がすごく大事です。たとえば、配信中に1コインとか安いギフトをもらったときに、「1コインでもチリツモだよね」と言ってしまうと、「チリツモって何?」と炎上してしまう。やっぱり舐めているというか、視聴者のことを考えてない人ほど、余計な一言で炎上に繋がったりしますよね。
ただ幸いにもTikTokはAI機能がけっこう発達していて、たとえばピンクワードを言うと、ライブが中断されたり、ペナルティを受けたりするんです。なので、インフルエンサーや大手メディアが配信者の失言を切り取って炎上してしまうことは、起きづらくなっていると思います。
僕の場合、余計なことを口にしてしまうのが怖いので、家ではお酒を飲まないようにしています。それに、お酒やタバコを画面上に映すのもペナルティの対象なんです。それぐらいTikTokのAI機能は発達しています。
「Vライバーなので、オフ会は絶対にやらない」
──アンチからのコメントや誹謗中傷はありますか?
ネットの世界では、誹謗中傷に近いようなコメントは一定数ありますよね。「消えろ」みたいなコメントもけっこう投稿されますし。僕はメンタルが強いほうなので、そういうコメントを投げかけられても、「虚しい人だなぁ」と思うだけですね。
あと、投げ銭してくれたファンの中には、「こんなに投げ銭したのに、反応が冷たい」みたいな文句を言う人もいますね。僕もなるべくそういう声が出ないように対応しているつもりですが、ある程度視聴者がいるので、すべてに対応しているとリアクションだけで配信が終わってしまう。なので、大事なのは、やはり投げ銭してもらうまでの「過程」だと思いますし、日ごろの配信に向き合い方だと思います。
それこそ、はじめて配信を見に来た人、そもそもフォローしていない人が投げ銭するわけがないですよね。実際に配信を見て、「面白そうだな」と思ったらフォローして、継続的に見始めたら「この人を応援したい」という気持ちに変わり、それがギフトという形に変わる、というイメージなので。
もちろん、なかにはいろんなことを言う人やクセのある人もいますけど、基本的には僕の配信を見に来てくれるリスナーさんはいい人が多いです。ファンレターのように毎日「大好きだよ」と送ってくれる人もいますしね。なかには「リアルに接触したい」と思っている人もいるかもしれませんが、僕はVライバーなので、オフ会などもやらないと断言しています。
──ライブ配信の次に流行るものは、何だと思いますか?
たとえば、中国では近年「ライブコマース」が成長を続けているんです。ライブコマースはネット通販のようなもので、ライブ配信上で商品をPRして、ボタン一つでその商品を買えるというもの。来年〜再来年ぐらいには日本でもライブコマースがトレンドになると言われています。
TikTok上にまだライブコマース機能はないんですが、実は僕も1回試したことがあって、ロールキャベツとか岡山のフルーツパーラーの盛り合わせを販売して、3時間で110万円ぐらい売れました。
流行りすたりは激しいものですが、ライブ配信はすでに根付いている文化だと思います。特に日本には“推し活”という特有の文化がありますよね。現在の投げ銭システムがすたれたとしても、ライブコマースがトレンドになればモノは売れるでしょうし、配信というコンテンツは長く生き残り続けると思います。
それこそ、2000年代後半から登場したSNSは、あくまでも誰かが作り上げたサービスをユーザーに提供するという形だったわけですよね。その点、配信はユーザーと一緒に作っていくもの。リアルタイムでコンテンツを作るという配信の価値は、ずっと残り続けると僕は思っています。
**************
インタビューの最後に「まだ認知が広がりきっていないライブ配信を、もっと世間に認めてもらいたい」と話していたきゃべつ氏。記者が失礼な質問をしても実直に答える、しっかりと“芯”がある青年だった。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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