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「まさか勝つとは…」番記者も驚いた石破新総裁誕生、では高市氏はなぜ負けたのか…投開票前に出回ったシミュレーション にあった”ヒント”

集英社オンライン / 2024年9月29日 19時50分

9月27日に投開票された自民党総裁選で、これまで非主流派として「自民党内野党」とも揶揄され続けてきた石破茂氏が新総裁に選出された。1回目の投票では高市早苗氏が1位で通過し、石破氏が当選するのは絶望的かと見られたが、決選投票にて僅差で逆転を果たした。なぜこのような結果になったのか。その背景には、派閥のくびきが弱まる中で揺れ動く議員たちの様々な思惑があった。

〈怒り心頭⁉〉石破氏が新総裁に選出された際、えらく不機嫌な表情をみせる麻生氏

ヒントは、投開票日の前の決選投票のシミュレーションに隠されていた

「決選投票の結果を聞いて一瞬耳を疑った。間違った内容が読み上げられたのかと思った」

大手マスコミ政治部で石破氏を担当した番記者の1人は、新総裁誕生の瞬間をそう振り返った。

1回目の投票では高市氏が党員票で1位となり、国会議員票との合計では石破氏の154票を大きく引き離す181票を得て決選投票に進出。

もともと石破陣営は党員票で他候補を圧倒し、決選で投票先を迷っている議員の浮動票を引き寄せる戦略を描いており、高市氏に党員票でも敗れたのは大誤算だった。

それだけに、石破氏が逆転勝利を果たしたことには関係者の中でも驚きが広がった。

「正直、1回目の投票で高市氏が1位となった時点で、もう決選投票も高市氏が制すると思っていた。まさか石破氏が逆転するとは思わなかった」(石破番記者)

そもそも、なぜ高市氏が1回目の投票でここまで強さを発揮することが出来たのか。
永田町関係者は語る。

「マスメディアによる序盤の世論調査では高市氏の支持率が3位となっているものが多く、小泉進次郎氏や石破氏に食い込むのに苦戦を強いられていたが、中盤から小泉氏が『解雇規制の見直し』などで反発をうけて失速。

後半戦は高市氏が2位に上がっていったが、最後に党員票で1位となったのは、安全保障に関する事案が立て続けに起きた影響もあるだろう」

中国広東省深圳では9月18日、日本人学校に通う10歳の日本人男児が中国人男性に刃物で刺され、死亡する事件が発生。

また、23日にはロシア軍機が日本の領空を3回にわたって侵犯する事案が起き、25日には中国が大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射した。

日本の安全保障への国民の不安が高まる中、自民党の中でもタカ派と言われる高市氏への期待感が党員の中で強まったと見られる。

また、議員票を巡っては、キングメーカーの1人である麻生太郎副総裁が、高市氏が決戦に残るよう働きかけ、1回目から高市氏に入れた麻生派議員が多数出た。

政敵である菅義偉前首相の息がかかった小泉氏も石破氏も応援できないため、これまで支援してきた河野太郎氏を切ってでも高市氏を押し上げる戦略に舵を切り、1位通過を後押しした。

このように、党員票でも議員票でも奮闘した高市氏だが、決戦では石破氏に総裁の座を許してしまった。この逆転劇はなぜ起きたのか。

そのヒントは、投開票日の前に永田町で出回った、とある決選投票のシミュレーションに隠されていた。

高市氏が保守系議員の票をまとめきれてない状況が…

今回の総裁選は9人立候補の大乱立となったため、1回の投票では誰も過半数を得られず決選投票にもつれ込むのは確実視され、事前の調査から決戦に残るのは石破氏、高市氏、小泉氏の中の2人とされてきた。

そうした中、決戦で誰が残るかのパターンごとに派閥や陣営の動きを分析した資料が、報道機関や各陣営では作られていた。

そのうち1つでは、決戦が「石破氏VS高市氏」となった場合、石破氏には菅氏のグループや岸田派、小泉陣営がつく一方、高市氏には麻生派や茂木派、小林鷹之陣営がつくとされた。

ここまでは各メディアで報じられている派閥やグループの動きと合致するが、気になるのが安倍派の動向だ。

資料では安倍派の大多数が高市氏につく一方で、一部は石破派に流れると予想されていた。

もちろん、これはシミュレーションなので、その通りに議員票が動いたかは定かではない。しかし、高市氏が保守系議員の票をまとめきれてない状況が生じていることは推察される。

高市氏が議員票をまとめられるか否かは、かねてからの課題だった。

高市氏はもともと、解散するまでは安倍派であった党内の名門派閥、清和会に所属していたが2011年に脱会。

理由は翌年の自民党総裁選で、当時の派閥会長だった町村信孝氏ではなく、安倍晋三氏を応援するためで、派閥に残るのは「不義理になる」と考えてのことだった。

だが、一方で派閥に残って安倍氏を応援した議員も多数いたため、高市氏と清和会の一部議員との間には溝ができてしまった。

2021年総裁選では安倍氏が高市氏の支援に動いたが、その安倍氏は2022年に凶弾に倒れ、さらに裏金問題を受けて清和会は解散。

自身の基盤となる保守系議員の取りまとめが困難になる中、一部が石破氏に流れ、決戦では涙をのむことになった。

また、決選投票では派閥や陣営の動きから離れた浮動票も石破氏に流れたと見られている。

総裁選より先に行なわれた立憲民主党の代表選では、党内でも保守派の論客として知られる野田佳彦元首相がトップに選出され、穏健保守への支持拡大が予見された。

「高市氏は保守層の中でも極右からの支持が厚いため、立憲が穏健保守にウイングを伸ばした場合、自民支持層が保守強硬派のみに追いやられてしまう可能性がある。

それならば、野党支持者からの人気が高い石破氏のほうが中間層を取ることができて選挙に有利だと考えられたのではないか」と永田町関係者は分析する。

総裁として自民党をどうまとめ上げるのか…

このように派閥やグループの動き、それらから離れた個々の議員の思惑が絡み合う中で石破新総裁が誕生したわけだが、今後の党運営は前途多難だと見られている。

「石破氏の党内基盤は自民党の中でも最弱。仲間づくりのための飲み会が嫌いで、『読むべき本がある』と引きこもるのが日常になっている。

一時は自身の派閥、水月会を立ち上げたが、仲間づくりに消極的な石破氏に嫌気が差して、1人、また1人と議員が離れていってしまった」と石破番の記者は語る。

しかし、自民党で裏金問題が噴出し、派閥が相次いで解散する異例の事態となる中、そんな非主流派が一気に総裁にまで上り詰めてしまった。

そのぶん、総裁として自民党をどうまとめ上げるのか、総理大臣として政府与党をどう引っ張っていくかは人一倍問われることになるだろう。

その答えは、おそらく本には書かれていないはずだ。

書を捨てよ、飲み会へ出よう。

石破氏にとっては、それが総理総裁としての第一歩になりそうだ。
                    
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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