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〈相次ぐホテルでのトー横キッズの転落死…〉ホテルに対策をたずねると「10月にネットを設置する予定」も“イタチごっこ”の現状…「サ終っ!」という少年の最期のメッセージの意味とは

集英社オンライン / 2024年10月1日 18時30分

歌舞伎町では上から人が落ちてくる――。いつからそんな冗談にもならない言葉が飛び交うようになったのだろうか…。今年9月、歌舞伎町の中心部のとあるホテルで若い男女2組が立て続けに飛び降り、死亡する事故が起きた。このホテルでは昨年8月にも16歳の少女が飛び降りて自死している。死亡した男女の周辺を取材するとともに、ホテルに対策を聞いた。

【画像】少年が最期に送ったSMSの内容

 

ホテルは宿泊客以外も出入り自由な状態だった

このホテルでは昨年8月20日に16歳の少女が、今年9月1日に10代の男女が、さらに同月20日に19歳の男女が飛び降りており、いずれも命を落としている。

昨年8月は屋上からフェンスを乗り越えて、今年9月の2件は最上階の12階の非常階段から飛び降りたとされている。ホテルの担当者に事故の詳細を聞いた。

「昨年8月20日の事故は宿泊者ではない外部の方でした。今年9月1日は宿泊者で、20日に起きた事故は宿泊者であるかどうか不明の状態で捜査中です。

まずは亡くなった方のご冥福をお祈りいたします。しかしながら飛び降りは無関係な人を巻き込んでしまう可能性がある非常に危険な行為であり、絶対にやめていただきたいと考えております。

従来より、警察と協力・連携して防止対策を行なってまいりましたが、警察から助言や協力依頼があった事項にとどまらず、お客様とホテル周辺の安全性の向上・確保のためさらに踏み込んだ対応を行なう予定です」

だが疑問なのは、なぜ宿泊者ではない外部の者が屋上や非常階段に入れるのだろうか。

これにはこの建物の構造に理由がある。歌舞伎町のトー横キッズの生態に詳しいライターのツマミ具依氏が言う。

「ここのホテルは1階がエレベーターの入口で2階が受付という構造上、宿泊者でなくても上のフロアに上がれる仕組みになっています。

また、今年9月に起きた2件の飛び降りは12階の非常階段からですが、非常階段のドアの鍵のカバーを誰かが壊した形跡があり、誰でも出られる状態になってました。

 さらに、トー横キッズたちは歌舞伎町を練り歩く中でどの建物が屋上まで上がれるかなどを熟知しており、それぞれ“お気に入りの風景”があるほどで、中でもこのホテルは簡単に上がれる建物として出入りするキッズたちが多かったのです」

自死した19歳男性の前日の様子

また、ツマミ氏は9月20日に自死した男性Aさん(19歳)と生前から親交があり、彼のこんな一面を知っていた。

「彼とはここ1年半ほどの付き合いでした。Aさん自身も親から虐待を受け、帰る場所はなく歌舞伎町の住民でした。

また、特殊詐欺事件の主犯として現在東京地裁で公判中の徳永晋太郎被告から指示を受けて事件に関わっていたことで逮捕され、少年院から出院したばかりでした。

出所後は薬物回復施設に入っていましたが、追い出されてしまい行くあてもなく歌舞伎町に戻ってきていました。

そして再び歌舞伎町で生きる中で、周囲のキッズ達に“辛い過去は変えられないけど未来は決まってないから生きていこう”と勇気づけるなど、人望も厚い存在でした」

そんな人望も厚い少年がなぜ?  Aさんと一緒に自ら命を絶った女性Bさん(19歳)のことを知るトー横キッズの高橋さん(15歳)が教えてくれた。

「Aさんはひとりで遊びに来てる私のことを『こいつのこと守ってやってな』って周りに声かけてくれる人でした。いつも"死ぬなよ"って。

でもBちゃんはいつも“死にたい”と言ってた。なんでふたりがあの日一緒に非常階段に行ったのかはわからないけど、Bちゃんが飛び降りたからAさんはひとりで逝かせるのが可哀想で飛び降りたのかもしれない」

前出のツマミ氏は、自死の直前までAさんと連絡を取り合っていた。

「飛び降りる前日の19日22時頃、彼のXの投稿から死を考えているように感じたので、私は心配になり“大丈夫なの?"とDMしたら、“サ終っ”とだけ返事が来て…。サービス終了という意味だと思うんですけど、彼にとってみたら、生きる=サービスで、終了=自死だったんだと思います。

これはマズいと思いAさんの友人に連絡したら、その友人もちょうどAさんとBさんがいるホテルの非常階段にいて元気な様子を確認していたんです。

だからその場を離れたそうですが、Aさんの友人から朝5時頃に“ごめん、死んじまった”と…。彼らの死がとても悔やまれます」

ホテル側の対策は?

しかし、直前まで元気そうだった彼らが、なぜ自死を選ぶのか。ツマミ氏は続ける。

「彼らの最期のポストを見たりその言動から察するに、AさんとBさんは“ニコイチ”的な存在だった。

お互いに恋愛感情に近い想いもあって、死を選ぶ直前にそれをお互い知ったんだと思う。通じ合えたからこそ“このまま(人生を)終えよう”と思ってしまったのかな。

一般的に言われる恋愛関係のふたりなら“これから楽しい日々が始まる”と思うところ、歌舞伎町にいる彼らは、どこか危うく破滅的なところがあるんです」

亡くなる前のBさんと何回か話したことがあるというトー横キッズの少女(14歳)にも話を聞いた。

「Bちゃんはいつも死にたい、生きるのが辛いって言ってた。でも私はそういう言葉を聞くたびに“一緒に生きてこ!”と言ってた。

友達が少なくなるのはすごく寂しい。ここの友達は学校の友達とは全然違う。楽しいし、自由。

私も学校に行きたくないのにお母さんから行けと言われて死にたくなることがある。でもやっぱり、ここのみんなといつまでも楽しく話したいから死なないよう頑張ってる」

10代の「死にたさ」「生きづらさ」は大人が思う以上に身近なものなのだろう。これ以上、事故が起きないためにもホテルには対策を練ってほしいところだ。

前出の担当者に事故後の警察からの指導や事故防止の対策について聞いた。

「警察からは事故の状況をふまえ、警察官立寄所の掲示物設置と屋上侵入防止柵の設置(こちらは令和6年2月に設置済み)、さらには非常階段転落防止ネットの設置を令和6年10月上旬に予定しています。

さらに夜間帯のスタッフ増員と巡回、声がけの強化をし、挙動不審な方、未成年と思われる方に対する声がけを強化していきます。

くわえて宿泊者以外の方が侵入できないように、また、宿泊するフロアしか降りることができないよう、館内エレベーターの仕様を変更していきます」

 ホテルの対策はもちろん大事だが、これ以上の不幸が起きぬよう、世の中がよくなることを願うばかりだ。

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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