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〈兵庫県・資金疑惑が拡大〉クラファン不発で阪神・オリックス優勝パレードのお金が足りず、副知事が泣きついた財団はポンッと最高額の2000万円を出した……その財団名を県はなぜか黒塗りに

集英社オンライン / 2024年10月3日 19時17分

〈兵庫・斎藤知事が失職、出直し選へ〉出馬を決断した理由は見知らぬ高校生からの手紙?「自分は県政を担える」とまるで政見放送のような自信満々の会見に県職員は報復の恐怖〉から続く

兵庫県知事だった斎藤元彦氏が、違法行為疑惑を告発した県職員へ報復したことを理由に失職に追い込まれた。告発の中には昨秋の阪神・オリックスの優勝パレードに絡み兵庫県が信用金庫11行から計2000万円の協賛金を集め、見返りに補助金を増額した疑惑もある。さらに、県がパレード終了後に2000万円の協賛をある財団に頼み込み、即日了解を得ていたことが集英社オンラインの取材で分かった。なりふり構わず金策に走った痕跡を隠すためなのか、県は今も財団に大金の協賛をすがった事実を公表していない。

〈証拠画像〉開示文書 「X財団」はランクも金額も黒塗りに…

パレード終了後に、宣伝ができないにもかかわらず集まった協賛金

昨年11月23日のパレードは大阪府と兵庫県が中心となり、公費を使わずクラウドファンディングで費用を捻出するとぶち上げたが、大誤算の結果となった。

開催前日、斎藤知事(今年9月30日に失職)は記者会見で資金状況をこう説明した。

「クラウドファンディングが約9300万円で、1万人以上の方に寄付いただいた。5億円を目標にしており、届かなかったところは現実として結果が出ています。

一方で企業協賛金は4億円強が集まる見込みになっており大変ありがたいと思っています」(斎藤氏)

結局、約6億5300万円の費用のうち企業などから121件、計約5億3100万円の協賛金・寄付金が集まった。

だが関係者は「クラファンの不足分を埋めるためパレード後も協賛金集めが続きました」と話す。兵庫県で陣頭指揮を執ったのが片山安孝副知事(今年7月末に辞任)だった。

片山氏による資金調達のうち、すでに明るみになっている信用金庫の拠出問題を先に振り返っておこう。

「片山氏はパレードの直前、県内信金業界の有力者である但陽信金の理事長に寄付の依頼と他の信金への寄付呼びかけを求めています。

片山氏は県信用保証協会の理事長経験者で、頼まれれば金融機関は断れない立場だったでしょう。結果、但陽信金はじめ11行が50~300万円を出し、計2000万円が集まりました」(県内の信金幹部)

片山氏は今年9月6日の県議会調査特別委員会(百条委)の証人尋問で、但陽信金に2000万円を明示して取りまとめを頼んだのではないかと質され「(理事長に)お願いに行きました。具体の額は言っていません」と答え、依頼の事実は認めている。

「しかし11行のうち9行はパレードが終わり、宣伝もできなくなったのに昨年11月24~30日に協賛金を出すと県に伝えています」(県関係者)

 宣伝にもならない持ち出しなら経営者は背任に問われかねない。ここで浮かんだのが協賛金の見返りに補助金をつけると県が約束したのではないかという疑惑だ。

「コロナ対策の一つに金融機関による無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)制度があります。県は金融機関がゼロゼロ融資で中小事業者を支援すれば1件あたり最高10万円の補助金を金融機関に出してきました。

昨秋、県は補正予算で当初1億円の補助金を計上しました。ところがこの規模が突然4倍になったんです」(同前)

百条委も注目するパレード問題、斎藤知事は否定しているが…

県職員のメモや証言によると、昨年11月中旬に片山副知事が1億円を「これじゃ足りん。4億にせえ」と指示。

担当課が算定根拠を変え要求額を3億7500万円にすると、今度は斎藤知事がパレード2日前に「全体をまるく4億円程度で」計上しろと求めた。

斎藤氏は指示を事実と認め「補正予算はキリの良い数字で予算をつけるほうが打ち出しとしてははっきりするので」と釈明した。

協賛金と引き換えに補助金増額の約束があったのではないかとの質問には「そういったことはなかった」と否定している。(♯8

百条委は10月24、25両日にパレード問題を集中的に調べる計画だ。

さらにここで、片山副知事が信金11行の総額と同額の2000万円を、信金からの入金よりもはるかに遅い時期である昨年12月末に獲得していたことが今回取材で判明した。

前出の県関係者が話す。

「昨年11月14日に神戸にあるX財団が100万円の協賛金提供を県に約束し、パレード後の12月27日に入金が行なわれました。しかし翌日の12月28日、片山副知事の名で財団に追加支援を求める文書が出ています。

『安全対策経費が開催直前にさらに必要となったことにより、結果として事業費が想定を上回る事態となりました』として、『更なるご支援を』と求めています。資金不足の主因であるクラファンの不発には触れていません」

 書類には要求額はなかったというが、県は同じ12月28日付でX財団に「2000万円」と記した請求書を発行しており、この日に2000万円の追加拠出が合意されたと関係者は指摘する。

信金11行からの計2000万円がそろった時期よりさらに約1ヶ月も後。財団から県への2000万円の追加支払いは今年1月31日で、パレードから2ヶ月が経っていた。

「片山さんは信金11行とX財団から計4000万円を追加分として集めており、パレード資金の不足分を埋める兵庫県のノルマは4000万円程度だったとみられます」(同前)

情報開示請求で開示された黒塗り、財団名も“プラチナ”ランクも非公開

X財団は2002年、まちづくりの調査研究や支援を行ない、望ましい地域社会の形成などに寄与する目的の財団として設立された。

兵庫県庁のそばで運営するビルには県警本部の一部部署が入居するなど、業務は県と密接な関係がある。拠出の有無や経緯を尋ねると、書面で次のように回答があった。

「当財団は『まちづくり』という観点から地域社会への貢献を目的とし設立され、現在に至ります。

(中略)優勝記念パレードにつきましては、同パレード実行委員会が『兵庫・関西の賑わいを創出し、都市魅力を発信すること』を目的として設立実施されましたことを受け、その趣旨に当財団が賛同し、専ら地域社会への貢献のための支援として、協賛金を支出させていただいたものとなります。

(中略)当財団は専ら地域社会への貢献のための支援として協賛金を拠出させていただいております。

取材とはいえ、当財団が自ら協賛金の金額や経緯等を申し上げることは、殊更に協賛により支援したことを自ら誇示したものと誤解されかねないこと等から、その詳細を当財団からご説明することは差し控えさせていただきます」

この説明通り、昨年度の「事業報告書」でX財団は、個々の助成額は記していないが、パレードとともに暴力団追放運動や国際交流NPOへ助成した事実を明らかにしている。

問題は、ただでさえ信金の件で注目されているパレードの資金集めについて、X財団が協賛した事実をいまだに県が明らかにしていないことだ。

信金絡みの疑惑の高まりで、県には、パレード協賛企業や拠出額を明らかにするよう求める情報開示請求が多く寄せられた。

これに対して、県は協賛額は非開示としながら、信金11行も含む大部分の企業名と協賛金額のランクを公開した。だが、X財団を含む3法人だけは企業名もランクも非公開にしている。

開示請求を行なった辻本達也明石市議に対し、県は8月下旬、3法人の名を伏せた理由を「企業名や金額を公表しないことを条件に協賛金を受けたから」と説明した。

だが、上述のようにX財団の事業報告にはパレードに助成したことが明記され、主催者であるパレード実行委員会の「事業報告」にも、X財団と、県が社名を伏せた他の2社のうち1社であるY社の名が「ご協力いただいたみなさま」のリストに載っている。

この事実を指摘すると、県民生活部総務課は「協賛金の申し込み時に非公表を希望されたので(開示文書では)黒塗りとしました。パレード事業報告を作成する際は改めて掲載していいか確認し名前を載せました」と説明した。

パレード事業報告の作成時にX財団自身が認めた法人名公表を、なぜ今もしていないのか。

副知事を辞職した片山氏に取材を試みると… 

さらに、X財団の計2100万円の拠出額は、兵庫県内で協賛した70超の法人の中で最高額だったが、X財団は協賛金額に応じて決まる「ランク」も黒塗りにされた。

総務課は「(大半のスポンサーは)すでに閉鎖されたパレード関係のホームページでランクが公表されたことがあったため開示文書でも明らかにしたが、3法人はそのホームページにも掲載がなかったので(今回文書でも)非公表とした」と説明する。

ランクは協賛金50万以上の「ブロンズ」から同1000万円以上の最高の「プラチナ」まで4段階ある。

社名が公表された兵庫県内企業は、上から2番目の「ゴールド」が1社あるだけで、他はすべて500万円未満の「シルバー」か「ブロンズ」。

県内で群を抜く額の協賛金を出し、唯一「プラチナ」ランクに入った最大のスポンサーが存在した事実自体が、県の情報開示では分からない状態だ。

こうした措置に、背景はないのか。

最大のキーパーソンでありながら副知事を辞職した片山氏に取材を試みたが、電話には出ず、ショートメッセージで質問を送っても回答はなかった。自宅に人の気配はあるが外から声をかけても反応はなかった。

財団の存在を隠せという指示はなかったのかとの質問に、総務課は「ないと思います」と答えた。

だが、財団名をなぜ「協賛金支払い時の約束」を理由に今も非開示にしているのか。不足分を副知事の一言で穴埋めしたように見える資金調達で成り立ったパレードとは何だったのか。

調達見込みの失敗から金策まで、パレード資金確保の実態が百条委で新たな焦点に浮上するのは必至だ。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

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