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停滞していた家電量販店・コジマが奇跡的な大復活! 要因となった“直球勝負の販売戦略”とは?

集英社オンライン / 2024年10月16日 8時0分

崩壊する「英会話教室」のビジネスモデル…背景に「コンサルティング型」と「オンライン型」の台頭も〉から続く

家電量販店を展開するコジマの業績が見事な大復活を遂げた。2024年8月期の営業利益が3割もの増益となったのだ。コジマは上期を営業減益で折り返していたのだが、下期でいっきに捲り上げた。家電量販店はコロナ禍からの反動で停滞気味だったにもかかわらず、コジマが大復活を遂げた背景にはいったい何が潜んでいるのか。

【図】コジマの売上高・営業利益・営業利益率のグラフ

営業利益率は5期ぶりに1%台まで低下

コジマは一度、沈みかけた。

2023年8月期の売上高が4%の減収となり、4割を超える営業減益となったのだ。営業利益率は2%を割り込んで1.8%まで下がった。

コジマの営業利益率が2%を下回ったのは2018年8月期以来だ。2019年8月期は人件費や店舗運営費などの経費削減を進めて大幅な増益を達成。翌年にはコロナ特需の受け皿となって営業利益率は3%近くまで上昇していた。

コジマは2022年8月期にすでに特需の反動減の影響を受けていたものの、販管費の抑制で何とか乗り切っていた。しかし、翌期はついに減収の影響を押しとどめることができず、大幅な減益となったのだ。

このときのコジマは具体的な業績向上策に欠けている印象があった。

接客力や専門性の強化、再生エネルギー事業の推進などが掲げられていたが、何が課題でどこに商機があるのかが判然としない。

2024年8月期上半期の業績は、悲観的なムードを払拭できるものではなかった。売上高は前年同期間比5.5%減の1293億円、営業利益は同12.5%減の21億円で、営業利益率は1.7%。売上高、営業利益ともに計画を下回っていたのである。

ゲームカテゴリーは3割以上の大幅な減収に

コジマは主力となるテレビや冷蔵庫、季節家電の売上が減少していたが、その穴を埋めていたのがゲーム関連商品だ。

しかし、2023年8月期下半期からはゲーム特需からの剥落が目立つようになる。しかも、2024年に入ってNintendo Switchの後継機発売がアナウンスされており、買い控えも起こりやすいタイミングだった。

コジマは2024年8月期のゲームカテゴリーの上半期売上高が、前年同期間比の34.2%減という大幅な減収に見舞われ、窮地と呼ぶに相応しい状況だったのだ。

コジマは新型コロナウイルス感染拡大のさなかであった2020年11月、常務執行役員だった中澤裕二氏を代表取締役社長社長執行役員に昇格させていた。会社を立て直した木村一義氏からのバトンタッチだ。

日興アセットマネジメントや日興コーディアルグループ(現:SMBC日興証券)の取締役をも務めたエリート経営者の木村氏とは異なり、中澤氏は店長職を10年経験した後に本社勤務となった現場たたき上げの人物。正にその手腕が試される局面だった。

新社長が繰り出した直球勝負の効果は?

もともと、ダウンロード型への移行が顕著だったゲーム業界で、パッケージ型のものは時代遅れのものとなっていた。

メーカーも原価がかかるパッケージ型からは手を引き、ダウンロードのみで販売することも珍しくなくなっていた。

家電量販店にとっても、ゲームは低粗利であるために旨味が薄い。このカテゴリーへの依存度が高い状態が続けば、中期的な苦戦を強いられるのは明らかだった。

そこでコジマは、下期に大型白物家電やテレビなどの高付加価値商品の販売強化に乗り出す。

2023年10月には「上板橋研修センター」を新設。接客や基本行動、商品の提案方法などを体系的に学ぶ研修コースを設けた。選任の講師が、コロナ禍による生活スタイルの変化、光熱費の高騰、脱炭素化に向けた社会情勢などを踏まえたうえで、提案力を高める接客術を伝授するというものだ。

折しも、家電業界は変革が求められていた。それが「指定価格制度」である。

この制度は、メーカーが指定した価格で販売する一方、売れ残りの返品を可能にする仕組みだ。パナソニックは2020年度から洗濯乾燥機などで試験的に導入しており、2022年度からは対象商品を広げ、2023年には日立も導入した。

指定価格制度は、過度な値下げ競争を行なう家電量販店へのメーカー側からの牽制だ。量販店の値引き合戦は苛烈で、一部の商品は4割引などで販売されることも珍しくない。

メーカーは値崩れを防ぐため、高頻度のマイナーチェンジを繰り返す。しかし、これが在庫処分という名の値引きに使われることとなり、更なる利益圧迫の要因となっていたのだが、この指定価格制度の導入によって、こうした商習慣が是正されるのだ。

しかし、ここで打撃を受けるのは、「値引き」という伝家の宝刀が使えなくなった販売員だ。

顧客が商品を購入して生活の中で生じるメリットを説明しきらなければならない。本質的な接客力が求められるようになったのだ。

社長交代や業績の低迷、家電量販店を取り巻く環境の変化。コジマはさまざまな歯車が回る中で、粗利率が高い白物家電の販売力・接客力強化という直球勝負に出た。

親会社との補完関係が鮮明に浮かび上がる

販売力・接客力強化でとくに顕著だったのがエアコン。販売員向けに設置工事研修を行わせるほどの徹底ぶりだった。

エアコンは買い替え需要が多いため、住居に設置できるかどうかの判別が難しい。販売員は顧客からの話を聞いて設置が難しそうだと判断した場合、余計なリスクが生じてまで販売することを嫌う。販売を強化しようとすれば、設置工事の知識向上が不可欠なのだ。

2024年も猛烈な暑さが襲い、電気代の高騰も続いている。高機能のものは20万円を超えるものもあるが、その分の付加価値も高い。新築やリフォームによる子育て世帯の買い替えであれば、補助金が出る可能性もある。

正に販売員の提案力が試されるが、その内容次第では高額商品を販売しやすいタイミングでもあるのだ。

コジマのエアコンを含む季節家電の2024年8月期下半期の売上高は、前年同期間比7.3%増の191億円だった。1割近い増収だ。

なお、日本気象協会によると、2024年夏(6-8月)の平均気温は2023年夏と並んで歴代1位タイとなった。つまり、今年は去年と比べて特別暑かったわけではなく、昨年と同等の水準だった。

さらにコジマが強化すると宣言していた通り、テレビと冷蔵庫も下半期は増収だった。これら2つとも上半期は減収だったにもかかわらずだ。そして、ゲームの売上は回復する兆しはなく、低調なまま推移している。

テレビ・白物家電の販売強化戦略は奏功した。

コジマの親会社であるビックカメラは、2024年8月期の売上高が前期比5.8%増の4503億円、営業利益は7.5倍の63億円に跳ね上がった。インバウンド需要を獲得して、大幅な増益となっている。

コジマの大幅な業績改善も寄与し、ビックカメラ連結の営業利益は7割もの増益となっている。

提案力を上げたコジマは日本の消費者への信頼を勝ち取り、都市型のビックカメラは増加の一途を辿る海外観光客の消費の受け皿となっている。

ビックカメラがコジマを買収したのは2012年だ。都市型と郊外型で補完関係が生じるとしていたが、その青写真がいま正にくっきりと浮かび上がったように見える。

取材・文/不破聡

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