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〈PTAはいらないは本当か〉五輪選手村跡地の新設小学校はPTAなしスタートも「あったほうがいい」ベルマーク、広報誌は必要か?

集英社オンライン / 2024年10月16日 7時0分

2024年4月、東京の湾岸エリアにある東京オリンピックの選手村跡地に中央区立晴海西小学校が新設された。選手村を整備したマンション「晴海フラッグ」内にあるこの小学校には、いわゆる「PTA」がない。「伝統をこれから作っていく学校なので、新しい組織にしたい」と語る齊藤光司校長に話を聞いた。

〈画像〉PTA内でも毎年賛否がわかれる“お仕事”といえば…

 

PTAゼロスタート、ネガティブイメージなくしたい

中央区で44年ぶりに新設された晴海西小学校には、晴海フラッグの住民を中心に、児童800人あまりが通う。PTAなどの保護者組織はまだない。

児童のおよそ半数はマンションを購入して引っ越してきた近隣の家庭の子どもで、ほかは全国から引っ越してきたり、外国人も1割程度はいるという。これからさらに入居が進んで児童数が増えることが予想され、第二校舎も用意されている。

 「伝統をこれから作っていく学校なので、PTAも新しい組織にしたい。4月に『はい、PTAに入ってください』と申し込み用紙を配って一方的に進めるのではなく、保護者の意見を聞きながら作っていきたい」と言うのは、齊藤光司校長だ。

「個人的には、PTAはあったほうがいいと思います。でもPTAという名前は変えたほうがいいかもしれません。最近の報道やニュースを見ていて、PTAを作ることそのものが難しいと感じます」

確かに、ネットの掲示板やSNSなどに記載された保護者の体験談などを見ると、「なぜ有休を取って、集まらなければいけないのか」「4月最初の保護者会で、委員が決まるまで全員が帰れない」とか、ネガティブな書き込みが目に付く。

「ですが、保護者の集まりはあったほうがメリットがある。さまざまな保護者と連携しながら作っていくことが大事。保護者の思い抜きに、教育は成り立たない。

PTAがあると、そうした意見を吸い上げやすく、思いや悩みを受け止めることができます。学校と子どもと保護者、みんなにメリットがあるはずです。

教員は、数年でいなくなってしまうので、地域の中で連携しつつ、学校の児童を社会全体で応援するべきです」(同前)

そうはいっても、保護者も仕事や子育てをしていて、PTAに参加する時間が確保できない人もいることは、齊藤校長も把握している。

「そうした保護者の意見を聞いて、新しいPTAを作りたい。PTAも進化していく。今までと同じでなくていい。時間をかけて意見を吸い上げ、時代に合ったスタイルでやりたいです。

そもそも、学校の教育はルールを決めて従わせるのではなく、子どもの意見で決めていくべきです。晴海西中(晴海西小学校と同時期に新設)の3年生は、1学期に自分たちで新しいルールを提案し決めた。PTAも同じです。

これまでのPTAのように時間的な制限や仕事量が多く、一部の人に大きな負担をかけるような組織ではなく、今後は、やりたい人がやりたいときに、力を発揮できるボランティア組織を作りたい」

10月に運動会、12月に落成式典があるので、受付などのボランティアを募集し、保護者からの意見も聞き、様子を見たいという。

「今まで私が見てきた学校では、PTAの人たちが卒業後もかりだされ、地元の町会のお手伝いをしていました。餅つき大会を開く学校では、家庭でもち米を炊いて炊飯器ごと持っていく習慣があり、それはやめてもらいました。

区のPTA連合には、入らないと情報が入ってこないですし、他の小学校と一緒に開催するイベントもあるため、PTAという形でなくても加わりたいと考えています」(同前)

PTA活動に必要なこと、必要ないこと

東京都内のある公立小で数年間、PTA会長を務める父親のAさんは、委員会を廃止し、ボランティア制への移行を進めている。Aさんに、PTA活動に必要なこと、必要ないこととは何かを聞いた。

「いろいろな考えがあるけれども、私は学校と各家庭、地域の橋渡しがPTAの大きな役割だと思っています。意味がないと思われる活動はやめたいと改革を始めました」

改革の具体的な内容は次のとおりだ。

①ベルマークのウェブ化

コロナ禍やICT教育の推進により、学校の連絡もオンライン化が始まり、タイミングはよかった。

「まずベルマークをウェブベルマークに移行させました。有給休暇を取って学校に集まってベルマークを分類するのは、今の時代にそぐわない。でもいきなりはやめられない。地域の方の協力のもと、1年目はデジタル化してお知らせしていき、将来的にはベルマーク回収をやめます」

②広報誌はハイブリッドに

広報誌のPDF化を始めた。それまでは児童数の倍以上を印刷してきた。

「今年度からは基本的にはオンラインで配信しています。学校のお便りがPDF配布になったので、広報誌も学校に合わせようと。ですが、紙で欲しいという方がいる。

今まではご自宅に持っていったり、郵送したりして役員が手配していた。記念にファイルしている家庭もあるので、入学した方が卒業するまで、6年がかりの電子化になると思います」

③苦情の多い委員決めをなくす、委員会廃止

Aさんも経験した「決まるまで帰れない委員決め」を変えようと、委員決めはコロナ禍にGoogleフォームでのアンケート方式にした。委員になりたくない保護者は、その旨を入力すればよく、これでうまくいったかに見えたが…。

「Googleフォームは便利ですが、手を挙げる方自体が少なくて、結局は役員が知人に声をかけて集めました。2023年度はGoogleフォームで立候補が足りなかった分を、復活した対面の保護者会で決めることに。『手が挙がらなかったらくじ引きで』と説明したら、ものすごい反発があって、それで委員選出をやめようと決めました」

その前に、委員を半分ほど削った。半数でも十分できるとわかったからだ。多くの保護者に参加してもらうべくクラスで何人か募っていたが、実際の仕事はそれほど多くはない。分担するからやりづらくなることもあり、人数が少なくてもできる。

「『委員を何回かやらなければならない』とポイント制のように思ってる方がたくさんいて。実は10年前からポイント制ではなくなっているのに、そういう誤解があるのがPTAの曖昧なところなのかもしれません」

「外注」でできること、できないこと

こうした改革を経て、2024年度はすべての委員会を廃止し、ボランティア制に切り替えた。その代わりに役員を増やした。行事があるたびに、必要なボランティアを募集する。

もし、熱心で有能な役員が集まらなかったら、どうなるのだろう。別のPTA役員の経験者に聞いたところ、役員が辞めるときに後継の人を探し、声をかけて確保する学校もあるという。

「役員候補がいなくなった場合には、学校のさまざまな活動をミニマムでやるしかない。例えば運動会の運営は、先生方がたくさんいる学校の場合は、PTAがいなくても回ると思う。

でも人員が足りなかったら、児童の競技や活動が減る。役員になりたい人が減って、結果的に行事を縮小し、広報誌もなくなり、記念品とか備品も買う余裕はありませんとなれば、『やはりPTAは必要だ』という理解が広がるのではないでしょうか」(Aさん)

PTAの委員会を廃止しても、保護者のサポートは必要だというAさんの意見もうなずける。前出のPTAの役員も、「ボランティア要員をなくしたら防犯上よくないし、観覧の整理もできません。学校に協力しようという気持ちがない保護者は、そうした事情を知らずに、行事を安全に楽しんでいるんですよ」と話す。

PTAには、活動を外注したらいいという意見も寄せられる。

「でも、学校の先生とのやり取りやコミュニケーションは外注できないし、子どもたちのプライバシー保護もあります。皆さんが言う『外注』は、広報誌を作るとか、運動会の運営を委託するとか、活動の一部分なんですよね」(Aさん)

先生の働き方改革や共働きの増加など、ジレンマを感じる変化もあるという。

「共働き家庭が増えた今、働いている保護者が参加できないPTA活動では困るので、そこが次の課題です。正直に言うと、専業主婦や自由業の方に頼っている現状があるわけです。

それに、先生の働き方改革も関係しています。先生方とのやり取りは、朝9時から夕方5時の間。先生は早く帰らなければいけない。でもPTAの役員会は夜にやりたい。なので、役員会は基本的には平日なんです。そうすると出席できる人は限られてきます。

役員のメリットの一つは、学校とつながれること。校長、副校長と直接コミュニケーションをして、考えていることや状況を聞けます。それをまたほかの保護者に伝えるというふうに、学校と関わってつなぐ役割なんです。

役員やボランティア活動で出会うことによって、地域でのつながりが増えてきます。それが生活のしやすさであり、子どもにそうした大人の背中を見せるのも大切だと思います」(同前)

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 なかのかおり

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