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YOASOBIが韓国の音楽TV番組に出演し、日本語で「アイドル」を歌った衝撃…26年前には日本語の曲を放送できなかった国で

集英社オンライン / 2024年11月14日 11時0分

なぜ韓国で『スラムダンク』が大人気なのか?「同じ文化を吸収した若者が韓国と日本両国にいる」ことの特別さ〉から続く

海賊版は出回っていたようだが、1998年の日韓共同宣言まで韓国では日本語の楽曲を公の場所で流すことは禁止されていた。また日本ではK-POPアイドルが韓国語で楽曲を披露することが一般的だが、韓国ではまだ日本人アーティストが日本語で歌うのは珍しいという。

【画像】韓国の映画館で初めて公開された日本映画の監督

書籍『在日コリアンが韓国に留学したら』より一部を抜粋・再構成し、YOASOBIの躍進を解説する。

YOASOBIが「韓国の音楽TV番組に出演」の衝撃

韓国における日本の音楽の人気にも触れておこう。留学中、特に印象に残ったのは、日本の大人気ユニットYOASOBIのテレビ番組「M COUNTDOWN」(韓国Mnet/通称エムカ)への出演だった。

僕が驚いたのは、日本語でヒット曲「アイドル」を披露したことである。韓国の音楽番組において、日本のアーティストが日本語で曲を披露するのは珍しい。

逆のパターン、つまり韓国のアーティストが韓国語の曲を日本の音楽番組で披露することには違和感がない人も多いだろう。

たとえば、韓国のガールズグループ、NewJeansは日本の夏フェスでのパフォーマンスが話題を呼んだが、すべて韓国語の曲だった。2023年の紅白歌合戦でも韓国語の曲を披露した。それに目くじらを立てる人はいない。それほどまでに、日本では韓国語の曲がポピュラーになり、定着している。

しかし、お隣の韓国で、日本語の曲が音楽番組で披露されるとなると、話は違う。なぜなら、1998年に日本文化が解禁されるまで、日本語の曲は放送することさえできなかったのである。海賊版はよく出回っており、日本の歌謡曲が広く聴かれていたという実態はあるにしても、放送のハードルは高かったのだ。

近年、韓国における日本のポピュラー音楽受容は大きく変化しているようだ。韓国に住んでみると、街中で日本語の曲に出会う。韓国ではカラオケ店などの店先にスピーカーが置いてあり、音楽が大音量で流されている。

その中で、日本の曲が流れていることが多いのだ。僕は、YOASOBIの「アイドル」も、韓国の街なかで初めて聴いた。

韓国人の好意的なコメント

では、YOASOBIは韓国でどう受け止められたか。YouTubeにある韓国語のコメントをいくつか拾ってみよう。

〈こういう文化交流はいいと思います。韓国のアイドルも日本に行って音楽番組にたくさん出演しているのに、なぜ日本の歌手は韓国の音楽番組に出たことで悪口を言われないといけないのか理解ができませんね〉

〈この歌をエムカ(音楽番組)で聞けるようになるとは笑よくやった本当に…どうやったらこんな声が出るんだろう〉

〈日本の歌手がたくさん来て公演してくれたらいいお互いに音楽交流をたくさんすることによってもっとK-POPの多様性を育てることになる〉

〈YOASOBIはライブが上手ですね……わかってはいたけど、本当に上手です(笑)エムカのような音楽番組には韓国人でなければあまり出てこなかったので興味深くもあり、良いですね〉

〈Mnetがこんな部分でオープンマインドで本当に見ていて気持ちがいい。YOASOBIの舞台は素敵でした、良い思い出になることを願っています〉

その他にも韓国語で書かれたコメントを読んだが、いずれも好意的な反応だった。YOASOBIの実力を素直に称賛するコメントにあふれていた。大好評だったことが分かる。

「日韓関係の最高到達点」と呼ばれた日韓共同宣言

くしくも、僕が留学した2023年は「未来志向のパートナーシップ」をうたった「日韓共同宣言」の発表から25年の節目の年であった。この宣言は1998年10月8日、小渕恵三首相と、訪日した金大中大統領が署名したもので、副題は「21世紀に向けた新たな日韓パートナーシップ」である。

政治、経済、文化など、43項目の行動計画がつくられ、「日韓関係の最高到達点」とも呼ばれている。

この宣言をきっかけに、韓国ではそれまで禁止されていた日本の映画や歌謡曲など、大衆文化が解禁された。韓国の映画館で初めて公開された日本映画は、北野武監督の「HANA-BI」である。北野映画は韓国でよく観られている。

1998年に合計約260万人だった日韓の一年間の往来者数は、2018年に1000万人を突破。1998年に約3兆6000億円だった貿易総額が、2021年には約9兆3000億円になった(朝日新聞デジタル、2023年10月5日)。

もちろん、この25年間の日韓関係を見ると、歴史認識問題や領土問題をめぐって対立してきた時期もある。ときのリーダーが変わると、外交関係は揺れてきた。しかし、文化・市民交流の面では、日韓関係は着実に進展してきたといえる。

これまでは日本側がK-POPを消費する側面が目立ってきたが、近年は韓国が日本のポピュラー音楽を消費する側面も目立っている。その象徴がYOASOBIの「アイドル」の流行だと思う。

2023年末の紅白歌合戦でYOASOBIが「アイドル」を披露したとき、大勢のK-POPアーティストたちがダンスを披露して盛り上げたことも話題となった。

このステージは生放送で見ていて、あまりに豪華な顔ぶれのパフォーマンスに感動した。「アイドル」はこのステージのために作られた曲であるとすら思った。

韓国人はYOASOBIに熱狂し、日本人はNewJeansに心を奪われる。そんな時代がすでにやってきているのである。

写真/shutterstock

在日コリアンが韓国に留学したら

韓 光勲
在日コリアンが韓国に留学したら
2024/10/9
990円(税込)
192ページ
ISBN: 978-4847067075

<JB Pressの好評連載を大幅修正・加筆して書籍化>

生まれも育ちも日本の韓国籍の男性が韓国に留学した結果、
それは単なる「リスキリング」ではなかった!

本書は元全国紙記者で在日コリアンの著者が、30歳にして
K-POP好きという「今っぽい理由」で決めた韓国留学の体験記です。

・韓国籍なのにスマホ契約で大苦戦
・イマドキ学生同士の日韓関係は意外なほど冷静
・現地の韓国人から英語での会話を求められる!?
・リスキリングは30代でも楽しめる

など、日本と韓国の狭間を生きてきたからこそ見える
韓国という国の内側に迫ります。

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