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“9日間一睡もしなかった”コカイン最長覚醒記録を持つキース・リチャーズを救った少女…ロックスターのイメージを創った男が無実になった日

集英社オンライン / 2024年10月23日 11時0分

生きる伝説、ザ・ローリング・ストーンズのギタリストのキース・リチャーズ。若い頃から酒とドラッグに溺れていた彼は1978年についに薬の違法所持で告発され、窮地に立たされた。そんな彼を目の見えない少女が救ったのだが、絶望の淵にいたキースに一体何が起きたのか。

【画像】今年81歳になるキース・リチャーズ

「行け! キース!!」ロックスターの責任感

ローリング・ストーンズのキース・リチャーズにとって、1970年代のある時期は、音楽よりもドラッグが中心の生活だったに違いない。

ストーンズが70年代に発表したスタジオアルバムが、すべてチャートの1位を記録したこともすごいが、キース個人はさらに9日間一睡もしなかったというコカイン最長覚醒記録や、ニュー・ミュージカル・エクスプレス誌の「次に死にそうなロックスター」ランキングで10年連続1位という大記録も所持している。

トップから落ちた時はがっかりして「しまいには9位まで落ちた。何てこった、もう死にたくなったぜ」と本人はジョークを飛ばした。

キースのドラッグ生活は、警察との闘いの日々でもあった。キース自身の言葉を借りるなら、それは「権力vs庶民」ということになる。

ロックスターのイメージを創った男としての責任感だろう。彼は世界中のファンの「行け! キース!!」的な期待を、決して裏切ることはなかった。

1977年2月、キースを除くストーンズのメンバーやスタッフは、カナダのトロントに集まっていた。ライブ・アルバム『Love You Live』収録用に、エル・モカンボ・クラブでギグを行うのだ。

しかし、キースだけがやって来ない。連絡もつかない。業を煮やしたメンバーは電報まで打った。

「俺たちはプレイしたい。お前もそうだろ? 一体どこにいるんだ!」

やっとのことでカナダの空港に到着するも、まずはアニタ・パレンバーグ(事実上の妻)の所持品に薬物が付着したスプーンが見つかって逮捕。

そして宿泊先のホテルでは、スイートルームのベッドでいつものように倒れ込んでいたキースの顔を、警察は何度も平手打ちした。

45分後にキースは“目覚め”て逮捕連行。大量のブツが発見され、警察は転売目的による麻薬の違法所持で告発することに決めた。

ちなみにキースはこの時、テープレコーダーの使い方に戸惑っている取調官に、ご丁寧にも使い方を教えたそうだ。

さらにタイミングの悪いことに、当時のカナダのトルドー首相の若妻マーガレットが、ストーンズが宿泊するホテルでバスローブ姿になっているところを報道されてしまう。

まだ20代だった彼女は、夫と別居したばかりで解放的だったのか、メンバーのロン・ウッドと“短い時間に特別なものを共有”した。

これによって、ストーンズ潰しに拍車がかかった。警察がターゲットに絞ったのは、言うまでもなくキースだった。

「グルーピーになりたいなら、首相の妻になるのはやめた方がいいぜ」

キースはなぜ無実になったのか?

保釈金を積んで釈放になったものの、パスポートを取り上げられてホテルに拘束状態のキース。懲役の可能性もあり、弁護士たちは2〜5年は喰らうだろうと悲観した。

他のメンバーたちは、身の危険を感じてカナダを脱出。そんな孤独な状況下で、キースはプライベートなレコーディングを行う。これが伝説の“トロント・セッション”だ。

ジョージ・ジョーンズの『Say It's Not You』、タミー・ウィネットの『Apartment Number 9』、ジェリー・リー・ルイスの『She Still Comes Around』、そしてデビュー前に刑務所に収監された経験があるマール・ハガードの『Sing Me Back Home』──。

ここで聴けるキースの哀しみの歌声は心を打つ。吹き込んだのは、ドラッグで命を落とした親友、グラム・パーソンズから教わった物悲しいカントリー・ナンバーばかりだった。

この夜、絶望の淵に立った音楽を愛する男は、この世にいない友に対して何を想ったのだろう。

1978年10月23日。長い裁判の末、ようやく判決の日が来た。

当初からキースが金欲しさに麻薬を売ることなどあり得ない笑い話だったが、判事は薬物浄化の治療に専念することと、目の見えない人たちのためにコンサートを開くことを条件に、ロックスターを投獄しないことを告げる。

「これは目の見えない少女リタのおかげなんだ。彼女はストーンズを追いかけてあらゆる会場にヒッチハイクで駆けつけてくれていた。俺はあの娘が安全に車が拾えたり、食事ができるよう手を打ったんだ。俺が逮捕された時、リタは苦労して判事の家に辿り着いてこの話をしてくれた。俺の天使、リタ」

これを機にドラッグから距離を置くようになったと言われるキースは、この頃リリースされたストーンズの『Before They Make Me Run』(アルバム『Some Girls』収録)でこんなことを歌っている。それは“やつら”との闘いに別れを告げるための、心の叫びだった。

言うべきことを言って やるべきことをやったら
まだ余力があるうちに動き出せ
やつらに走らされる前に 自分で歩き出すんだ

文/中野充浩 サムネイル/Shutterstock

参考・引用/キース・リチャーズ自伝『ライフ』(棚橋志行訳/楓書店)、『キース・リチャーズ 彼こそローリング・ストーンズ』(バーバラ・シャロン著/CBSソニー出版)

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