昭和上司とZ世代若手の板挟み…35歳中間管理職の女性教員の苦悩「土日は部活引率で正直婚活どころじゃない」
集英社オンライン / 2024年11月2日 16時0分
〈35歳になる演歌歌手・大江裕、祖父母の「孫が見たい」発言が一番の悩み…2025年の“36(三郎)イヤー”に向けて返すべき演歌界への恩義〉から続く
千葉県立高校に勤める体育教員の女性(35)は、まさにZ世代の若手と昭和世代の上司を繋ぐ中間管理職として奮闘中だ。「まだ若いから」と上からは仕事を振られ、部下の教育係も担当。人手不足の過酷な教育現場で重責を担いつつ、プライベートの夢も追う35歳現役教員のリアルな姿に迫った。
昭和上司とZ世代若手の繋ぎ役は「正直しんどい」
「30代に入ってからは、土日の部活指導で自分の時間が〝削られる〟という感覚が強くなってきました」
そう語るのは、千葉の県立高校で体育教員として勤める35歳の女性、ゆいさん(仮名)。32歳のとき、この学校に正規職員として赴任。現在は体育主任を務め、20代の若手と40代以降の昭和世代を繋ぐ中間管理職のポジションにいる。
「ベテラン世代からは『まだ若いんだし、これからの世代が頑張ったほうがいい』と出張が伴う仕事をバンバン振られ、年齢が近いという理由で20代の若手教員への指導係も担い、足りないところをフォローする。
ベテランの昭和世代からは『俺たちの時代は担任を持って部活も土日関係なく引率して、そんなのは当たり前なんだよ!』って言ってくるし、私たちより下の世代は『そんなの実質週7労働で、俺たち休めなくないっすか?』って感じで、働き方の価値観も根本的に全く違う。正直、その世代を繋ぐのはしんどいし、どちらの価値観も理解できるので、完全に板挟みですよね」(ゆいさん、以下同)
ゆいさんの表情には疲れがにじみ、ときどき溜息交じりで、その口調からは強いストレスを抱えているように感じた。
職場では責任あるポジションを任されつつ、プライベートでは「結婚して子どもを産みたい」という思いから、昨年結婚相談所に入会。密かに婚活を始めたというが、「正直、部活の引率で土日も仕事だし、デートの予定も立てられなくて婚活どころじゃないです…」
人手不足、激務、土日返上「当たり前」の教育現場
小学生の頃から教員という仕事に憧れ、高校卒業後は体育教員を目指し、某体育大学に進学したゆいさん。その後、千葉県内の私立高校に非常勤講師として採用された。
着任直後の20代前半は、憧れの仕事に就けたことに胸が弾み、必死に業務に食らいついていた。しかし20代半ばを過ぎたあたりから「私はいつ常勤になれるのだろうか」と不満が溜まっていった。
自分より後に入った後輩は、母校出身という理由で早々に常勤になった。「20代で若いし独身だから」と土日返上で運動部の指導を任されながらも、正式な文書に名前が載るのはいつも正規の顧問教諭。部活指導に力を入れても、進学重視の学校だったため、「部活は勉強の邪魔にならないようにしてくれ」と他教員に言われたこともあった。
この学校にいても、自分が正当に評価される日はこないように感じた。ゆいさんはその間、公立高校の教員採用試験に何度も挑み、9年目にして合格。32歳で現在勤める千葉県立高校に正規で採用された。ただそこでも新たな試練にぶつかった。
「32歳って教員の世界ではもう中堅なんですよ。私は正規で担任持つのも初めてだったけど、周りを見たら同世代は主任を務めていたり、学年会議でバンバン意見をだして仕切っていたりして、『私だけ遅れている』という焦りや劣等感はすごく感じていました」
とはいえ、人手不足などの関係もあり、赴任2年目から急遽、体育主任を任されることになり、「それはそれで大変だった」とゆいさんは振り返る。
「業務量も多いし、容量もつかめず上手く回せない。だけど人手不足だから業務を引き受けざるを得ずに、その都度キャパオーバーになってしまって。自分は全然ダメじゃんって毎日凹んでばかりでした」
結婚に焦りも、仕事との両立が困難
そんなゆいさんも赴任して4年。相変わらず業務量が多くて余裕のない日々だが、35歳の節目にプライベートの夢にも意識が向いてきたという。
「女性として生まれたからには、子どもを産むという経験をしてみたいと昔から思っていました。私の親世代は『結婚=女性の幸せ』という価値観がまだまだ強いのもあって、最近は『結婚してほしい』という思いが母からビシビシ伝わってきます(笑)
だから、40歳までの5年間は結婚・妊娠に向けて強く行動していきたいです」
そう意気込むゆいさんだが、やはり悩む先は教員の多忙な働き方と婚活との両立だ。
あまりの忙しさから昨年入会した結婚相談所も現在、一時休止中だという。
「運動部の顧問を持っていると、土日も練習や試合があって、思い通りに予定が立てられない。休みたいなって思う時もありますが、『体育教員で独身なのに、土日の部活の練習にでられないってどういうこと?』という謎の圧も昭和世代の上司から感じる…。
でも、そうなると週7日勤務になるんですよ。婚活しててもデートの隙間が捻出できないし、忙しい人って思われたらデートだって誘いづらいじゃないですか。そうなるとやっぱり仕事に理解のある同業者じゃないと一緒に生活するのは難しいのかなって」
同世代の友人の多くは結婚し、すでに第二子も出産。子育てに奮闘している友人の姿を見ては、焦りは募るばかり。そんなゆいさんに改めて35歳という年齢に対して思うことを聞いてみた。
「正直、もう35歳になってしまったと悲観的に捉えてます。私も早く結婚して子どもを産みたいなって思っているからこそ余計にそう感じてしまう。仕事は楽しいし、やりがいもある。毎日とても充実してるんです。
ただ自分の人生のための時間を意識的に作っていかないと、月日がいたずらに流れてしまう。新たな世界に行くための努力も同時に進めていかないと、チャンスを掴み損ねてしまうと思うんです。だから自分の人生も積みながら、保健体育の教員として、今後も現場で活躍していくのがこれからの夢ですかね」
取材・文/木下未希 集英社オンライン編集部
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