年収600万、持ち家アリでも普通レベル…脳梗塞をきっかけに婚活を始めた35歳の“婚活市場”の厳しさ「相手から求められるハードルがどんどん上がっている」
集英社オンライン / 2024年11月3日 16時0分
〈昭和上司とZ世代若手の板挟み…35歳中間管理職の女性教員の苦悩「土日は部活引率で正直婚活どころじゃない」〉から続く
35歳から婚活を始めたエンタメ関係の仕事をする東海地方出身の男性・ミヤさん(仮名)。これまで結婚にあまり興味がなかったが、この年齢を境に婚活を始めたという。きっかけになったのは、35歳で発症した脳梗塞だ。仕事上、週に3、4回くらいは徹夜することが当たり前の環境だった当時、職場で突然倒れて救急車で運ばれてしまった……。
仕事場で倒れて入院・リハビリを経験
「私の仕事は特に年末が忙しく、その日も徹夜をして家にくたくたで帰ってきました。雨が降っていてずぶ濡れになり、すごく寒かったのを覚えています。とりあえず夜ご飯を食べようと思ったのですが、みそ汁のお椀が手からすべり落ちてこぼれ、さらにご飯もなんだかうまく噛めず、口からこぼれ落ちました。
『なんだか調子悪いな……』と、そのときはそのくらいにしか思わなかったのですが、翌日も同じようなダルさのまま。とりあえず会社に出勤したところ、会社で倒れたのです」
それから約半年、ミヤさんは入院してリハビリなどをする中で、結婚への想いがわいてきた。
「僕は一人っ子で、親も父親が亡くなって今は母親だけ。あと10年もすれば、本当に一人になってしまうな……と感じたのです」(ミヤさん、以下同)
こうしてミヤさんは結婚相談所に入会。本格的に婚活を始めることにした。しかしそこで待っていたのは、想像をはるかに超える婚活の苦労。これまで30人ほどとお見合いをして、仮交際にまでも何人か進んだのだが、すべてがうまくいかなかった。
「スーツの着こなしがダメ、メンズメイクでつけていたリップが汚いと言われたり、会社が倒産するから婚活どころではなくなってしまったなどなど……さまざまな理由で断られました。もちろん僕からお断りする場合もあったのですが、ここまで上手くいかないものかと感じましたね」
年収600万弱で中央値 婚活市場はレベルが高すぎ?
そして婚活をするうえで一番強く感じたことが、35歳を取り巻く、若いころとはまったく違う恋愛環境。ちょうど35歳から本腰を入れて婚活を始めたことで、“35歳”という重みを強く実感したという。
「若いころは自分もそうでしたが、お互いに好きという感情だけで交際することができますし、社会的なステータスは後から知っていくくらいでした。しかし35歳で婚活となると、やはり、まずみられるのは社会的なステータス。自分は年収600万円弱程度ですが、婚活市場において、35歳でこれくらいは中央値かもしれません。
持ち家を持っていますが、それも大きなアドバンテージにはなっていません。都内在住でマイカーをもっていればようやくちょいプラス。とにかく、35歳ともなると、相手から求められるハードルがどんどん上がっている気がします」
確かに20代のころは、各職業で年収にそれほど差がない。家やマイカーを持っていないのも当たり前だ。しかし35歳にもなれば、会社内で昇給したり出世したりで、年収に差が生まれ始め、どれだけ貯金をして計画的な人生を歩んできたかが如実に表れだす。
35歳から婚活をはじめようと思っても、それまでの積み重ねですでに差が生まれ、気づいたときにはどうしようもないというパターンもある。
また、恋愛観も若いころとは大きく変わり、惹かれる異性の性質が変わっている。エンタメ関係の仕事をしているミヤさんは、この点も強く感じたそうだ。
「20代のころなんて、エンタメ関係の派手な仕事で不規則に働くのがかっこいいと思っていたし、周りからもそう見られている実感がありました。10代のころにちょっとヤンチャな人がモテるように、20代も少なからずまだその延長だったと思います。
しかし35歳となった今、相手から求められるのは、完全週休2日で、定時帰りの仕事についている人。“休日が合わない”という理由でお見合いを断られたこともあります(プロフィールでわかるのだから先に見とけよとも思いましたが……)。銀行員とか公務員とか、そのほうが結婚生活をイメージしやすいのでしょうね」
お互いに地雷だらけ 35歳の婚活のリアル
さらに向こうから求められるハードルは上がる一方で、やはり自分の中でもそれなりに妥協できない点が増えているという。ルックスが好みの女性とお見合いをしたが、ある点から自分からお断りしてしまった経験もあると話す。
「その女性は食べるのがめちゃくちゃ早いし、食べ方が汚かったのです。ほかのパターンですと、何回会ってもずっと敬語をやめない女性に萎えたこともあります。敬語といっても普通の“です・ます”調ではなく、部活の後輩のような“~っす”みたいな敬語だったのが特に萎えるポイントでしたね。
自分でも細かいかなとは思いますが、35歳となれば、それまでにいろいろな人を見てきているわけですし、意識していなくても勝手に比べてしまいます。若いころは小さなコミュニティーでその人しか見えていませんでしたが、今はそうじゃないのですから」
さらに交際相手ではなく、結婚相手を決めるという判断で相手を見ることも、婚活が難しい原因の一つだ。中には、どうせ結婚するなら、「今まで付き合ってきた誰よりもいい相手と……」というモチベーションで婚活をしている人も少なくない。
そんな中で、相手の“地雷”となる行動を避け、相手に気に入られるのはかなり大変だ。
大人になって、自分の価値観がしっかりと形成されているからこそ、“許せないこと”も増えている。35歳の婚活では、自分の陣地も相手の陣地も地雷だらけ。地雷を踏まずにたどり着けた2人だけが結ばれるのだ。
若いときは、空を飛んで相手のところにまで行くこともできただろうが、35歳の大人はしっかりと地に足をつけ、一歩一歩踏みしめて進んでいく。
「あと思うのは、フラれたときのショックが若いころとはケタ違いですね。『また新しい人と1から関係を築き上げなければいけないのか……』という時間を浪費してしまった徒労感と、年齢的な焦りを感じます。しかし何よりも単純に、相手から拒絶されてしまったことがショックなのです。
自分のアイデンティティが確立されている分、フラれたら人生を否定されたくらいに思ってしまうんですよね。仮交際までいってからフラれたときには、一週間仕事がまともに手がつかないくらいのダメージでした」
35歳から婚活を始めるメリットは「ナシ」
35歳での婚活苦労話を明かしてくれたミヤさんだが、逆に35歳から婚活を始めたからこそのメリットはないかと聞くと、ハッキリと「ありません」と話す。
「いまでは同僚や友だちとバーベキューなんかすると、子どもを連れてくる人が多い。一人でいると虚しくなってきます。それに、今から結婚して子どもができたとしても、子どもが20歳になるころにはもう60歳でよぼよぼやん……とか思うと、ただただ焦りますね」
ミヤさんは35歳から婚活を始めてからすでに3年が経過した。“35歳”という年齢について今、思うことはあるだろうか。
「自分が35歳のときは、その年齢を特に意識はしていませんでした。しかしそこを超えた今は、35歳が節目だったなと感じます。結婚だけじゃなく、体力的にもだいぶガクっと落ちるタイミングで、僕は実際に病気もしましたし。35代後半になるとやれることは狭まりましたね。 だからこれから35歳になる人にアドバイスするとすれば、結婚したいなら35歳までにはしろよと(笑)」
取材・文/集英社オンライン編集部
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