「予想以上に厳しい…」公明党代表が”落選危機”も… 比例復活もなしでまさに崖っぷち。池田大作氏死去後、初の衆院選でまさかの事態か
集英社オンライン / 2024年10月22日 17時15分
この国の行く末を決める「超短期決戦」の衆院選はいよいよ終盤戦に突入。自民党に逆風が吹くなか、連立政権を支える公明党も正念場を迎えている。埼玉14区では、石井啓一代表が比例に重複立候補をせずに小選挙区に勝負を賭けるという「落ちたら終わり」の背水の陣で、まさかの接戦を強いられている。公明党関係者の脳裏に浮かぶのは、当時の代表が〝討ち死に〟をした15年前の悪夢だ。
〈写真〉15年前、公明党代表だった太田昭宏氏を破った“小沢チルドレン”の女性議員
「予想以上に厳しい情勢」
「なかなかシビアな数字が出ている。もともと厳しい戦いになるとは思っていたが、これほどとは…」。投開票日前の最後の週末を終えた公明党関係者は言葉を失った。選挙戦中盤に実施した報道各社の情勢調査の結果に「衝撃を受けた」という。
注視しているのは、「埼玉14区」。首都圏のベッドタウンである草加市や三郷市を抱えるこの選挙区は、「1票の格差」是正のための「10増10減」の区割り変更の影響を受けた選挙区だ。そこに唯一の与党候補として名乗りを上げたのが、9月に党代表に就任したばかりの石井啓一代表なのである。
重複立候補をしていないことから、比例復活はなく、小選挙区で敗北すれば国政からの退場を強いられるという危機的な状況にあるが、「予想以上に厳しい情勢」(同)なのだという。
メディアの情勢調査もその実情を如実に映し出している。
「埼玉14区には石井氏を含めて計6人が立候補していますが、ライバルとなっているのは国民民主党から立候補している鈴木義弘氏です。
その鈴木氏との戦いで、いずれのメディアの調査でも厳しい結果が出ているのです。日経は石井氏を『やや優勢』としていますが、毎日は『接戦』、読売は『激しく競り合う』としており、いずれも横一線の戦いであることを示している。陣営は相当危機感を募らせているようです」(大手紙政治部記者)
党勢維持への「深刻な危機感」
今回が小選挙区としては初陣となる石井氏。1993年の初当選以来、比例代表東京ブロックや北関東ブロックで当選を重ねるなか、公明が2023年3月に石井氏の擁立を決めた。
連立を組む自民側としては選挙区を譲った格好となったが、その合意に至るまでには両党での激しい駆け引きがあったのだという。
「『10増10減』で選挙区の数が増えたのは東京、神奈川、愛知、埼玉、千葉の5都県。あわせて10の選挙区で調整が行なわれましたが、決定に至るまでには揉めに揉めた。
埼玉では、今回から県内の選挙区が1増で計16区になり、これまで草加、三郷市などを地盤に自民で当選してきた2人が、それぞれ3区と13区から出馬することになりました。
新たな区割りとなった14区に石井氏が入り込む形となりましたが、地元の県連同士の話し合いはすんなりいったわけではなかった。石井氏の出馬を巡って自民党県連の反発は大きく、今もしこりが残っている状況です」(同前)
選挙区を巡る与党内での対立が表面化したのは昨年5月。当時、幹事長だった石井氏が、茂木敏充幹事長(当時)ら自民執行部に「信頼関係が地に落ちた」と言い放ち、東京の選挙区での選挙協力の解消を通告したことが明らかとなり、政局への影響が取り沙汰された。
公明側が強硬な態度を崩さなかった背景には、党勢維持への深刻な危機感があったともされる。
「支持母体である創価学会の会員の高齢化が進み、集票力にも陰りが出ています。比例代表の得票数は減少が続き、2022年の参院選挙では目標に掲げていた800万票に遠く及ばず、得票数は618万票にとどまった。
党勢の衰えに歯止めをかけるためにも、党内きっての実力者である石井氏を小選挙区に送り込むことで勝負をかけたのです」(同前)
「太田さんの二の舞にならないか」と心配する声が
1958年生まれの石井氏は、東大工学部を卒業し、旧建設省に入省。キャリア官僚としての経験を生かして2015年から歴代最長となる3年11カ月にわたって国交相のポストを守り、幹事長も4年務めた。
党内では早くから「将来の代表候補」と期待を寄せられてきた。埼玉14区への出馬は、代表としての実力を図る試金石ともなるが、その挑戦を不安視する声も党内では上がっていたという。
「そもそも我が党にとって、首都圏の埼玉や神奈川は参院選でも最重点区に位置づけられる場所です。毎回、牙城である東京よりも厳しい戦いを強いられてきたのがこの地域。さらに、選挙区での戦いに集中しても厳しいのに、石井代表は党幹部としての役割もある。
今回は、『常勝関西』と呼ばれ、長年議席を守ってきた大阪3区をはじめ、大阪・兵庫の6選挙区で維新との全面対決となっています。『大阪で議席が半減するのでは』とも言われるなか、関西での足場を守れるか否かの正念場で、石井代表も当然、そちらに応援に入らなくてはなりません。本当に大丈夫なのか、という声はほうぼうから上がっていました」(前出の公明党関係者)
そんななか、公明党や支持母体である創価学会の関係者らの脳裏に浮かぶのは、民主党旋風が吹き荒れた15年前の衆院選での波乱である。
「当時の太田昭宏代表が選挙区で、民主党の新人・青木愛氏に敗れた。当時は、政権交代の機運が盛り上がり、『小沢チルドレン』と呼ばれた青木氏のような新人候補が大量に当選。
太田さんは重複立候補を辞退し、東京12区のみでの出馬だったため、比例復活もできなかった。太田さんは国交相も務め、『プリンス』と呼ばれるなど党内での人気が高かったため、選挙区での敗北は党の内外に波紋を広げました。
何より、現役の代表が落選するという衝撃は大きかった。今回、石井代表も重複立候補をせずに小選挙区で勝負をかけていますが、当時のいきさつを知る人の中には『太田さんの二の舞にならないか』と心配する声があるのも事実です」(同前)
今回は、池田大作・創価学会名誉会長が亡くなってから初めての衆院選でもある。カリスマ不在で迎える決戦で、党勢を維持できるのか、あるいは衰退の序章となるのか。審判はまもなく下される。
取材・文/集英社オンラインニュース班
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