中日・立浪監督が打ち破れなかった「ミスタードラゴンズ」のジンクス…星野仙一、落合博満との奇妙な共通点
集英社オンライン / 2024年11月3日 11時0分
〈「あんな選手を使いやがって」中日・立浪監督が3年連続最下位でも正しい野球理論を備えていたといえる2つの理由〉から続く
星野仙一氏や落合博満氏といったドラゴンズのレジェンド監督と、監督としての実績では肩を並べることはなかった立浪和義氏。
かつて「ミスタードラゴンズ」と呼ばれた2人の先人との奇妙な共通点を野球解説者の江本孟紀氏による『ミスタードラゴンズの失敗』(江本孟紀)より一部抜粋・再構成してお届けする。
「ミスタードラゴンズ」は監督として優勝していないという事実
立浪はドラゴンズしか知らない。それゆえ現役時代に偉大な実績を残したことから、多くのドラゴンズファンから「ミスタードラゴンズ」であると認められた。
立浪の前にもミスタードラゴンズは2人いた。1人目は西沢道夫さん(初代)である。
西沢さんは戦前から戦後にかけてドラゴンズで活躍し、戦前は伸びのあるストレートを武器に、1940年に20勝を挙げたり、42年5月の大洋戦では世界最長となる延長28回を完投。311球を投げるほどのタフネスぶりをみせた。
だが、戦争で肩を壊すと、戦後は打者に転向。1950年はシーズン46本塁打を放ち、52年は打率3割5分3厘、98打点で、首位打者と打点王の二冠に輝く。さらに打撃コーチ兼任となった1954年は、主砲としてドラゴンズを初のセ・リーグ優勝と日本一に導いた。
投手と打者の二刀流として高いレベルで活躍し、メジャーで活躍中の大谷翔平のように投手と打者の同時進行というわけではないものの、投手として20勝、打者として46本塁打を達成したのは、日本のプロ野球史上で西沢さんだけである。つまり、西沢さんこそが「元祖二刀流」といえるのだ。
続いて前にもお話した高木守道さん(2代目)、そして立浪(3代目)である。ドラゴンズの歴史上、3人の「ミスタードラゴンズ」を輩出したことになるのだが、3人には2つの共通点がある。一つは、現役時代は華麗なプレーでファンを魅了したこと、二つ目は「監督として優勝経験が一度もないこと」である。
一つ目は言わずもがなであるため、もう一つの共通点を見ていこう。西沢さんが監督を務めたのが1964年から67年までの4年間で、6位、2位、2位、2位という成績だった。とくに1965年以降は巨人がV9時代に突入していたため、不遇といえば不遇な時期に監督を務めたともいえる。
立浪の後にミスタードラゴンズを名乗れる選手は…
高木さんは2度の監督経験があるなかで、92年から95年までは6位、2位、2位、5位、2012年と13年は2位、4位と、2位の3回が、高木さんが監督のときの最高順位だった。
そして立浪である。2022年から24年まで3年連続最下位とやはり結果を残していない。「ミスタードラゴンズ」と言われていたからこそ、優勝を果たしてドラゴンズファンを喜ばせてほしかったが、残念ながら夢半ばで終わってしまった感が強い。
西沢さん、高木さん、立浪の3人は、現役時代は優勝を経験している。もっと言えば、西沢さんと立浪は日本一も味わった。選手時代に栄光をつかんできただけに、監督になってからも同じように勝利に導いてくれるだろうと、多くのドラゴンズファンは考えたに違いないが、現実はそんなに甘くはなかった。
本来、「ミスタードラゴンズ」と呼ばれるほどの存在なのだから、多くのドラゴンズファンから尊敬の念で見られなくてはならないはずである。にもかかわらず、監督としてうまくいかず、「辞めろ」コールが起きてしまった瞬間、名声を地に堕とすことになってしまった。ただ、このまま立浪の野球人としてのキャリアが終わりを迎えてしまうのは、あまりにもったいない。
西沢さん、高木さんは鬼籍に入られている。今のドラゴンズを見ている限り、立浪の後にミスタードラゴンズを名乗れる選手が出てくるのかと問われれば、それはないと言い切れる。現役生活20年以上もチームに貢献し続けてきて、優勝に導ける選手など、そうそう出てくるものではない。それだけに立浪は捲土重来するのを心待ちにするファンだって、今も多くいるに違いない。
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