“裏金議員に2000万円”で「自民大惨敗予測」も…鍵を握る38の「最終盤重点区」とは? 東京10区の“鈴木対決”、立憲は蓮舫”投入”も
集英社オンライン / 2024年10月24日 18時11分
衆院選はいよいよ最終盤に突入した。国政での生き残りをかけたレースは、「10・27」のゴールに向けて各候補がラストスパートをかける局面に入った。「政治とカネ」の逆風にさらされる自民党は「最終盤重点区」として全国38の激戦区をリストアップ。石破茂総裁ら党幹部が応援に入って巻き返しを図る。40代の若手同士で「鈴木」の同姓対決となっている「東京10区」などでの運動を強化し、対する野党第一党の立憲も党内の論客を次々と送り込んで、舌戦はヒートアップしている。
自民党にとって大きな痛手となった“赤旗砲”
「あの数字を見たときは正直言ってホッとした。なのに、こんなスキャンダルが出てくるとは…」
投開票まで1週間を切った10月23日、自民党衆院議員のあるベテラン秘書はこうため息を漏らした。秘書が頭を抱えるのはこの日、日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が放ったあるスクープだ。
「裏金非公認に2000万円」。赤旗は同日付の1面記事にこんな見出しをつけた。記事は、「裏金事件」で非公認となった候補が代表を務める党支部に対し、自民党本部が総選挙公示直後に、政党助成金2000万円を振り込んでいたことを報じた。
「赤旗は森山裕幹事長から各支部の会見責任者にあてて送付された『支部政党交付金支給通知書』という文書の中身を報じました。
文書は10月9日付で、この日は党本部が衆院選に向けた1次公認候補を発表した日。『裏金議員』の処遇をどうするのかが注目されていた時期で、党執行部はその一部を非公認にすることを公表していた。
一連の問題に対応する姿勢を見せた形ですが、その裏で処分した候補に選挙前にカネを渡していたことが赤旗の報道によって明らかになったわけです。
この一報は新聞、テレビの各社が一斉に後追いし、SNSでも急拡散されています。投開票直前で新たにカネの問題が出てきたわけで、自民党にとっては相当な痛手となるはずです」(全国紙政治部記者)
ただ、前出の秘書がいっそう肩を落としたのには、もうひとつ理由がある。
選挙戦の最中に自民党が実施した世論調査の結果にようやく明るい兆しが見えていた矢先でのつまずきだったからだ。
「自民党が19日から20日にかけて実施した世論調査で、自民の獲得議席が『220超』と出た。現有の『247』からは20議席あまりを失うが、一部では『200議席を切る』との報道もあっただけに各陣営からは『なんとか踏みとどまれそうだ』と安堵の声も漏れていた。
連立を組む公明も現有の『32』からは減らすものの、小幅な減少にとどまっていた。ラストスパートに向けて気合いを入れ直すための好材料になるはずだったのに、例の〝赤旗砲〟で、その機運も一気にしぼんでしまった」(前出の秘書)
「政商」義父の威光を笠に着るエリートVS身長190センチの肉体派
党内で懸念されているのが、新たな逆風が与える激戦区への影響だ。
自民党は世論調査と並行して、接戦が伝えられる選挙区の洗い出しも進めた。その結果、全国38の選挙区を挽回が必要な「最終盤重点区」と位置づけ、選挙対策の見直しを急ピッチで進めている。
本サイトが独自に入手した、その重点区リストがこれだ。
「なかでも注目は、自民と立憲がともに40代の候補を立てて激突する『東京10区』だ。自民党からは経済産業省出身で47歳の鈴木隼人氏が4期目の当選を狙って出馬。対する立憲は党の副幹事長を務める48歳の鈴木庸介氏を立てており、2候補による事実上の一騎打ちの構図となっています」(前出の政治部記者)
自民候補の鈴木隼人氏は東大大学院から経産省に進んだエリートで、2期目で外務大臣政務官に抜擢された若手のホープだ。
2017、2021年の過去2度の衆院選では小選挙区で連続当選を果たすなど、選挙でも着実に力を付けてきているが、後ろ盾となっている「大物」の存在も強みになっている。
「鈴木隼人氏の義理の父は、パチンコ・パチスロ機メーカー『セガサミーホールディングス』の創業者で、同社の代表取締役会長を務める里見治氏です。里見氏は政財界やスポーツ界に大きな影響力を持つ『政商』としての顔も持ち、カジノを含む統合型リゾート(IR)誘致の旗振り役になってきたことでも知られています。
2013年に里見氏の娘と鈴木隼人氏が開いた結婚披露宴には、安倍晋三氏や小泉純一郎氏、森喜朗氏と歴代総理が駆けつけ、政界での影響力の強さを見せつけました」(同前)
対する立憲候補の鈴木庸介氏は身長190センチの体躯を備え、立教大レスリング部でキャプテンを務めた〝肉体派〟。NHK記者を経てコロンビア大大学院でMPA(行政学修士)を取得した変わり種。
「企業・団体献金を一切受け取らない」とも公言している市民派で、ピカピカの経歴と強固な金脈・人脈を持つ鈴木隼人氏とは同姓ながら対照的なキャリアを歩んでいるといえる。
「自民と同じく、立憲も東京10区を重点区に据えており、辻元清美参院議員や長妻昭代表代行を応援に送り込んで票の掘り起こしを図っています。
自民陣営側は『相手はあまり派手な動きはしないが、支持層固めはしっかりしているようだ』と警戒を強めている。立憲は25日に蓮舫氏の投入を予定している。庸介氏は蓮舫氏を都知事選で先陣をきって担いでいたことから、“蓮舫の恩返し”となった」(同前)
新人・ベテラン・世襲議員が大苦戦
東京15区では、自民が、「Z世代」の25歳の起業家・大空幸星氏を擁立して4月の衆院補選で失った議席の奪還を狙う。
立憲は、前回選挙では酒井菜摘氏が大差で当選を果たしたが、前回は共闘態勢を組んだ共産が、今回は独自候補を立てたことで苦戦を強いられている。
地元の江東区出身を前面に出した独自の選挙戦を展開する須藤元気氏も一定の支持を集める見込みで混戦模様に拍車をかけている。
「序盤の自民の調査では大空氏がわずかにリードしていました。ただ、『弱者支援』の活動をするNPO法人の理事長を務めていることをウリにメディア出演していた大空氏が自民から出馬したことへの批判がSNSを中心に広がりも見せています。一方の酒井氏も野党共闘の失敗が最終盤でどう響くか。予断を許さない状況が続きます」(同前)
また、リストにはないが東京7区では、自民党公認候補の丸川珠代氏と、立憲民主党公認候補の松尾明弘氏が大接戦を繰り広げている。
さらにリストは東京だけではない。世襲議員も試練にさらされている。
「山口2区では、岸信夫元防衛相の地盤を受け継いだ信千世氏が正念場を迎えています。初当選した前回衆院選でも演説の不安定さが指摘されていましたが、今回も課題の改善には至っていません。
橋本龍太郎元首相を父に持つ岳氏が立つ岡山4区も重点区とされている。新たに発覚した非公認候補への政党交付金の支給問題の影響も懸念されるところで、最後まで厳しい戦いになることは間違いないでしょう」(同前)
永田町に無事、たどりつくのは誰か。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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