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1日1時間のランニングで寿命が7時間延びる…ほんの少しの運動でも膨大なメリットが! 最新の研究で明らかになった運動の驚くべき効果とは

集英社オンライン / 2024年11月1日 17時29分

「寝てない人は太る!」「気づかないうちにミスが増え…」日本人が知らない睡眠不足の本当の怖さ。重病のリスクも増〉から続く

ある研究結果によると、定期的にランニングをしている人は、していない人よりも平均して寿命が3年長いというデータがあるという。さらに、普段まったく運動をしない人なら、少しの運動だけでも大きなメリットが得られるという。

【図】世界的にみても日本人はたくさん歩いていた!

運動の科学的な効果を、書籍『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成しお届けする。

「1日1万歩」に科学的根拠はない?

運動が健康に良いという点については異論はないだろう。ただし、それを実践できているかどうかは別問題である。

頭では分かっているものの、忙しくて時間が取れずにあまり運動できていない人も多いのではないだろうか。

では、どれくらい運動すれば病気になりにくくなるのだろうか?

「1日1万歩を歩く」ことが健康に良いと聞いたことがある人は多いだろう。このスローガンは日本発祥だと言われているが、「1万歩」という数字には実は永らく何の根拠もなかったのである。

1780年頃に、スイスの時計師アブラアン・ルイ・ペルレによって歩数計が実用化された。

その後1965年に日本の山佐時計計器から発売された「万歩メーター」が、日本の一般人向けの歩数計の第1号と言われている。

当時は1964年の東京オリンピックを契機に国民の運動・スポーツの機運が高まる中、「歩け歩け運動」や「1日1万歩」運動などを推奨する団体が積極的に歩くことを勧めた。

しかしその一方で、なぜ1万歩なのかという点については、エビデンスは示されなかった。

その後、「1日1万歩」が健康に良いという考え方は世界中に広まり、あたかも科学的に正しい主張であるかのように受け取られるようになったと言われている。

では現在、研究結果からは何が分かっているのだろうか?

2019年5月に、ハーバード大学の研究グループから興味深い研究結果[*1]が報告された。

2011~15年に、約1万7000人の高齢女性(平均年齢72歳)に加速度計を7日間身に着けてもらい、歩数を測定し、2017年末まで追跡したところ、歩数が多い人ほど死亡率が低いという結果であった。

2020年3月に発表された最新の研究[*2]によると、7500歩より多く歩くことでさらに健康上のメリットがあることが分かった。

この研究では、代表性のあるアメリカ人4840人のデータを解析したところ、図1のように、1日1万2000歩くらいまでは歩数が多ければ多いほど死亡率が低いという結果が得られた。

この図は、年齢、性別、食事内容、肥満度、飲酒量や喫煙量などの影響を統計的に取り除いた上で、1日の歩数と死亡率との関係を見たグラフである。

一方で、1万2000歩以上は歩いても健康上のメリットは少なそうである。

つまり、死亡率という観点においては「1日1万歩」神話は必ずしも正しくなく、もっと少ない歩数でも、健康上のメリットは大きいのである。もし無理がないようであれば、1万2000歩を目指してもいいだろう。

もちろん死亡率だけが重要なのではなく、体重や血糖値などその他にも健康の指標はある。それら死亡率以外の健康指標に関しては、歩数が与える影響は異なるかもしれない。

また、これはアメリカ人を調査対象としたデータなので、日本人では結果が異なるという可能性も残っている。

それでもなお、自分たちの生活習慣を見直すとっかかりとしては十分なデータだろう。

1日1時間走ると寿命が7時間延びる

では実際に日本人は1日どれくらい歩いているのだろうか?

2017年にスタンフォード大学の研究者が、世界111か国約70万人の持っているスマートフォンに内蔵された加速度計のデータを解析することで、各国の人々が1日平均でどれくらい歩いているのか研究[*3]した(図2)。

その結果、日本人は1日約6010歩歩いていることが明らかになった。これは調査された国の中では香港、中国、ウクライナに次いで4番目に高い結果であった。

より正確な統計(国民健康・栄養調査)でも、平均的な日本人はすでに1日6278歩歩いていることが分かっているので、先の研究から導き出された目標値1日1万2000歩を達成するためには、プラスアルファで1日6000歩を歩けばよいという計算になる。

これは、時間で言うと1.05時間、距離で言うと4.2㎞になる。

これはなかなかハードルが高いという人であっても、1日1万2000歩くらいまでは歩けば歩くほど死亡率が下がると報告されているので、自分のできる範囲内で歩数を増やすことをおすすめする。

ランニングをしている人も多いと思うが、定期的にランニングをしている人は、ランニングをしていない人よりも寿命が約3年長いという研究結果[*4]がある。

この研究を行った研究者はニューヨーク・タイムズの取材に対して、「1時間ランニングをすると寿命が7時間延びる」とコメントしている。

もちろんもっと長時間ランニングをするほど無限に寿命が延びるわけではないものの、時間が足りなくて困っていると不平を漏らしている人たちにとっては、1時間のランニングで7時間寿命が延びるというのはリターンの大きい「投資」であると言っても良さそうである。

運動量ゼロの人がやるべきこと

最後に、アメリカのガイドラインで推奨されている運動(身体活動)の量を説明する。

アメリカのガイドライン[*5]では、健康を維持するためには、大人は週150~300分間の中強度の運動(個人差はあるが早歩きや階段の上り下りなど)、もしくは週75~150分間の高強度の有酸素運動(ジョギングなど)をすることが推奨されている。

そしてこれに加えて、週2回の(身体にある全ての主要な筋肉を使った)筋肉トレーニングをすることで、健康上追加のメリットがあるとされている。

この根拠となっているのが図3である。

この図の縦軸は死亡率、横軸は運動量を表している。もちろん運動量が多ければ多いほど死亡率が低いという関係が認められる。

ただしその中でも、日頃の運動量がゼロの人が少しだけ運動した場合に得られる健康上のメリットが一番大きい点に注目してほしい。

週150~300分間を超えると、追加で得られる健康上のメリットが小さくなるため、当該の範囲の適度な運動量が推奨されるようになったのだ。

1つ注意が必要なのは、食事を制限することなく運動だけで減量したいのであれば、週150分間の運動ではおそらく不十分であるということが分かってきているということである。

ただやみくもに運動しろと言われても難しいし、長く続けられない人も多いだろう。

しかし、これらの研究結果からも分かるように、運動は皆さんが病気になるのを確実に予防し、長生きさせてくれるものだ。

特に、普段運動をほとんどしていない人が少しだけ運動した場合に得られる健康上のメリットは大きい。いきなりガイドラインで推奨されているレベルの運動量を達成するのは難しいかもしれないが、まずは少しだけでいいので日々歩く量を増やしてみてほしい。

ストレス発散にもなるし、体調も良く感じるようになるはずだ。運動を続けていくための、よいきっかけになると思われる。

図/書籍 津川友介著『あなたを病気から守る10のルール』より
写真/shutterstock

正しい医学知識がよくわかるあなたを病気から守る10のルール

津川友介
正しい医学知識がよくわかるあなたを病気から守る10のルール
2024年10月18日発売
682円(税込)円(税込)
256ページ
ISBN: ISBN: 978-4-08-744707-1
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脚注

*1 Lee IM et al. Association of Step Volume and Intensity With All-Cause Mortality in Older Women. JAMA Intern Med.2019;179(8):1105-1112.
*2 Saint-Maurice PF et al. Association of Daily Step Count and Step Intensity With Mortality Among US Adults. JAMA.2020;323(12):1151-1160.
*3 Althoff T et al. Large-scale physical activity data reveal worldwide activity inequality. Nature. 2017;547(7663):33 6-33 9.
*4 Lee DC et al. Running as a Key Lifestyle Medicine for Longevity. Prog Cardiovasc Dis.2017;60(1):45-55.
*5 Physical Activity Guidelines for Americans, 2nd edition. U.S. Department of Health and Human Services. 2018.

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