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大部分のサプリメントは無意味! 日本だけで1兆円の市場規模も医学的なエビデンスはなし

集英社オンライン / 2024年11月2日 17時0分

1日1時間のランニングで寿命が7時間延びる…ほんの少しの運動でも膨大なメリットが! 最新の研究で明らかになった運動の驚くべき効果とは〉から続く

気軽に栄養を摂取できることから多くの人が毎日摂取しているサプリメント。だが最新の研究では、サプリメントのメリットはほとんど立証されなかった。それどころか摂取することで健康を害す恐れもあるという。

【画像】サプリメントを飲んだほうがいい人とは?

UCLA准教授で医師の津川友介の著書『正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール』より一部抜粋・再構成し、正しいサプリメントの知識をお届けする。

日本のサプリメント市場は1兆円超え

健康に気をつけている人ならば、サプリメントの1つや2つ飲んでいるのではないだろうか。薬は嫌いだけれども、サプリメントだったら飲むという人も多いと思われる。

外食が増えたり、仕事が忙しくてついつい不健康な食生活をしてしまった時に、サプリメントを飲むことでその悪影響を「相殺」することを期待している人もいるだろう。

健康状態を劇的に改善することはないけれども、副作用もないだろうからとりあえず飲んでおこう、くらいの気持ちで飲んでいる人もいるようだ。

普段の食生活を健康的にするのはすごく大変だが、サプリメントであればそれほど努力は必要ない。おそらくそれが多くの人がサプリメントに頼っている1つの理由だろう。

でもこれらのサプリメントに関するイメージは本当に正しいのだろうか?

コンビニやドラッグストアに行くと、数多くのサプリメントが販売されている。ビタミン剤、コンドロイチン、コラーゲン、コエンザイムQ10、プラセンタ、ニンニクエキスなど挙げればきりがない。

ある試算[*1]によると、日本の健康食品・サプリメントの市場規模は約1兆4000億円であるという。

大部分のサプリメントは無意味

サプリメントで本当に健康になれるのであれば、それに越したことはない。

それではサプリメントと健康の関係について、エビデンスの観点からはどのようなことが分かっているのだろうか。

結論から言うと、健康にメリットがあると考えられているサプリメントは数少ない。サプリメントの市場規模が大きいこともあり、それによって利益を生み出そうとしている企業がたくさんある。

これらの企業が積極的に研究に資金提供していることもあり、サプリメントに関しては様々な研究[*2]が行われているが、その大多数が期待されたような効果を得られていない。

代表的な例を挙げて見てみよう。

おそらくいま世界で最も活発に研究が行われているのが、オメガ‐3脂肪酸とビタミンDの2つであろう。

オメガ‐3脂肪酸とはαリノレン酸(ALA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)など、魚やナッツ類に含まれるいわゆる「健康に良い油」のことである。

魚やナッツ類の摂取量が多い人ほど心筋梗塞や脳梗塞など動脈硬化で血管が詰まる病気のリスクが低いということは複数の研究結果で証明されているため、オメガ‐3脂肪酸がその要因となる成分なのではないかと考えられ、研究が進められてきた。

2018年にコクラン(世界中の研究者と協働でエビデンスを統合し発表する、英国を本部とする研究チーム)によってオメガ‐3脂肪酸に関するエビデンスが統合され、検証[*3]された。

オメガ‐3脂肪酸に関して79の実験(総勢11万2059名の被験者)が同定され、そのうち25の研究が質が高いと評価され検証された。

その結果、オメガ‐3脂肪酸を摂取しても心筋梗塞などによって死亡する確率は変わらないと結論づけられた。

もっと詳しく見てみると、ALAの摂取によって心臓の不整脈のリスクが3.3%から2.6%へとごくわずかに下がる可能性が示唆されたが、効果があまりに小さかったため、研究者たちはオメガ‐3脂肪酸の心臓へのメリットはほとんどないと結論づけた。

さらに、2019年にVITAL試験と呼ばれる2万5000人以上が被験者となった大規模な実験[*4](この研究はオメガ‐3脂肪酸とビタミンDの両方の効果が評価できるようデザインされていた)の結果が報告されたが、やはりオメガ‐3脂肪酸のサプリメント摂取によって、がんおよび心筋梗塞のリスクは下がらなかった。

では、昨今期待されているもう1つのサプリメントである、ビタミンDはどうだろうか?

残念ながら、ビタミンDに関しても、まだ「健康上のメリットがあるというエビデンスはない」というのが結論であるようだ。

2014年に発表されたコクランの検証[*5]では、159の実験結果が同定され、そのうち56の研究の質が比較的高く、評価可能であるとされた。

その結果、高齢者に限りビタミンD3(ビタミンDは、キノコ類に含まれるビタミンD2と、魚に含まれるビタミンD3に分けられる)によって死亡率が下がる可能性が示唆されるものの、研究の質が全体的に低く、ビタミンD摂取による健康上のメリットははっきりしないと結論づけられた。

ビタミンDやカルシウムのサプリメントが、骨折の予防になるのか、という観点においても、エビデンスが不十分で、ビタミンD摂取による健康上のメリットがあるともないとも言えないと結論づけられた。

そもそもビタミンDは日光を浴びると皮膚で合成されるため、サプリメントで摂取しなくても日光を浴びれば良いという説もある(もちろんそれでもビタミンDの量が不足するのでサプリメントが必要という意見もあるが……)。

前述の最新のVITAL試験では、ビタミンDサプリメントの健康への影響も評価[*6]されたが、偽薬(何の効果もない偽物の薬)と比べてがんや心筋梗塞を引き起こすリスクは変わらないという結果であった。

サプリメントは時に健康を害する

ではどのようなサプリメントを摂れば良いのだろう、そもそも私はサプリメントを摂った方が良いのだろうか?と迷ってしまう方もいるだろう。

米国の医学雑誌『JAMA Internal Medicine』に患者向けの説明文章[*7]がある。ここではそれを参考に、私が一部説明を加えたものを紹介する。

(1)サプリメントは健康に有害な成分を含むことがあり、薬や他のサプリメントと一緒に摂取すると健康に有害な作用を及ぼす可能性がある(アメリカでは年間約2万3000人がサプリメントが原因と考えられる健康被害で救急外来を受診していると推計されている)。

(2)サプリメントに対する規制は弱く、その安全性や有効性に関する国の機関による評価はほとんどされていない。

(3)バランスの取れた食事によって、多くの場合健康を維持するのに必要なビタミンや栄養素は十分摂取できる。日本ではしばしばカルシウム不足が指摘されているが、前述の通りサプリメントによるカルシウムの補充が骨折の予防になるというエビデンスは不十分である。

それでもサプリメントを摂るべき人

一方、サプリメントを摂る必要がある人もいる。それは次のような人である。

(1)妊娠可能年齢の女性で、妊娠する計画がある場合。

(2)骨粗鬆症があり、食事によって十分量のビタミンDが摂取できない場合。

(3)血液検査によってビタミンB12欠乏症、鉄欠乏性貧血、亜鉛不足による味覚障害などが指摘されており、医師からサプリメントの摂取が指示されている場合。

(4)消化器の病気を有していたり、消化器の手術を受けており、それに伴う栄養の吸収障害がある場合。
例えば、胃を切除すると鉄分やビタミンB12の吸収障害による貧血、カルシウム吸収障害による骨粗鬆症がしばしば起こる。その場合はサプリメントによる補充が推奨される。

特に妊娠初期に葉酸の摂取量が少ないと、二分脊椎をはじめとする胎児の神経管閉鎖障害と呼ばれる先天異常のリスクが上がることが知られている。

妊娠中には通常よりも多い葉酸が必要で、食事からの摂取だけでは不足する可能性があるため、葉酸のサプリメントによる補充が推奨されている。

妊娠が成立する1か月前から摂取することが有効だとされており、妊娠に気づいたころには遅いため、妊娠を計画している女性だけでなく、妊娠する可能性がある女性には葉酸のサプリメントは推奨される。

また、妊娠24週から1日2.4gの魚油のサプリメント(EPAとDHA)を摂ることで、早産のリスクが減少[*8]し、生まれた子どもが3歳までに気管支喘息や気管支の感染症にかかるリスクが下がる[*9]という実験の結果もある。

魚油のサプリメントは副作用がほとんどないとされているので、妊娠中の女性は摂取を検討しても良いだろう。

例えば病院で鉄欠乏性貧血が指摘されており、鉄分のサプリメントを摂取するように指導されている人はその摂取は続けた方が良いだろう。

味覚障害があり、病院で亜鉛のサプリメントを試してみるように言われ、それで症状が改善している人もいるだろう。

このように、病院で医師によってサプリメントを摂取することが推奨されている人は、食事だけでは何らかの栄養素が不足しているということであるので、きちんと飲み続けてほしい。

まとめると、サプリメントを「なんとなく身体に良さそうだから」と摂取することはおすすめできない。健康上のメリットがなくてお金の無駄遣いなだけでなく、飲み合わせなどで健康被害を生じてしまう人たちもいるからである。

その一方で、妊娠前の女性や病院で何らかの栄養不足を指摘された人のように、サプリメントが健康上有益であると考えられる人たちもいる。

自分がどのパターンに当てはまるかよく考えて頂き、賢くサプリメントを使いこなすことをおすすめしたい。

写真/shutterstock

正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール

津川 友介
正しい医学知識がよくわかる あなたを病気から守る10のルール
2024年10月18日発売
682円(税込)
256ページ
ISBN: 978-4-08-744707-1

為末大さん(元陸上選手)
健康の〈型〉がここにある。
健康知識を手に入れることは、最も効率が良い投資なのだ。

宋美玄さん(産婦人科医)
この一冊には、健康に関するあらゆることが高いエビデンスレベルのもと網羅されています。
高価なサプリやダイエット法に「なんとなく良さそうだから」と飛びつく前に読んでほしい。
人生を楽しみながら健康になれる〈最短ルート〉を示してくれる本。

市原真(病理医ヤンデル)さん(医師)
「行動選択の拠り所」になる医学に気軽にアクセスできる。
私はもう一冊買って親に送る。

少し意識を変えるだけで、重い病気になるリスクを劇的に下げられる――!
最新研究から明らかになった、健康に生きるための黄金のルール。

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「白米を1日1杯以下にする」糖尿病のリスク24%減など、
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確かな科学的根拠(エビデンス)を1冊の本にぎゅっとまとめました。

病気になってしまうその前に知っておきたい、今日から実行できる「最強」の健康習慣。

【本書で明かされる驚きの事実】
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●1日1杯のお酒は脳卒中のリスクを下げる
●太る野菜・果物もある
●糖質制限ダイエットは死亡率を高める上、リバウンドしやすい
●サプリメントはほとんど気休め
●睡眠時間を1.5時間単位にすると良いというのは都市伝説
●サウナは心臓疾患による突然死のリスクを下げる
●ストレスとがんは関係ない
●加熱式タバコにも多くの有害物質が含まれている
●受動喫煙で毎年赤ちゃんも含めた1万5000人が亡くなっている
●子どものアトピーは保湿によって予防できる
●花粉症を根治できる治療法がある
●かぜに抗生物質は無意味
●がんを予防するワクチンがある
etc.…

人生100年時代、病気にならずに健康に生きたい人必読の一冊。
(装画・ヤギワタル)

脚注

*1 株式会社インテージ『健康食品・サプリメント+ヘルスケアフーズ+セルフヘルスケア市場実態把握レポート』二〇二〇年度版
*2 The New York Times. Vitamin D, the Sunshine Supplement, Has Shadowy Money Behind It. [https://www.nytimes.com/2018/08/18/business/vitamin-d-michael-holick.html]
*3 Abdelhamid AS et al. Omega-3 fatty acids for the primary and secondary prevention of cardiovascular disease. CochraneDatabase Syst Rev. 2018;7(7):CD003177.
*4 Manson JE et al. Marine n-3 Fatty Acids and Prevention of Cardiovascular Disease and Cancer. N Engl J Med. 2019;38 0(1):23-32.
*5 Bjelakovic G et al. Vitamin D supplementation for prevention of mortality in adults. Cochrane Database Syst Rev. 2014;10(1):CD007470.
*6 Manson JE et al. Vitamin D Supplements and Prevention of Cancer and Cardiovascular Disease. N Engl J Med. 2019;38 0(1):33 -44.
*7 Incze M. Vitamins and Nutritional Supplements: What Do I Need to Know? JAMA Intern Med. 2019;179(3):460.
*8 Vinding RK et al. Fish Oil Supplementation in Pregnancy Increases Gestational Age, Size for Gestational Age, and BirthWeight in Infants: A Randomized Controlled Trial. J Nutr. 2019;149(4):628-634.
*9 Bisgaard H et al. Fish Oil-Derived Fatty Acids in Pregnancy and Wheeze and Asthma in Offspring. N Engl J Med.2016;375 (26):2530-2539.

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