2000万円“ステルス公認”が自民にトドメ…萩生田氏は「お金はありがた迷惑」党内からは「与党過半数割れ確実」の声も
集英社オンライン / 2024年10月25日 19時39分
10月27日の投開票日が目前に迫った衆院選。自民党は裏金問題の逆風のなかでかつてないほどの苦戦を強いられており、自民党幹部は接戦区のテコ入れを図る。だが、最終盤になって非公認となった裏金議員の政党支部にも自民党が2000万円を支給していたことが発覚。逆風はさらに強まっており、党内からは「与党過半数割れは確実ではないか」という嘆きの声も漏れる。
〈画像〉故・安倍晋三元首相の遺影や安倍昭恵さんとともに写る萩生田氏
大阪の切り崩しを図る自民、お膝元の維新は死守なるか
「まだ票が足りません。どうぞ皆さま、お声をかけてください。皆さまの力を貸しください」
10月24日、石破茂首相は大阪府吹田市の阪急南千里駅前で、自民候補の渡嘉敷奈緒美氏の応援演説で声を振り絞った。
石破首相はラストサンデーである10月20日から21日にかけても大阪府内の遊説に奔走しており、関西地方にかなり力を入れているのが分かる。
それもそのはず、大阪は自民党が選挙中盤で設定した「重点区」に全選挙区が選定されているのだ。
永田町関係者は語る。
「10月21日の夜、自民党本部に石破茂首相や菅義偉副総裁、森山裕幹事長や小泉進次郎選対委員長が集まって、選挙戦後半に向けての作戦会議が開かれた。
このときに東京都内の接戦区のほか、北は北海道4区、南は福岡2区まで約40の選挙区が重点区に選ばれたが、それとは別に大阪はすべての選挙区を重点区として設定している。
大阪万博や、斎藤元彦前兵庫県知事の問題で日本維新の会の関西人気に陰りが見え始めており、自民がここぞとばかりに攻勢をかけているわけだ」
実際に維新は8月に実施された箕面市長選挙で初めて公認の現職首長が敗れるという事態に陥っている。
また、2021年の衆院選では維新が公明党と共闘態勢を組み、19の選挙区を両党で分け合った。しかし、その後に大阪市議会の過半数を維新が獲得したという事情もあり、今回は維新と公明もガチンコ対決を繰り広げている情勢だ。
そんな中、自民党が10月16日から20日にかけて実施した情勢調査によると、19のうち8つの選挙区で自公の候補が維新候補にリードしているという。
冒頭で取り上げた大阪7区の渡嘉敷氏も維新現職の奥下剛光氏と一進一退の攻防を繰り広げており、維新にとっては牙城である大阪を維持できるか否かの正念場になっている。
“2000万円問題”で内紛勃発
だが、このような自民の猛攻も無に帰す可能性が出てきた。
その原因が、自民党本部が裏金問題で非公認となった候補の政党支部にも2000万円を支給していたという「裏公認」問題である。
石破首相は演説の中で「私たちは公認していない候補者に金を出していない。この厳しい中、なんとか自民党の公約、政策、それをわかってもらいたいという思いで政党支部に出している。このような報道が出ることは憤りを覚える」と主張している。
しかし、その政党支部の多くは非公認の候補者がそのまま代表となっており、しかも、公認候補の政党支部には公認料500万円、活動費1500万円という内訳で支給されているにもかかわらず、非公認候補の政党支部にも公認料を含むような2000万円という金額が振り込まれているわけだ。
そのことから、野党からは「ステルス公認」「偽装非公認」という批判が出ている。
また、この問題については、支部にお金が振り込まれた非公認の候補者からも反発の声が挙がっている。
東京24区に無所属で出馬した元経産大臣の萩生田光一氏は24日にYouTubeやSNSに動画をアップし、支部への2000万円支給について「報道されるまで全く存じ上げず、初めて支部の口座へ振り込まれたことを確認した」「今回の選挙費用として全く使用しておりません」と説明。
そのうえで、「率直に申し上げて、今回の政党交付金の交付に関する執行部の対応は首を傾げざるを得ません」「突然このような資金を振り込まれても、正直申し上げて、ありがた迷惑な話だと思います」と苦言を呈した。
与党過半数割れ目指し立憲もラストスパート
衆院選の投開票日を目前にして、自民党内で内紛が起きているような状況なわけだが、永田町関係者は「今回の問題が選挙戦の情勢に与える影響は大きい」と語る。
「そもそも石破首相は裏金議員に対して厳しい措置をとるということで、金額が大きかった議員や、処分が重かった議員を中心に非公認としたわけだ。
にもかかわらず、裏で金を渡していたということになれば、石破首相の対応は単なる見せかけで、言っていることとやっていることが違うという話になる。今回の報道で国民の自民党への不信感はますます高まっている」(永田町関係者)
自民党関係者からも「接戦区を軒並み落とすことになりかねず、自公で過半数割れした場合に備えなければならない」という声が挙がっており、党内では石破首相と森山幹事長が連立政権の枠組みの拡大について相談したという情報も飛び交っている。
一方で野党は、陰りを見せる自民党に対して最終盤の追い上げに励む。
立憲民主党の野田佳彦代表は選挙戦最終日の26日、地震や豪雨による被災が重なった奥能登を含み、立憲の近藤和也氏と自民の西田昭二氏が接戦を繰り広げる石川3区で応援演説をしたあと、東京の接戦選挙区を回る予定だ。
立憲関係者は「今回の衆院選は自公を過半数割れに追い込む最大のチャンスだ。過半数割れとなったら法案や予算案を通すにも野党の協力が必要となり、これまでのような政権運営とはいかなくなる。野党の存在感をしっかりと示せるような選挙結果にしていきたい」と意気込んだ。
裏金問題による逆風の中、2000万円問題も重なり、窮地に立たされている自民党。
接戦や苦戦となる選挙区が増えていると見られる中、その結果は一体どうなるのか。
今後の政治を大きく左右する国民の審判の行方に、注目が集まっている。
取材・文/宮原健太
集英社オンライン編集部ニュース班
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