「記者にも良心はあるんだな」「話が違うよ、だまし討ちだから」東出昌大が週刊誌記者と築く奇妙な関係
集英社オンライン / 2024年11月3日 11時0分
ちょっとした行動もすべてニュースになる東出昌大(36)。激動の30代を生きる東出は、かつて自身のスキャンダルを世間に晒した週刊誌の記者となぜ仲よくできるのだろうか。本人に話を聞いた。(全3回の2回目)
【画像】「それは話が違うよ…」と穏やかな東出が唯一はっきりと抗議の声を上げた瞬間
激怒する記者に心動かされて…
2022年に所属事務所との契約が解除になってからというもの、東出はフリーの立場で活動している。仕事依頼や取材の窓口も自らこなす。
東出とメディア関係者のエピソードで私が最初に驚かされたのは、こんな話だった。ある女性週刊誌の記者が東出に取材を申し込んだところ、快く対応してくれたものの、タイミングが合わずに断られたのだという。その際、取材は受けられないが、今度、山に遊びに来てくださいと東出に声をかけられ、記者は本当に遊びに行ったというのだ。
にわかには信じがたかったが、その後の東出の報道に触れるにつけ、そのような話は決して特別なものではないことを知る。
東出の山での狩猟生活を記録したドキュメンタリー映画『WILL』の中にも、直撃取材を受けた女性週刊誌の記者らとそれをきっかけに親交が深まっていく様子が描かれていた。
東出が楽しげに思い出す。
「こっちに移り住んで、初めて直撃してきたのが、その女性週刊誌の記者とカメラマンだったんです。ここまで追われて、(自分の生活は)もう詰んだなって思ったんですけど、話したら、けっこうわかってくれる人たちで。
それまでは事務所に所属してたから『事務所に問い合わせてください』としか言えなかった。かといって、事務所も内容が虚偽だからといって記事を訂正できるわけではないので、結局、好き勝手なことを書かれてしまう。でも、そのときは、もう話すしかなかったので」
彼らは近辺で東出と女性が車に乗っているところを隠し撮りすることに成功したため、その女性との関係を問いただしてきたのだという。実際は地元の猟友会の集まりに参加するときに車がエンコ(エンジン故障)してしまい、仲間の女性猟師に連れて行ってもらっただけだった。
東出と女性が山で密会していたという記事を書くつもりだった記者らは、その場で会社の上司に当てが外れたことを電話で報告した。ところが、作り話でもいいから密会というストーリーで記事を書くよう指示され、猛烈に反発したのだという。
東出は、その様子を逐一観察していた。
「記者の方たちが激怒してたんですよ。『本人が違うって言ってんだからダメだろ!』って。その姿を見て『えっ!?』ってなりましたね。この人たちにも良心はあるんだな、と」
なぜ、東出はこんなにも嫌われるのか?
そのときの2人とは今も友人付き合いが続いていて、1人は東出に感化され狩猟免許を取得し、今度、彼と同じ猟友会に所属することになるかもしれないのだという。
ただ、信用してもやはり裏切られることはあった。映画の宣伝を兼ねて都内のスタジオである雑誌の取材を受け、その後、記者に「山の生活に興味があるので遊びに行っていいか」と問われ、快諾した。
そうしてやって来た記者と編集者とカメラマンの3人に東出はいつものように料理をふるまい、山での生活を大いに語った。すると後日、出版された雑誌は山の写真と話ばかりだった。わざわざスタジオで撮影した写真はお蔵入りとなった。
「そのときは、それは話が違うよ、と言いました。だまし討ちだから、って」
口ぶりは穏やかだが、はっきりと抗議した様子がうかがえた。東出も怒るのだとわかると、なぜだか心が落ち着いた。そりゃそうだろう、と。東出も人なのだと思えた。
東出の取材をすると決まってからというもの、私は周囲の何人もの人に東出の印象を尋ねた。すると、想像以上に嫌悪感を示す人が多かった。
2つ目の謎。なぜ、東出はこんなにも嫌われるのか——。
過去、東出と同じ過ちを犯した人は無数にいる。しかし、彼ほど人生が一変してしまった人は、そうはいないのではないか。もっと言えば、罪と罰の軽重が釣り合っていないように思えた。
以前、東出とともにテレビに出演していた落語家に意見を求めると「前のイメージが良過ぎたんでしょうねぇ……」と言った。
世間を敵に回してしまうのも無理はない、そう思えたシーンがある。
2024年1月、フジテレビの情報番組『めざまし8』が東出の山暮らしに密着したドキュメンタリーを放映した。同番組は前年にも他に先駆け東出の生活に密着しており、その続編でもあった。
第2弾では東出の生活スタイルに魅せられた後輩の若い女性俳優3人が頻繁に彼のもとを訪れている様子が紹介されていた。映像の中には、ディレクターらしき人物が東出に、この様子を流したらネットがまた荒れるのではないかと心配する声が入っていた。それに対して、東出は「荒れろ! 荒れろ! はははははは」と笑い飛ばした。
「僕、SNSもやってないので…炎上って、知らないと何でもないんですね」
無論、ジョークである。何も隠し立てするような悪いことをしているわけでもなく、かといって真正面から世間をけん制するのも物騒だし、粋ではない。となれば、そんなノリで行くしかない気持ちは理解できたし、私はそう言ってしまう東出の深いところをより知りたいと思った。
ただ、世間は攻撃に使いやすい言葉やノリほど額面通りに受け止める。裏返してみるとか、光に透かしてみることはしない。
結果は予想通りだった。東出の「荒れろ、荒れろ」という発言は格好の獲物として切り取られ、火に油を注ぐ結果となった。
東出もそれくらいのことがわからないはずはない。つまり、あれは東出なりの世の中への異議申し立てであり、反抗なのだ。東出にあのときの心境を聞くと、鼻歌でも出てきそうな軽い調子で答える。
「僕、SNSもやってないので、炎上したのを知らなかったんですよ。炎上って、知らないと何でもないんですね。何も降りかかってこない。情報を拾いに行けば傷つく言葉はいくらでもあるんでしょうけど、それをしなければ、炎上っちゅうのは炎上じゃないんだなって気づきましたね」
知らないはずがない。多忙な中、東出はつい前日の自分にまつわる些細なネットニュースもチェックしていたのだから。にもかかわらず「知らなかった」と吐いたのは東出の意地だと思った。
デッドボールを受けた打者が交代させられたくないがために、痛みを隠し、ことさら元気な様子で一塁に駆けていくことがある。東出の不自然な明るさは、それに似ていた。
#3「浮気は魂の殺人であることを痛感した」へつづく
取材・文/中村計 撮影/石垣星児
〈東出昌大はなぜ、メディア嫌いにならないのか。どれだけ嘘を書かれてもメディアの人間と仲よくできる理由「罪を憎んで人を憎まずじゃないですけど…」〉へ続く
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