〈石破おろし急加速〉「党員投票のない総裁選」で急浮上する“高市早苗じゃない”次期総裁候補の名前
集英社オンライン / 2024年10月28日 18時36分
「裏金議員」の公認・非公認をめぐる迷走や、選挙戦最終盤に発覚した「裏公認料2000万円」問題が打撃となり、2009年の政権交代時以来15年ぶりの過半数割れに追い込まれた自民党と公明党。「自公で過半数」を勝敗ラインとして設定していた石破茂首相は続投の意向を表明したが、もともと党内基盤が弱い首相の政権運営が混迷するのは必至だ。自公以外との連携も迫られるが、「行くも地獄、退くも地獄」のいばらの道が首相を待ち受ける。
息の根止めた「裏公認料2000万円」問題
「『大物のこの人も?』っていう議員も含め、軒並み落ちているね……」
衆院選の開票速報が流れるNHKの画面を見ながら、自民候補の陣営関係者はため息をついた。
28日未明には全議席が確定し、自民191、公明24で与党の議席は計215にとどまった。過半数の233には及ばず、党内からは石破首相や党執行部の責任を問う声が上がっている。
当初は「国民人気の高い石破氏を首相に担げば、自民の単独過半数は無理でも、自公で過半数は確保できる」との見方が強かったが、逆風は自民の想定以上だった。
公示前には「裏金議員」を原則公認するという党執行部の方針が報じられ、その後一部が非公認、「裏金議員」全員の比例復活を認めないという方針に転換。二転三転する石破首相に、国民の失望は大きくなった。
さらに、選挙戦最終盤に発覚したのが、非公認の「裏金議員」が代表を務める自民党総支部への2000万円支給だった。
自民関係者は「裏公認料2000万円問題で、完全に息の根を止められた感じだったね……。有権者に『全然反省してないじゃん』って思われてしまった」と嘆く。
早々に「石破おろし」?
こうして石破首相や党執行部の「判断ミス」も重なり、15年ぶりの過半数割れに追い込まれた与党。
石破首相は投開票日の夜、テレビ朝日のインタビューの中で「現在の(首相の)職責をこれからも全うする考えか」と問われ、「そういうことです」と述べた。
しかし、自民党内からは「投開票日前から『石破首相は投開票翌日にも内閣総辞職を表明するのでは』という観測が永田町で流れていた。そうならなくても、石破おろしは起きるだろうし、政権運営は行き詰まるだろう」との声が上がる。
すでに、約1ヶ月しか経っていない石破内閣・党執行部は瓦解しつつある。
内閣では、牧原秀樹法相、小里泰弘農水相の2閣僚が落選。党四役の一人である小泉進次郎選対委員長は「選挙はいかなる結果であろうとも、選対委員長である私の責任」と述べ、選対委員長を辞任した。
森山裕幹事長は続投する意向だが、「裏公認料2000万円」問題などをめぐって責任を問う声は大きい。
「森山氏の責任は大きい。だが森山氏が辞めたところで、先が長くないであろう石破首相のもとで、党幹部を引き受ける人がいるか。菅政権が末期に人事で立ち行かなくなり、退陣に追い込まれたことを思い出す。党内で好かれていない石破氏を首相にしたのは、選挙に勝つためだけだったので、選挙で大敗した石破氏を首相として担いでいる意味はない」(自民議員)
2025年夏には参院選も控えており、党内では「参院選は別の首相のもと戦う」との見方から早くも「ポスト石破」の名前が取りざたされる。
石破首相が退陣し、党則で定められた「特に緊急を要するとき」と判断されると、総裁選は9月のようなフルスペックではなく、国会議員と都道府県連の代表による投票で行われる見込みだ。
「党員投票のない総裁選だと、党員人気が頼みの綱の高市氏にとっては不利でしょう。しばらく衆院選もないと、今回の総裁選ほど国民人気は求められない。政策の継続性、安定性の観点からも林芳正官房長官らが軸になってくるのでは」(全国紙政治部記者)
国民・維新が頼みの綱だが…
そして、過半数を失った自公は、連立政権の枠組みの拡大や、野党との協力を目指す。
非公認となっていた「裏金議員」は、萩生田光一氏、平沢勝栄氏、西村康稔氏の3氏が当選。また、和歌山2区で二階俊博元幹事長の三男に無所属で挑んだ世耕弘成氏も衆院鞍替えに成功した。
ただ、自公にこの4人を足したとしても219人で、過半数の233議席には及ばない。
そこで、他党との協力が不可欠になってくる。
自民は選挙戦中盤に自公の過半数割れを想定し、国民民主を連立に取り込むことなどを協議。維新側にも水面下で政権への協力を相談している。しかし、両党とも連立政権への参加には否定的だ。
こうした状況を受け、特別国会で行なわれる首班指名(首相を指名する選挙)の行方は不透明になってきた。
衆院での首班指名で、自公は石破氏に、立憲、国民民主、維新など各党がそれぞれ自党の代表に投票した場合、石破氏は1回目の投票で過半数を得られない。
そのため、上位2人による決選投票が行われる。
「この決戦投票で勝った人物が、衆院の指名を受けたということになります。石破氏VS立憲の野田佳彦代表の決選投票で、国民民主や維新がどう動くか。仮に計66議席を獲得した両党が棄権すれば、石破氏が野田氏を上回り、政権は存続できます。
自民としては、両党が石破氏に投票しないまでも、棄権してもらえるよう説得するのではないでしょうか」(全国紙政治部記者)
国民民主は2022年、岸田文雄首相(当時)がガソリン税を一時的に引き下げる「トリガー条項」の凍結解除を検討することと引き換えに当初予算案に賛成したこともある。維新も菅義偉元首相らと近く、政府・与党とは「是々非々」の姿勢で臨むことを強調している。
そのため自民党内では「両党の政策の一部を実現する代わりに、法案や予算案ごとに賛成してもらって、なんとか自公政権を維持するしかない」と、両党を頼みの綱とする声が漏れる。
過去に、衆院で過半数を割り込んだ「少数与党」になった羽田孜内閣は64日で終わった。10月1日に発足したばかりの石破内閣の行く末は……。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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