1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 社会
  4. 社会

「やっと搾取が終わる…」自公惨敗、国民民主躍進。無視されてきた現役世代の声が、ついに政治に反映されると言える理由

集英社オンライン / 2024年10月28日 18時42分

現役世代の支持を得て国民民主が躍進した一方、給付金など高齢者優遇の公約をかかげた自公は議席数を激減させた。特に公明党は代表、副代表が落選し、危機的な状況に陥っている。過半数を割った与党は、現役世代に向けた政策を掲げる国民か維新の協力を得なくてはいけない状況だ。シルバー民主主義ともいわれる状況の中で、ついに現役世代の声が反映されるチャンスが来た――。

【画像】国民民主が示した年収別「増える手取り額」

 

キャスティングボートを握った“第三極”

激動の衆議院選挙が終わって一夜明けた。各政党の議席数が明らかになり、新しい政治の構図が見えてきた。

「手取りを増やす」として現役世代の立場にたった国民民主が公示前の議席数を4倍にする躍進をみせた一方、与党は過半数233議席を割る大惨敗を喫した。

とくに「高齢者の買収では!?」と批判が集まった住民税非課税世帯に10万円給付、総額1.5兆円のバラマキを掲げた公明党は、石井啓一代表・佐藤茂樹副代表・伊佐進一元厚労副大臣いずれもが落選。

議席は改選前32議席から24議席へと大幅に減少した。

開票当日のテレビ報道におけるインタビュアーたちは、玉木雄一郎・国民民主代表に対し「首班指名で野田佳彦と書くのか」と、立憲民主・国民民主連立での政権交代を促したが、玉木代表は「ありません」と否定。

「我々は政策本位でやってきたので、自公が良い政策をするのであれば当然、協力をしていくが、おかしなことにはおかしいと言い続けたい」と強調した。

一方、日本維新の会の馬場代表も27日の記者会見で「連立政権入りは今のところ全く考えていない」と述べた。

もしも国民民主や維新が自民・公明や、立憲を中心とした野党とも連立しないのであれば、自公は「与党過半数割れでの政権運営」ということになる。

そうなれば国民民主や維新の政策議論での影響力は最大となり、国民に対する政策議論の透明性は向上する。

仕組みを解説しよう。

これまで最多議席政党が単独過半数をとれなかった場合、「安定した国会運営」のために他党と連立政権を組み議案を成立させることができる過半数を確保してきた。その見返りとして、他党に大臣職を分配することが慣例となっている。

もしも国民民主と維新がいずれの党とも手を組まない場合、自民・公明が最多議席となり石破首相の続投が決まるが、議会は過半数割れとなるため与党単独での法案成立ができなくなる。

法案を成立させるためには国民民主か維新どちらかの協力を得ることが不可欠となり、与党はその意向を無視できなくなる。こうして「少数政党がキャスティングボートを握った」状態が生まれる。

またこれまでのように与党内の政調会議という公開規定のない“密室”で政策を決めることはできなくなり、国会中継や議事録作成など国民の見える場で政策形成の過程をチェックすることができるようになる。

国民民主は今回の衆院選で、「手取りを増やす。」をスローガンに、社会保険料の軽減や所得税の減税、基礎控除の増額、年少扶養控除の復活など、現役世代に向けた政策を公約に掲げていた。

維新も「現役世代に不利な制度を徹底的に見直す」とし、医療費原則3割化など高齢者医療制度の適正化や、社会保険料の負担軽減などを訴えていた。

両党がこのような法案を通すことを条件に政権に協力をする可能性が高く、両党の政策が実現する目が出てきた。

これまでにない国会運営で混乱は起こるだろうが、シルバー民主主義の中で不可能かと思われてきた現役世代の声が反映される、最大のチャンスだと言える。

何が違ったのか。明暗を分けた国民民主と維新

現役世代にとっては千載一遇のチャンスが巡ってきているものの、日本維新の会は、改選前43議席から38議席へと後退したのが気になる人も多いだろう。

何が両者の明暗を分けたのだろうか。

どちらの政党も細かな表現は違えど「医療費3割負担の対象拡大」「終末期医療の在り方の検討」と、選挙においてはリスクとなる公的支出削減策を明言していた。

違いがあったのは、減らした支出の使途の部分だ。

日本維新の会の政策は「教育無償化」「18歳以下の医療費および出産費用無償化」といった再分配政策を中心としており、肝心の社会保険料の軽減については金額など具体的な規模感の言及を避けた。

また、選挙戦序盤で馬場代表が結党以来の党是である「金融資産課税の検討」について言及したことも、国民の中に警戒感を生んでしまった。

維新の行政改革の成果を身をもって知る大阪では、公明党に対し全勝という大金星をあげたが、比例票では政策の魅力を伝えきれず苦戦した。

対する国民民主党は「所得税が発生する『年収の壁』を103万円から178万円へ引き上げる」「年少扶養控除の復活」といった減税政策を掲げ、榛葉賀津也幹事長を中心に具体的な金額をまとめた。
そのメッセージは明確で、わかりやすかった。

年収の壁となっている控除額を引き上げることによりパートタイマーで働く女性や高齢者、あるいは学生アルバイターの手取りは増加する。また、節税目的で働く時間をセーブする必要がなくなるため、市場全体の労働力不足も改善する。

こういった「数字を伴った減税政策」の明快さが幅広い支持を集め、国民民主の比例代表の議席数は改選前5議席から17議席へ大幅に増えた。

現役世代の声が政治に反映される未来

今回の衆議院選挙で大幅に躍進した政党がもう一つある。改選前98議席から148議席へ伸ばした立憲民主党だ。

日本テレビの出口調査における年齢別の比例投票先を見ると20-30代では国民・維新の第三極があわせて約35%と最多なのに対し、50代では第三極と立憲が21%で拮抗、60代以上では立憲が野党最多の投票先となる。

つまり与党に対する高齢者の批判票は、高齢者にとってなじみ深い政治家たちが集う立憲民主党に流れたということになる。

高齢世代の人口と投票率の高さゆえに、野党の中では立憲民主党が最大の議席数を得たということだ。

選挙後、「一番に取り組みたい政策」について問われた玉木国民民主代表は「年収の壁の引き上げ(による減税)」を挙げた一方、野田立憲民主代表は「紙の保険証を使えるようにする」と答えた。

これにはさすがに「一番に取り組みたい政策がそれなのか」と、SNSで批判や失望の声が集まった。最大野党がいまだシルバー民主主義にとらわれていることが明らかになった瞬間である。

若い世代は自身の生活基盤を築くのが最優先であり、仕事で成果をあげることや、人生のパートナー探しに忙しい。ただでさえ投票に行く優先順位が低くなりがちなうえ、長く続いた“自分たち不在”の政策論争で無力感を覚えるのも仕方ない。

しかし国民民主党・日本維新の会といった第三極政党がキャスティングボートを握り、若い世代の声が政策として実現していくと、その意識も変わってくる可能性がある。

玉木国民民主代表の判断次第では、いままで見たことのない国会議論が見られるかもしれない。その可能性に、ワクワクしている。

文/中田智之

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください