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「肌色が残るのが納得いかないんですよ」耳の中から局部まで…全身に刺青を入れ続ける、元極道の半生

集英社オンライン / 2024年11月2日 17時0分

「肌色の部分をなくしたい!」と全身に刺青を入れ続けた男がいる。熱海龍さん(64)だ。10代で宮大工の祖父、極道の父への憧れから刺青を入れはじめ、60代で彫師からは「もう入れられるところはない」と言われるまで突きつめた。

【画像】全身刺青男、衝撃の全身図

彫られることによる痛みを緩和するため「今日はマッサージを受けるぞ!」とイメージトレーニングをしながら、かつて週3回無遅刻無欠勤で通い続けた原宿のタトゥースタジオで、その半生を聞いた。(前後編の前編)

耳の穴の中まで入れた刺青、痛みはイメトレで克服

──熱海さんの刺青の量が、日本一ではないかとうかがいました。

熱海龍さん(以下同) 細かく確認したわけじゃないけど、俺以上って聞いたことがないかな。俺は男の大事なところをはじめ、肛門の周辺のシワも伸ばして入れているし、耳の穴の中にも入れています。先生(彫師)も見たことがないとおっしゃっていますね。だからここまでしているのは国内では俺くらいではないかと。



そういえば、この前、イベントで同じくらい入れている名古屋の方にお会いしましたが、少なくともこのふたりがツートップでは。

──耳の穴の中まで!?

肌色が残るのが納得いかないんですよ。まだ肌色がある……って探してたどり着いたのが、耳の穴の中だね。先生には本当に苦心して入れていただきました。それと珍しいところでは口唇の裏も入っているよ。

 ──逆に、今入れていないところはありますか?

手の平と足の裏は顔料が抜けてしまうから入れられない。以前、足の裏は入れたけど抜けてきちゃったね。それと刺青って皮膚をピンと張らないと彫れないからサオ、タマも入れられません。ゴムで縛って先端には入れたけど。あと目のキワのような、眼球に近いところは難しくて限界まで攻めてもらって。

──痛かったところは?

どこも痛いよ〜! 特に痛いのは急所と脇の下。唇や息子の先端は出血が多いから先生が大変だね。痛みは、切れないカミソリでぐりぐり切られているようなイメージで、後からもジンジン、ヒリヒリしてくる。

10時間連続で彫っていたこともあります。先生がマシンを洗い始めて、終わったって安心していたら、彫ったところを見直して「もう少し直していいですか?」なんて言われた日にはね……「勘弁してくれ!!」って。

──痛みは平気なんですか?

平気じゃないよ(笑)。なんといっても、イメトレが大事ですね。今日はマッサージを受ける
ぞ!って思い込むんです。今日は原宿(スタジオ所在地)で気持ちいいマッサージの日だ、やった
ー! って。長く思い込んでいれば気持ちよくなってきます。でも先生に何度も痛いところを彫られ
ると「今日はなにか気に食わないことがあるのかな……」ってつい不安になったりね。


それと、先生がいつも聞いてくれるのは「ちゃんとご飯を食べてきましたか?」ってこと。空腹だと血流が激しくなっていて、血も出やすいし痛みも感じやすいんだって。

アイロン台で丁半博打していた父の粋な世界への憧れ

──たくさんの絵柄が詰め込まれていますが、調和が取れてとても美しいですね。

和彫りで統一しているからですね。気に入っているのは頭で対峙している花魁と落武者の生首。それから、俺の体には蛇が3尾と龍が5尾入ってる。本来、蛇と龍は合わないらしいんだけど、仲よくやってくれてるよ(笑)。

最初に彫ったのは背中の観音様。お守り代わりの大事な観音様の顔を、蚊が刺したりすると「畜生!」って思ったりね。

 ──そもそも、最初に刺青を入れたきっかけは?

刺青が好きだったからです。最初は16歳か17歳のときだから48年くらい前だね。親父もお祖父ちゃんも曾祖父ちゃんも刺青が入っていて、親父と行く銭湯では他のお客さんの刺青もよく見ていて、般若なんかを見ては幼心にカッコいいなって思ってました。それに、浅草の遊び人だった父の粋な世界に憧れがありました。

親父のお客にも刺青の人が多くてね。お客を集めて白いアイロン台を中央に据えて、そこにツボを伏せて「丁か半か」なんてやってたのをよく覚えてるよ。俺がそれを見てると、お袋が「ちょっとこっちに来なさい!」って慌てて見せないようにするの。だから、親父もカタギじゃなかったんだね。女をとっかえひっかえするから、俺はたらい回しにされてたんだけど(笑)。今となっては、いい思い出です。

祖父は宮大工、曽祖父は鳶職で、職人だから刺青を入れていたようですね。祖父は父にも俺にも大工になってほしかったみたいだけど、父の代からは脇道に逸れてしまって(笑)。

「その道に行くなら頑張れよ」

――親父「も」カタギじゃなかったということは、やはり熱海さんも……?

今はカタギですから安心してください(笑)。

地元で暴走族をやっていて鑑別所に入ったりもしてたんですが、そういうヤツにはスカウトが来るんですよ。だから、10代で出入りするようになり、そのままゲソつけました(編註:組織に入るの意)。父とは所属組織が反目(対抗組織)でしたが、「その道に行くなら頑張れよ」と言ってくれていました。

20代半ばで、ついていたアニキが破門されたことをきっかけに、自分も組の札をおろしました。それから事件をおこして、長い懲役に行き、30代後半でカタギになって、それ以外はずっとすねかじりでまともに働いたことがありません(笑)。

――映画みたいな世界ですね。刺青の絵柄はご自身で決めるのでしょうか?

先生と相談しながらですね。昔は彫師が人を見て決めてたみたい。俺も10代のときにお願いした先生には「あんたは面散らし(編註:おかめ、ひょっとこ、鬼、般若、天狗、狐などの複数の面を配置した刺青)だな」って言われましてね。結局、変えてもらったけど、今思えば俺に合ってたかもしれないな……。

〈後編〉総費用は「高級外車1台分」…タトゥーを入れ続けて困ったことは「スマホの顔認証が登録できないことくらい」に続く

取材・文/宿無の翁 写真/わけとく 
協力/H&Ms 原宿スタジオ(https://www.instagram.com/masashi_tattoo/)

50代になって「全身刺青男」に…総費用は「高級外車1台分」、困ったことは「スマホの顔認証が登録できないこと」〉へ続く

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