〈兵庫・出直し知事選〉百条委で重大証言「2000万円準備して」片山元副知事の“怪しい金集め”と“補助金4億円増額指示”〈問題の核心は“おねだり”じゃない〉
集英社オンライン / 2024年10月30日 17時18分
〈〈兵庫県・資金疑惑が拡大〉クラファン不発で阪神・オリックス優勝パレードのお金が足りず、副知事が泣きついた財団はポンッと最高額の2000万円を出した……その財団名を県はなぜか黒塗りに〉から続く
パワハラやタカリ、公金の不正支出疑惑などが拡大した末に86人の県議会議員の全員一致による不信任決議案の可決で斎藤元彦前兵庫県知事は失職した。10月31日からは出直し知事選が始まり斎藤氏も出馬する意向だ。これを前に、斎藤氏と元副知事が主導した補助金増額に絡む疑惑が県議会の調査委員会で追及されている。次の知事が誰になるかにかかわらず、真相解明を求める声は大きくなる一方だ。
兵庫県に多額の寄付を行なったX財団
「斎藤氏については約9700人の県職員全員アンケートで回答者の4割がパワハラを、2割が贈答品受け取りを直接か伝聞で見聞きしたと答えたため、メディアは『パワハラ知事』『おねだり知事』と呼んできました。でも問題の核心はそこじゃないんです。
より重大なのは、昨年11月に大阪府と兵庫県が行なったプロ野球阪神・オリックスの優勝記念パレードの協賛金集めに絡んだ金融機関への補助金の不正増額疑惑です。
県議会の調査特別委員会、いわゆる百条委が10月24、25両日に開かれたのですが、疑惑を否定する当時の片山安孝副知事(7月に辞任)の主張に真っ向から反する証言が当事者から次々と出たのです」
兵庫県関係者がそう語る補助金問題が何か、まず振り返っておこう。
兵庫県と大阪府は昨年11月23日のパレードで、寄付で約5億円の費用を集め公費は使わないとぶちあげた。ところがクラウドファンディングは開催前日までに約9300万円しか集まらず、企業協賛金に頼ることになる。
「最終的に費用は約6億5300万円かかりましたが、法人から121件、計約5億3100万円の協賛金を集めしのぎました。ただ、パレード後も企業や団体を回って金策を続け、ようやくそろえた形です。兵庫県の金集めの司令塔が片山氏でした」(兵庫県OB)
県行政に明るい別の関係者によると、パレード終了時点で不足していた資金の調達について大阪・兵庫の府県間で話し合いがもたれ、兵庫県は4千数百万円が割り当てられたとみられる。
このうち、片山氏は少なくとも4000万円を、直接乗り出した2つのルートから確保していた。その一つが2002年に神戸市内に設立されたX財団だ。管理するビルに兵庫県警の一部の部署が入居するなど県とは深い付き合いがある。
「X財団はパレード前から100万円の協賛金提供が決まっており、パレード後の12月27日に入金されました。ところがその翌日に、片山副知事の名で追加支援を求める文書が財団に出ています。
要求額は明記されていませんが、同じ12月28日付で県はX財団に2000万円の請求書を送っており、この日のうちに同額の追加拠出が決まったとみられます。2000万円は今年1月31日に県に支払われました」(県関係者)
X財団が出した計2100万円は、兵庫県内の企業・団体の拠出額としては最も多い。
しかし県は、同じくパレード終了後に100万円を拠出した日本を代表するメーカーY重工と、50万円を拠出した地元経済人の資産管理会社Z社とともに、X財団が拠出した事実を明らかにしていない。
X財団とY重工の名はパレード事務局の報告文書に協賛したと明記されている。それでも県担当者は「この3法人からは名前を伏せることを条件に拠出を受けた」として、情報公開請求や取材に対し、依然としてX財団とY重工から協賛を受けたことは認めていない。
「これじゃ足りん。4億にせえ」
片山氏のもう一つのルートが信用金庫業界だ。
「県内の信用金庫11行が合計で2000万円を協賛しました。その大半もパレードの後に拠出が決まっています。この経緯について、片山氏は9月6日の百条委の証人尋問で、県内信金業界で顔の広いB信金の理事長をパレード直前に訪ねて県内信金への拠出呼び掛けを求めた、と説明しました。
この後、11行が50~300万円を出し、合計2000万円が集まりました。しかしパレード後に拠出しても宣伝効果はないに等しく、メリットもなしに信金が金を出したとなれば経営陣は背任に問われかねません。
ここで浮かんだのが、信金に見返りに補助金をつけたのではないかという疑惑です」(在阪記者)
問題になったのは新型コロナウイルス感染症対策の一つである金融機関による無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)制度に絡む補助金だ。
兵庫県は、金融機関がゼロゼロ融資で中小事業者を支援すれば1件当たり最高10万円の補助金を金融機関に出す仕組みをコロナ禍で始めた。
2022年補正予算で8億円が計上されたこの補助金だが、コロナ禍も落ち着いたことから、昨年秋に編成された2023年補正予算では1億円が計上される予定だった。
「実施見込みを基に現場が積み上げた必要額が1億円でした。ところが片山副知事が突然『これじゃ足りん。4億にせえ』と言い始め、担当課は要求額を3億7500万円に引き上げました。算定根拠は失われ、上司の言う通りにしたということです。
さらに今度は斎藤知事がパレード2日前に『全体をまるく4億円程度で』計上しろと求めたのです。
またもや何の根拠もなく2500万円もの税金の追加支出が決まったわけです」(県関係者)
この経緯は関わった県職員による詳細なメモに記録されており、メモを入手した百条委の追及に対し、両氏は事実を認めている。
「メモは増額指示を異常だと感じた担当職員が後に問題になると考え作成したとみられています」と地元記者は話す。
深まる片山元副知事の疑惑
「信金への拠出要請と、補助金増額指示があった時期は一致している。このため『補助金を多く付けるからパレードに拠出しろ』との要求が信金側になされたのではないかとの疑惑が浮上したのです。事実なら、不当な税金支出、背任事件です」と県関係者は話す。
片山氏は9月6日の百条委の証人尋問で、B信金理事長に協力は求めたが「具体的な額は言っていません」と主張し、拠出額は信金側が自主的に決めたと強調した。
「ところが、関係者によれば、10月24日に非公開で行なわれた百条委で、B信金理事長が『2000万円準備してもらえるとありがたい、と片山氏から言われ、信金ごとの分担額を決めました』という趣旨の証言をしました。片山氏の証言は偽証の疑いが出てきました。
B信金理事長は、パレード協賛金は補助金のキックバックだとの指摘には同意していません。ただ、これは『そうだ』と言えば信金も背任の共犯になるので、この証言は今後の検証の対象です。警察や検察の捜査でなければ難しい部分かもしれません」(在阪記者)
さらに10月24日の百条委では、補助金を1億円から4億円に積み上げる作業に関わった県職員が、増額する根拠は「なかった」との趣旨の証言をしたと県関係者は話す。
「当たり前です。需要予測に基づき必要な予算を1億円と算出したのに、それが4億円になった理由は知事と副知事からの指図だけなんですから」(同関係者)
「10月25日に2度目の証人尋問を受けた片山氏は終了後、記者団に『補助金をキックバックした事実はない。(B信金理事長には)一信金当たり200万円でお願いしたい、と話した。(補助金を4億円にしたのは)適正な補助額だ』と主張しました。
しかし、信金側に具体的な金額を求めていないという9月の主張が崩れた以上、他の言い分を信じられるでしょうか」(地元記者)
斎藤氏とともに県政を差配していた片山氏の主張を、当事者らが公然と否定し始めた。この間の県政混乱の“核心”ともいえる疑惑の解明へ続く扉が開こうとしている。
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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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