〈法規制が進む国も〉若者たちのSNS疲れ「なくても困らない」「不毛な論争にウンザリ」Z世代のホンネは?
集英社オンライン / 2024年11月4日 12時0分
今、世界中でSNSの弊害に注目が集まり、法規制が広がりを見せている。アメリカ、イギリス、カナダなどでは未成年によるSNSの利用が制限され、ブラジルでは今年8月末に「X」のサービスそのものが一時停止された。誹謗中傷など悪い面ばかりが目立っているSNSだが、Z世代はどう向き合っているのか。原宿や新宿など、若者が集まる街を中心に街頭で調査を行なった。
【画像】Z世代男性が先生から言われ、SNSと距離を置けるようになったセリフ
ブラジルでは一時期Xが利用禁止に!? 悪影響が問題に
今年8月末、ブラジルで最高裁判所の判断により、国内で「X」のサービスを停止する命令が下された。これはフェイクニュースやヘイトスピーチへの対策を目的としており、ツールを使ってアクセスするユーザーには、1日あたり5万レアル(約130万円)の罰金が科されるという厳しい措置が講じられた。
その後、フェイク情報を拡散するアカウントのブロックや、X社のCEOイーロン・マスク氏が罰金を支払ったことを受け、10月9日から利用が再開。禁止期間は、わずか1カ月ほどで終了した。
国内では、今年6月にお笑いコンビ・EXITの兼近大樹がXのアカウントを削除したことが話題になった。その理由について、彼はレギュラー出演する『ABEMA Prime』(ABEMA)で「誹謗中傷をしているようなヤバイ人を見て、自分がその仲間だと思われたくなかったし、そこに居たくないと思った。それで『やめよう』と決めた」と告白。
また、9月放送の冠番組『EXITV』(フジテレビ系)でも、X上で繰り広げられる激しい論争について触れ、「見たくなくて、それでやめました」と明かしている。
実際のところ、日本でもSNS上では日々多くの不毛な論争が繰り広げられており、ユーザーにとって居心地のいい場所とは言い難い状況になっている。一方で、SNSは災害情報などを得るための社会的インフラとしても機能しており、完全にやめるわけにもいかない、という側面もあるだろう。
こうしたジレンマに対して、“SNSネイティブ”ともいえるZ世代はどのように向き合っているのか。街頭調査を行い、その実態を探ってみた。
まず訪れたのは、多くの若者たちが行き交う原宿。さっそくSNSの利用について聞いてみると、次のような意見が上がってきた。
「インスタ(Instagram)やXなど、いろいろなSNSを使っています。特によく使うのはインスタで、ストーリーズをメインに友人同士で閲覧し合っています。トラブルもないし、見ていて心が傷つくようなことも特にありません」(20歳男性・大学2年生)
「私の周囲には、SNSでメンタルを病んでしまった人もおらず、みんな平和に楽しく使っています。ただ、もしSNSをやっていなくても、そんなに困ることはないんじゃないかなと思いますね」(23歳女性・飲食業)
原宿では、SNSに対してポジティブな姿勢を見せる若者が多数を占めた。少し違った意見を求め、筆者は学生街としても有名な御茶ノ水へと場所を移した。
「親の影響でSNSが禁止」という学生も
御茶ノ水は有名大学や予備校が密集しているエリアであり、平日土日を問わず、多くの学生たちで賑わっている。ここでは、原宿とは違った、次のような意見が聞こえてきた。
「SNSに対して親があまり肯定的ではなく、僕自身も学校のリテラシー教育でネットは怖いと思っていたので、高校時代はSNSをやっていませんでした。でも、大学に入ってからは、新入生の交流とかで『インスタ交換しない?』と言われる機会が増えてきて……。
最初は『ごめん、やってないんだ』って答えていたんですけど、そのたびに変な空気になってしまって。そんなことが3回くらい続いたので、『これはアカウントを作ったほうがいいな』と思って始めました」(18歳男性・大学1年生)
「僕はSNSをやってないです。これまでアカウントを作ったこともありません。理由は、単純に楽しそうだと思わないので。それに、インスタで友人と繋がらなくても、LINEで友人とやりとりできますし。SNSを使っていないことで、不利益を感じた経験もないです。
でも、友人に1人だけ、LINEもSNSも使っていない人がいるんです。親が厳しいらしくて、遊びに誘うときは電話しなきゃいけないんです。だから、周囲からは『誘うのがちょっと面倒』って感じで、少し距離が生まれているようですね」(18歳男性・受験生)
SNSは若者にとって必須のツールだが、家庭の方針によって利用できないケースもあるようだ。
筆者はさらに場所を変え、多くの人が集まる新宿へと足を伸ばした。すると、そこでは「SNSを見るのに疲れて、やめてしまった」という若者に出会った。
X上で定期的に起こる“あの議論”にうんざりして……
「学生時代はXを見ていましたが、社会人になってからはほとんど閲覧しなくなりました。アカウントは残しているものの、アプリはスマホから削除しています。インスタやTikTokには興味がなく、もともと使っていません」(25歳男性・会社員)
その理由を詳しく尋ねると、「病んだわけではないんですけど……」と前置きしつつ、今でもXで定期的に繰り返される“あの議論”にうんざりしたことを明かしてくれた。
「2019年ごろだったかな? 『デートでサイゼリヤは、アリかナシか?』みたいな論争が大きな話題になっていて、本当にうんざりしたんです。肯定派も否定派も必死で、見るに耐えなくて結局『サイゼ』をミュートワードに設定しました。それ以降も、性別や政治的な分断が激しくて、最終的にまったく見なくなりました」(同男性)
男性はさらに、かつて感銘を受けた電子機器の取り扱いにまつわる言葉や、スマホ利用のジレンマなどについても深く語ってくれた。
「高校時代、先生から『スマホは受動的デバイスで、パソコンは能動的デバイスだ』と言われたのがすごく印象に残っていて。パソコンは自分から情報を取りに行くけれど、スマホは何もしなくても情報が流れてくるからよくない、と。
だから僕、スマホのホーム画面にアプリを表示しない設定にしています。アイコンがあると、ついタップしたくなるので。本当はガラケーにしたいくらいですが、仕事では連絡ツールとして使いますし、WEB広告に携わっているので、ネットのトレンドも少しは追わなきゃいけなくて……」(同男性)
昨年10月、イギリスのキーガン教育大臣(当時)は、「ネットいじめ」をなくす施策として、イングランド全土の学校内でスマホの使用を禁止する方針を発表した。
また、今年3月には、アメリカ・フロリダ州で14歳未満のSNSアカウントの取得を禁じる法案が成立。
カナダでも4都市の教育委員会が「未成年に有害な影響を与える」「強迫的に使用するよう設計され、子どもの考え方、行動、学習方法を変えてしまった」などとして、40億カナダドル(約4476億円)の損害賠償を求めてMeta社やTikTokの運営会社などを提訴した。
そのほか、オーストラリアやノルウェーでも未成年を対象にSNSの利用制限の検討が発表されるなど、世界各地で進む、SNS規制の動き。日本でも、何かしらの対策が必要なのだろうか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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