35歳になる演歌歌手・大江裕、祖父母の「孫が見たい」発言が一番の悩み…2025年の“36(三郎)イヤー”に向けて返すべき演歌界への恩義
集英社オンライン / 2024年11月2日 10時0分
〈パニック障害を発症し、一時は歌うこともできず…そんな大江裕の背中を押した師匠・北島三郎の言葉〈サブちゃん、さんま、安住アナ…3人の師匠に育てられた演歌道〉〉から続く
「平成生まれの昭和育ち」をキャチコピーに、10代から演歌の道を走り続けてきた大江裕。その愛嬌溢れるキャラクターから、昨今は歌番組だけでなく、「水曜日のダウンタウン」「秋山ロケの地図」といったバラエティ番組への出演も急増している。なぜ大江氏は、こうした番組の出演に力を入れ始めたのか。また、35歳を目前にしたなかで、価値観の変化や現在抱えているプライベートの悩み、理想のパートナー像なども聞いてみた。(前後編の後編)
話題となった“水ダウ”出演。バラエティ露出について思うこと
――2022年にはTBS「水曜日のダウンタウン」へのご出演が話題となりましたが、メディア露出に関して、何かご心境の変化があったのでしょうか?
大江裕(以下、同) まず、これまでは北島先生と一緒に歩いてきたわけなのですが、その過程で「いろいろなことにチャレンジしなきゃいけないんだな」ということに気づいたんです。また、個人的にもいっそう「ここままではダメだ」と思いまして。
というのも、あるとき若い方々に「演歌って知っていますか?」と聞いたら、「知りません」と。それが、本当にショックだったんです。それで「この学生さんたちに演歌を聞いてもらうにはどうしたらいいのか」と考えた末に、少し露出を変えていこうと思ったんです。
僕がバラエティ番組に出ることで、「この人は何の仕事をしているんだろう」と気にかけてもらい、その結果、演歌の存在を知ってもらう。
僕の歌じゃなくてもいいんです。演歌というものを、若い世代の方にもっと聞いてもらいたい。そう考えて、バラエティ番組にも出演することにしました。
――バラエティ番組にご出演するのは、実際どのような心境なのでしょう? 実はあまり出たくないとか……?
初めて出演した番組が「さんまのSUPERからくりTV」ですから、僕としては「戻ってきたな」という感覚です。歌手デビューするときに「バラエティ番組は卒業だ」と思っていましたが、縁というものは繋がっているもので。
実は、僕が出させていただいた「水曜日のダウンタウン」や「いくらかわかる金?」のディレクターさんが、当時「さんまのSUPERからくりTV」のADだった方なんです。
だから、もし18年前に僕が仕事に対して不誠実だったら、こうした機会もなかったわけです。真面目に向き合ってきたからこそ、応援したいということで、また声をかけていただけたんです。
――新たに交友が生まれたタレントさんなどはいらっしゃいますか?
たとえば、鈴木奈々さんとは仲よくさせていただいていますね。あとは氷川きよしさんとか、加藤登紀子さんとか……本当にいろいろな方に可愛がってもらっています。
35歳の大江裕が抱える最新のお悩み事情
――今年35歳になりますが、20代のころと比べて、価値観など変化したことはありますでしょうか?
いろいろ変わりましたよ。たとえば、服装。20代のときは、服なんて本当に何でもいいと思っていました。そもそも、興味すらなかったので。
でも30代を超えてくると、人からどういうふうに見られているのか、すごく気になってくる。だから、20代では常に全身黒い服を着用していんですが、今では少し頑張って、今日みたいなブラウンのスーツを着たり、見栄えのするものを着るようになりました。
あとは、「悩み」も変わったと思います。
たとえば、30代半ばにもなると、同級生はほとんど結婚しているんですよ。僕はまだ独身なのですが、一番辛いのは、祖父母に「孫が見たい」と言われること。実際には僕が孫なわけですが、息子同然に育ててくれたので、やっぱり僕の子どもの顔が見たいんでしょうね。
まだ2人とも元気で、僕には歌手としてだけでなく、「私生活でも幸せになってもらいたい」と思ってくれているんですよ。なので、早くそれを叶えてあげたいのですが……。
――ちなみに、大江さんの理想のパートナー像とは?
そうですね……まずは、僕の演歌の世界に口出ししない人ですね。やっぱり僕は「平成生まれの昭和育ち」ですから、黙って、僕の世界についてきてほしい、と(笑)。家ではいいんです、どんなことを言ってきても、喧嘩しても。
ただ、「演歌歌手・大江裕」として表舞台に立つときは、なるべく後ろで支えてくれるような人がいいですね。
――35歳では、20代のころよりも収入面で余裕が出ることもあると思います。大江さんが、いま一番欲しいものは?
ロレックスです。全国のおじいちゃんやおばあちゃんに「高級時計なんか着けて。生意気だな」と思われるのは嫌なんですが、たとえばいろいろな企業の社長さんと会うと、全身カジュアルなお洋服で、ロレックスを着けている方も多いんです。
手首にロレックスがあるだけで印象がガラッと変わるなら、1つくらい持っていてもいいのかなぁと。この前もテレビで同じことを言ったら、島崎和歌子さんから「買いなさい。困ったら売ればいいから」とメールをいただきました(笑)。
和歌子さんからそう言っていただけるなら、買ってしまおうかなといま悩んでいます。
――「35歳は、未経験の職種に転職する最後のチャンス」と言われる場合もあります。大江さんが転職するとしたら、どんな職業に就きますか?
なんでしょうね……。たとえば老人ホームなど、ご高齢の方々と触れ合うことができる場所はいいかもしれないですね。
あとは、いま舞踊家・振付師として活動する花柳糸之先生に教わりながら、踊りをさせていただいているんです。花柳先生が「大江くん、センスあるよ」と言ってくださっていて、演歌を辞めるとしたら、踊りの世界もいいのかもしれませんね。
こうしたことも、30代だから考えられるようになったのだと思います。20代は、とにかく無我夢中で演歌の道を走ってきましたから。
それにどこに行っても、皆さんがすごく優しく接してくださった。受けた恩は、やっぱり返さなきゃいけない。だから、やっぱり演歌はやめられないですよ。
同世代に向けたメッセージ「悲しい涙の後には 嬉し涙があるものを」
――仕事がうまくいかなかったり、人間関係に悩んだりなど、毎日に生きづらさを感じている同世代の人も多くいると思います。そんな方々へ向けて、大江さんはどのようなアドバイスをされますか?
たとえば、「いまの仕事が辛くて仕方がない」という方もたくさんいらっしゃると思います。そうした方に考えてほしいのが、「いつでも辞めることはできるんだ」ということ。
僕にも何度も辛いと思うときがありましたし、極論を言ってしまえば、今日マネージャーさんに「辞めさせてください」と言うことだってできるんです。
でも、僕の好きな言葉に「悲しい涙の後には 嬉し涙があるものを」というものがありますが、辛いことを乗り切ったあとには、必ず明るい未来が待っています。なので、将来「あのとき辞めなきゃよかったな」と後悔することだけはしないでほしい。
自分だけで考えずに、親御さんや友人に相談しながら、自分なりの生き方を決めていってほしいですね。
――11月6日には、新曲『北海ながれ歌』がリリースされます。この新曲は、どういった内容のものなのでしょうか?
この曲は、『大江裕の北海道湯るり旅』(HBCテレビ)の放送をきっかけに、北海道方面の活動が増えたことがきっかけでリリースが決まりました。
僕はこれまで、北島先生(「原譲二」名義)に曲を作っていただいていたのですが、そのときは「辛いときこそ、頑張ろう」「元気に乗り越えていこう」という応援ソングが多かったんです。
一方、今回は弦哲也さんに作曲していただいたことでガラリと変わり、「恋」がテーマとなっています。
歌詞としては、「2人で決めて別れたのに、男には未練が残る。別れなきゃよかった。お袋にも合わせられずに、自分は親不孝だ」ということが描かれているんですが、どこか現在の自分の姿を重ねてしまって、歌うとすごい気持ちがこもってしまうんです。
僕は早くおじいちゃんに子どもの顔を見せてあげたいので、歌詞を実現させては絶対にダメなんですが(笑)。
ただ、僕としては、この歌詞の中の2人は、どこかでまた巡り合って、幸せに暮らしているんじゃないかなと。そういったことをイメージしながら、なるべく寂しくなりすぎず、明るく歌うようにしています。
――では、最後にファンの皆様にメッセージをお願いします。
いつも本当にありがとうございます。新曲のリリースのほかにも、現在バンド編成で演歌を披露しようと、来年に向けていろいろと仕込んでいるところです。
あと、来年は僕が「36歳」になるということで、「36(三郎)」イヤーなんですよ。これはもう、大々的に北島先生を祝うべく、これまで以上に精一杯頑張らなければいきたいなと思っているので、ぜひお楽しみにしていてください。
『北海ながれ歌/さいはて浪漫』大江裕(CROWN MUSIC)
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HBC「大江裕の北海道湯るり旅」という番組が不定期ながら3月よりスタートし、それに伴う北海道方面での活動が増えたことを踏まえてのリリースとなりました。作曲の弦哲也氏とは初顔合わせ。カップリングも北海道がテーマのスケール感のあるメジャー演歌です。
取材・文/毛内達大 撮影/井上たろう
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