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老後資金2000万円が数年で140万円に? 森永卓郎氏が「二度と手を出すな」と言い切る新NISAの落とし穴

集英社オンライン / 2024年11月18日 11時0分

「新入社員でもラクに1000万円超え」日本一給料が高いといわれる「投資銀行」の正体。社員が実行する、セオリーと真逆の「高く売って安く買う」手法とは〉から続く

老後の生活資金を、NISAを使って投資信託で運用しようとしている人は、生活資金を賭けて競馬や競輪をやっているのと同じだと経済アナリストの森永卓郎氏は言う。

【画像】森永氏が提唱する庶民が取るべき貯蓄方法とは

書籍『投資依存症』 (三五館シンシャ)より一部を抜粋、再構成し、これまでフタをされてきた投資のリスクについて解説する。

それなら、どうすればいいのか?

新NISAが大きなブームを引き起こし、岸田政権が掲げた「貯蓄から投資へ」という政策に乗っかって、多くの国民がリスクがほとんどない預貯金から、リスクの大きな株式や投資信託に資金を移動させ始めている。

私のアドバイスは「いますぐすべての投資から手を引いて、預貯金に戻し、二度と投資に手を出してはいけない」というものだ。

このアドバイスに対してすぐに出される反論は次のようなものだ。

「そんなことをして預貯金だけで資産を持っていたら、インフレでどんどん資産が目減りしていってしまうだろう」

どうしても目減りが嫌な人は、政府が発行している「物価連動債」という国債を買えばよい。

この国債は、物価上昇による目減りを政府が補填してくれることになっている。ただ、物価連動債を庶民が直接買うのは難しい。法律的には買えることになっているのだが、財務省が発行額を極端に抑え込んでいることと、金融機関が買い占めてしまうからだ。

それでも方法は1つだけある。それは物価連動債を組み込んだ投資信託を買うことだ。ただし、当然のことながら、投資信託を買えば、収益の一部を運用会社にピンハネされることになる。

私は、無理をして物価連動債を買う必要はないと考えている。

それは、バブルが崩壊に向かえば、世界経済は恐慌状態に陥り、深刻なデフレになる。そのことは預貯金の価値が大きく上昇することを意味するからだ。

いま世界は、人類史上最大のバブルに直面している。

そのバブルがはじければ、株価は10分の1になる。

2000万円が140万円に

さらに、購買力平価から予測される為替レートはいまより3割も円高だから、株価下落と円高のダブルパンチで、NISAでの運用資産は93%減になる勘定だ。

「購買力平価」という言葉になじみのない読者のために簡単に説明しておこう。為替レートは通貨の交換比率で本来、同じものが同じ価格で買える水準に決まる。

たとえば、アメリカで1ドルで売られているハンバーガーが、日本では100円だったとすると、1ドル=100円が購買力平価となる。ただし購買力平価は商品によって異なる。アメリカで1ドルで売られているキャンディーが、日本では80円だったとすると、1ドル=80円が購買力平価となる。

こうした商品ごとの購買力平価を平均したものが経済全体としての購買力平価となる。ちなみにIMF(国際通貨基金)が2024年の世界経済見通しのなかで明らかにしているドル・円の購買力平価は、1ドル=91円だ。

現実の為替レートが購買力平価と大きく乖離する原因は「投機」だ。為替市場で取引される通貨の99%以上は、貿易に使う実需ではなく、為替を対象とした投機だ。為替がギャンブルの素材として使われているのだ。

ギャンブルだから、ひとたび流れができると、みながそれに乗ろうとして乖離がどんどん進んでいく。それでも経済実態から離れ続けることはできないので、長くても数年から十数年の間には、為替は購買力平価に戻っていく。

だから、いま生じている過度な円安は、必ず購買力平価という本来の姿に修正されていく。それは、日本人の立場からすると、外貨投資は今後の円安修正によって大幅な減価に見舞われることを意味するのだ。

もし、そうなれば、老後のために営々と貯めてきた生活資金2000万円が、バブル崩壊と円高の到来によりわずか数年で140万円に減ってしまうことになる。老後のライフプランが根底から破壊されてしまうのだ。

だから、まず「お金を投資で増やそう」という考えを完全に捨てるべきだ。

預貯金を抱え続けるしかない

お金が自動的に増えることはない。そして、お金が増えるのは、働いたときと、他人から略奪したときだけだ。

略奪は、3パターンだ。

①幸運に恵まれてギャンブルに勝つ

②他人をだまして奪う

③胴元になる

つまり、お金を安定して増やそうと思えば、詐欺師になるか、金融業者になるしかないのだ。いまの日本で個人が金融業者となるのは極めて難しいし、詐欺師になるのは犯罪だ。

だから、庶民は、余計な誘惑にかられることなく、じっと預貯金を抱え続けるしかないのだ。

その意味で、私は長年の友人であり、数多くの仕事を一緒にやってきた経済ジャーナリストの荻原博子氏をいまあらためて尊敬の眼差しで見ている。

彼女は、この数十年間、「投資なんてしてはダメ。キャッシュよ」と言い続けてきた。私はそんな彼女を揶揄して、親愛の念を込め、「キャッシー荻原」と呼んできた。

1つ付け加えておくと、荻原氏は「投資のリスクを取ってはいけない」と言いながら、自分では一部の資金を株式投資に回している。それはあくまでも射幸性を楽しむための純粋なギャンブルとしてやっていることで、資産を増やす運用としてやっているわけではない。

そうした〝二刀流〟は、荻原氏の高度な専門知識と強い意志が可能にしているもので、一般の人が真似をすることは絶対にお勧めしない。

ちょっとでも投資を残していると、そこからまた「投資依存症」が広がってしまうからだ。

たとえば、アルコール依存症から脱却するためには、アルコールを完全に断つことが必要で、少しでも飲酒の習慣を残していると、そこからまた依存症が拡大してしまうのだ。

写真/shutterstock

投資依存症 こうしてあなたはババを引く

森永 卓郎
投資依存症 こうしてあなたはババを引く
2024/9/9
1,650円(税込)
208ページ
ISBN: 978-4866809403
「投資とギャンブルは違うものだ」と考えている人は多いだろう。
しかし、投資の本質はギャンブル以外の何ものでもない。
老後の生活資金を、NISAを使って投資信託で運用しようとしている人は、老後の生活資金を賭けて競馬や競輪をやっているのと同じだ。投資の世界も競馬や競輪と同じで、結局はゼロサムゲームとなる。お金が自動的に増えていくことはありえないからだ。
そのことを本書で解説しよう。

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