”自民過半数割れ”の立役者・上脇教授の告発「自民党は派閥だけでなく、全国で裏金作りをしているかもしれない」
集英社オンライン / 2024年11月7日 10時30分
先日の衆議院選挙では自民党の裏金問題の影響もあり、15年ぶりに与党(自民・公明)が過半数を割った。これは神戸学院大学の上脇博之教授が、市民オンブズマンとして「自民党の5派閥の政治資金パーティーの収入明細不記載」を告発したことがきっかけとなったと言っても過言ではない。その立役者である上脇教授に今回の選挙結果について、また次の参議院選挙の行方について聞いた。
【画像】上脇教授が「特捜部の捜査次第では今年中に処分される可能性も」と語る”裏金議員”
正月返上で150件以上を告発した男の思い
――上脇教授の告発が、捜査や派閥解消、法改正に結びつき、そして、今回の衆院選では15年ぶりに自民・公明両党で過半数を割る結果を生み出しました。告発がそんな大きなうねりになるなんて想像できましたか?
上脇博之(以下同) まず、説明しておきたいことがあります。今回の派閥の政治資金パーティーを巡る裏金問題は、共産党の「しんぶん赤旗」日曜版が最初にスクープしました。私が赤旗にコメントを求められたことから、追加調査を行ない、その告発に踏み切ったわけです。
調査をするなかで、ひょっとするかもしれないという思いはありましたが、ここまでの展開は想像できませんでしたね。
――もっと興奮しているのかと想像していたんですが、落ち着いてますね……。
これまで検察に対し150件超の告発をしてきていますが、そのほとんどが政治家一人ひとりの違法行為さったので、そこまで大きな問題として取り扱われることは多くはないですからね。
それに、日々、政治資金オンブズマンとして、粛々と政治資金収支報告書をチェックし、おかしな点を告発することで、政治家に法をないがしろにさせないことが主眼にあります。検察が起訴するとは限りませんから政局に与えた影響は、通常、私にとっては副次的ですね。
裏金問題は派閥だけじゃない
――今回の裏金問題は、なぜここまで大きな問題となったと思いますか?
今回の裏金問題は、これまでのように政治家一人ひとりではなく、自民党5大派閥の組織的な問題だったので、マスコミも関心を持たざるを得ず、ここまでの広がりを見せたのだと思います。
また、この問題が確定申告の時期と被ったこと、市民が物価高で大変な思いをしていることも関係していますし、自民党が非公認の候補にも公認候補と同額の2000万円を「活動費」として振り込んだことも、反自民への追い風になりました。
――今回の選挙で国民の生活がどう変わるのか、気になるところですが、来年7月にある参院選の行方も気になります。そのころには裏金問題は沈静化してしまうんじゃないかと……。
今回、衆院選で自民が負けたからといって、私は裏金問題が終わるとは思えないんですよ。
物価高で経済的に国民が大変なのは変わらないし、今回、裏金で落選した議員はいるけど、西村康稔議員、萩生田光一議員など、まだまだ起訴されていない議員はいっぱいいるわけです。
来年の参院選で、自民党が裏金議員を公認するのか、あるいは非公認でも活動費を振り込むのかがまた焦点になるでしょう。
私は今年の1月に「自由民主党東京都支部連合会」「東京都議会自由民主党」の都連関係2団体を東京地検に告発しました。20万円を超えるパーティー収入の一部につき収入明細が不記載になっていたからです。
「週刊新潮」が報じたところによると、現在、東京地検特捜部が捜査を開始し、すでに都連事務局幹部が任意聴取されているそうです。東京都だから裏金がつくられていればその金額は大きいはずです。
当時の都連の代表は萩生田光一議員で、特捜部が本気で捜査していたら、ひょっとすると今年中に処分が出るかもしれません。不正が明るみに出れば、裏金問題の第二幕の幕開けです。
全国で裏金作りをしている
――裏金問題、まだまだ尾を引きそうですね。東京都以外でも、自民党の県支部連合会(県連)の政治資金収支報告書に過少記載が見つかり、上脇教授は今年の10月に、政治資金規正法違反容疑での告発状を東京地検に提出してますね。
10月10日に(過少記載があった当時)石破茂衆院議員が代表を務める鳥取県連、小泉進次郎衆院議員が代表を務める神奈川県連を告発。さらに10月26日に森山裕衆院議員が代表を務める鹿児島県連と、丹羽秀樹衆院議員が代表を務める愛知県連を告発しました。
県連が各支部に交付金を出しているわけですが、その一部が収支報告書に不記載。受け取った支部は明らかにしているのに、なぜか出したほうは書いていないわけです。検察へは、その原資も記載されていないので、裏金が作られていることは間違いないと主張しました。
ひょっとすると、自民党は派閥だけでなく、全国で裏金作りをしているかもしれない。派閥と同じ手口が、全国の自民党の都道府県連で共有されている可能性はあります。検察は会計帳簿を押収するなどの厳正な捜査を行なってほしいと思います。
もしも、これが1つの県だけでなく全国のあちこちで行なわれていたとすれば、裏金問題の第三幕となるでしょう。
金で票を買う自民党
――裏金作りの背景にあるのは、なんでしょうか?
当選するために、金をばらまく実態があるのだと、私は見ています。河井夫妻選挙違反事件(参議院議員通常選挙での大規模な買収行為で逮捕)では、県議、市議を買収していました。
一般の有権者を買収すればすぐにバレてしまいますが、同じ自民党の県議、市議を買収して、彼らの後援会の票をまるごと獲得していました。政治資金規正法違反だけではなく公選法違反で未起訴され有罪となった堀井学・元議員は安倍派からの裏金を選挙区内の有権者に寄付していました。
――最後に声を大にして言いたいことはありますか?
裏金問題で、不記載が4000万円以下の大物政治家は検察に起訴されていません。不起訴理由は起訴猶予ではなく嫌疑不十分にとどまっています。
まるで事前に金額で線引きをして4000万円以上は捜査を尽くして政治家まで起訴するけど、4000万円以下だと捜査を尽くさず政治家は嫌疑不十分で不起訴にし事務方だけを起訴猶予にするという方針があったかのようです。こんなことがあってはなりません。検察は法を守らない大物政治家に対し、腰砕けにならないでほしいですね。
取材・文/集英社オンライン編集部
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