〈健康な生き方の科学〉自分自身を「やっていることや持っているもの」でしか評価できない人に知ってほしいこと
集英社オンライン / 2024年11月16日 11時0分
体が健康でこれといってストレスがなくても、人生に「何かが足りない」と感じる。それが「つながり」だ。誰かとのつながりもそうだが、「自分自身」といかにつながれるか、つまり自分を好きでいられるかも、人生にかかわる。シリーズ120万部『ゼロトレ』著者の石村友見さんが、「体」と「心」と「つながり」という3つの観点から健康と幸せを世界最先端の科学的データなどから解説した『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
DoingとHavingで自分を裁く
「自己受容感」という言葉がある。自己受容とは「ありのままの自己を受け入れること」と定義される。「ありのままの自己」には、自分の長所だけでなく、短所も含まれる。できることもできないことも、いいところもダメなところも、欠けているPIECEもすべて含めて「私」と認識して受け入れるのが自己受容だ。
自己肯定感の土台を作っているのが自己受容感で、その土台がぐらついていれば、自己肯定感が上がるはずがないのだ。
本来、自己肯定感も「ありのままの自分」を好意的に受け止める感覚を指すが、一般社会においてはそのニュアンスが少し違った形で捉えられている。自分が「何者になれたのか」によって自己肯定感は上下すると思われているのだ。これは社会の要請(さらに言うとプレッシャー)によるところが大きい。
社会において、人間は次の2つによって評価される。
1 Doing 行動や行為
(例)
「仕事をがんばる」
「スポーツの練習をする」
「熱心に勉強する」
「人に迷惑をかけない」
「いい子でいる」
2 Having 持っているもの
(例)
「仕事の実績や成果」
「大金を手に入れる」
「大きな家に住む」
「有名大学に合格」
「歌手デビュー」
自分を嫌いになる理由
1のDoingの結果、2のHavingを手にすることも多い。社会や世間というものは、人を評価するときに1と2を見る。
あの人は仕事をがんばって会社の社長をやっているとか、あの子は毎日勉強をして有名大学に受かったとか。こうして、「できる人」と「持っている人」が評価されるのが社会のシステムだ。企業、学校、多くのコミュニティがこのような目で人を見る。
問題は、私も「私」のことをそう見ていることだ。
自己嫌悪に陥る理由はとてもシンプルだ。自分のDoingとHavingを評価し、裁くことで自分を嫌いになるのだ。
まず、Doing。仕事をがんばれなかったり、つい食べすぎてしまったり、何かを始めても続かなかったり。そのたびに自分のDoingが嫌になり、自分はダメな人間だとレッテルをはる。
次に、Having。仕事で昇進できなかったり、お金が増えなかったり、住みたい家に住めなかったり。そのたびに自分のHavingを嘆き、持ちたいものを持てない自分を低く評価する。
どちらか一方が欠けていることでも、自分を裁いてしまうことがある。Doingに関してはがんばっているつもりでもそれに見合ったHavingがなければ「人生は不公平」だと感じるし、逆に、大してDoingに自信がないときにHavingを得てしまうと「私には不釣り合いだ」と感じてしまう。
DoingとHavingを追い続けると、人生がジェットコースターのようになるだけで、いつまでも自己受容感は満たされない。
これでは、自分の存在を無視しているのと同じこと。私たちは、自分の存在をもっと気遣うべきなのだ。
DoingとHavingを追い求めてばかりいると、理想と現実のギャップは広がる一方で、心が満たされることがない。生まれたギャップに対して自分を「評価し→責め→裁く」を繰り返すようになる。
生まれながらにある「Being」
現実の私を、理想の私が評価するこの「私同士」のつながりはつねに緊張関係になり、どんどん疲弊していく。自分を褒められるのは努力をしたときや成果を出したときだけになり、それ以外は無視をしてしまう。これでは、この先もずっと自分を許すことができない。
「私」を好きでいられるためには、自分自身とのつながり方を変える必要がある。そのときに大切なのが、DoingでもHavingでもない第3の視点「Being」だ。Beingとは、「存在そのもの」のこと。
1 Doing 行動や行為
2 Having 持っているもの
3 Being 存在そのもの
何をしていようが(Doing)、何を持っていようが(Having)、自分が存在していることそのものがBeingだ。良いところも、悪いところも、すべて含めた「ありのまま」の姿こそがBeingで、自己受容とはそんなありのままの自分を受け入れることなのだ。
大抵の親は、子供のBeingを受け入れ、愛しく思っているはずだ。子供の成績が悪かろうと、学校で問題を起こそうと、犯罪を犯してしまったときでさえ、その子を見捨てたりはしない。
これはその子の存在そのものであるBeingが愛しいからだ。
もしも親が子供のDoingやHavingばかり見て否定し続けたなら、子供はその親からやがて離れていくだろう。
子供の安心感は、自分の存在そのものを親が受け入れてくれることで生まれる。「何をしたか、何を持っているか」で褒められたり、叱られたりするのではなく、どんなときも親が自分の「味方」であると感じたときに心から安心し、自己受容感が高まるものだ。
写真/shutterstock
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