加工食品ばかり食べる人は要注意…赤身肉が大好物な人に知ってほしい理想的な食事の鉄則
集英社オンライン / 2024年11月16日 11時0分
「ウェルネス(Wellness)」という概念をご存じだろうか。ヘルス(Health)が主に体の健康を意味するのに対して、体の健康だけではなく精神的にも健康で人生に前向きな状態がウェルネス。このウェルネスのために欠かせない要素の一つが食事。何をどう食べればいいのか。シリーズ120万部『ゼロトレ』著者の石村友見さんが、「体」と「心」と「つながり」という3つの観点から健康と幸せを世界最先端の科学的データなどから解説した『Life is Wellness 「健康な生き方」の科学』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。
〈写真〉日本人にお馴染みで驚くほど健康的なタンパク質摂取源といえば
「制限する」から「摂り入れる」へ
「健康のためにダイエットしなくちゃ」とよく耳にする。この場合のダイエットには「制限」というニュアンスが込められている。特に食べ物については「食べたいものを我慢する」ことで肥満から脱出しようとするのが一般的だ。
しかし、ダイエットの本来の意味は異なる。この言葉の起源はギリシャ語の「diaita」。これは英語で、
Way of Life
「生き方」という意味だ。食べ方であり、生活習慣であり、自分の養い方でもある。ところが、現代のダイエットの概念は禁止、フラストレーション、苦痛、飢餓、体重減、おいしくないご飯などのネガティブな意味合いが強い。そして何より「制限」を想起させる。
これでは「なりたくない。やりたくない」のアンウェルカム・ループからの脱却はできない。では、どうすれば「なりたい。やりたい」のウェルカム・ループを作ることができるのか。
そのためには「制限する」というマイナス方向ではなく、「摂り入れる」というプラス方向に向かうことだ。何を摂り入れるかというと、「栄養」だ。
ジャーナリストでカリフォルニア大学教授のマイケル・ポーランの『The Omnivore's Dilemma(雑食動物のジレンマ)』という著書は、ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー誌が選ぶ年間ベスト10冊に選ばれたこともある名著だ。マイケル・ポーランは、ウェルネスへの道として著書の中でこう書いている。
「加工度の低い植物」を
「Eat food, not too much, mostly plants.」
(食べ物を食べる。食べすぎない。主に植物を)
これが「人間が最大限に健康であるために何を食べるべきか」という信じられないほど複雑で混乱しがちな問題に対する答えだとしている。
この言葉を少し分解してみたい。
まず「食べ物を食べる」。何を当たり前のことを……と思われた読者もいると思うが、じつはとても重要な指摘なのだ。これは「加工された食品を食べるのではなく、新鮮な食べ物を食べなさい」という意味だ。
次に、「食べすぎない」。これもシンプルな言葉であるが、とても重要だ。私たちは、とにかく食べすぎている。というより、わざわざ「食べすぎる」ように行動していると言ってもいいだろう。
最後に「主に植物を」。おそらく、この言葉は私たちにとって最も重要であり、「何を食べるか」ということの答えでもある。
食べるのは「加工度の低い植物」。メインディッシュとして野菜、果物、豆類、全粒穀物を食べる。全粒穀物とは精白していない穀物のことで、代表格は玄米。パンやシリアル、クッキーにも全粒穀物を使った食品はたくさんある。
新鮮な野菜は、大量のビタミンと数種類のタンパク質を含み、脂肪はほとんど含まない。ブロッコリー一房ならタンパク質が5グラムで脂肪はほとんどない。
果物は炭水化物、ビタミン、ミネラルが豊富で、脂肪をほとんど含まない。バナナ1本は103カロリーで脂肪はほとんどない。
ポイントは「加工度の低い植物」であること。食物というと「カロリーはいくつか」ということに関心が向きがちだが、木から摘み取ったリンゴと、加工したリンゴジュースのカロリーはさほど変わらないが、後者は多くの栄養素や繊維が取り除かれている場合がある。これでは、栄養素が少なく、カロリーだけを摂っていることになる。
皿をレインボーにする
ウェルネスになるためには、採れたばかりの「ホールフード(whole food=加工が最小限で栄養価が高く、自然の状態に近い食品)」を食べることが重要だ。
地中海食は、多くの臨床研究において、体重を減らし、コレステロール値を下げ、心臓病のリスクを減らすことが示されている。
「地中海式ダイエット」は、Whole food plant-based diet (WFPB)とも呼ばれるホールフード・プラントベースの食事であり、新鮮で加工されていない植物性食品をメインに食べる科学的根拠に基づいたダイエット法。「制限する」のではなく、栄養を「摂り入れる」という考え方だ。
色とりどりの野菜や果物、全粒穀物、ナッツ類、豆類、オリーブオイルなどの不飽和脂肪酸を毎日しっかり食べる。
ハーブやスパイスを塩の代わりに使う。
魚介類は週に2、3回食べる。私が「Health and Wellness」講義を受けていたハーバード大学の研究では、毎週2、3皿の魚を食べるだけで、心臓発作で死亡するリスクを3分の1以上減らすことがわかっている。
これらの食材こそがウェルネスへの道だ。
毎日、食卓に並ぶ皿の色にも気をつけるといいだろう。と言っても、皿そのものの色ではなく、皿に盛った「食材の色」のことだ。色とりどりの野菜や果物を中心とした「虹色の食事」がウェルネスのサポートをする。これはアメリカの栄養学の研究者、ディアナ・ミニッチ博士が提唱している食事法だ。
食材の色は、その食べ物にとって優勢な栄養素を表している。虹色になればなるほど必要なミネラル、ビタミンが摂取できる。
逆に、皿の色がベージュであればあるほど、加工品、小麦、砂糖、脂肪食品、油、加工度の高い食材を選んでいることになる。
栄養素を計算して買い物をするのは難しいが、買い物カゴの中身が七色になることを意識するとシンプルで、楽しくて、ビタミンカラーによって心も元気になる。
加工度の低い、新鮮な野菜や果物を積極的に食べ、塩をハーブやスパイスに変え、魚を週に2、3回食べる。皿の上はレインボーになるように心がける。
完全無欠のタンパク質「大豆」
私は菜食主義者になることを推奨しているわけではない。菜食主義者にも健康な人と不健康な人がいる。菜食主義者であっても超加工食品を日に3回も4回も食べている人もいる。
ここであなたにはこんな疑問が湧いたかもしれない。
「肉は食べてはいけないの?」
私が提案したいのは、肉をメインディッシュにするのではなく「サイドディッシュ」にすることだ。肉類はどうしても悪い脂肪を含むことが多いし、カロリーが高いし、環境への悪影響もある。かといって、肉が大好物の人にとって「肉断ち」は極めて酷だろう。
一般的なレストランに行くと、肉の量は最低100グラム、場合によっては200グラムや300グラム出てくることもある。これは明らかに食べすぎだ。
そこで、週に1回や2回程度、85グラム以下の肉をサイドディッシュ感覚で食べるのがオススメだ。
飽和脂肪酸が多い赤身の肉(牛肉、豚肉、羊肉など)は血中コレステロールを上昇させてしまうため「皮なしの鶏肉」がベスト。ハムやベーコン、ソーセージなどの加工されている肉はできるだけ避けたほうがいい。
そして、ジャンクフードなどの超加工食品を排除する。
これが、多くの医師たちが推奨している地中海式の食事パターンだ。
ここで最高の食材をひとつご紹介しておく。大豆だ。
大豆は単位重量当たりの比較で、牛肉、鶏肉、魚介類より多くのタンパク質を含み、コレステロールはない。
しかも、「完全無欠」の植物性タンパク質である。
人はタンパク質を分解してできる20種類の基本アミノ酸を必要とする。そのうち11種類は体内で作ることができるが、残りの9種類は食物から摂らなくてはならない。「動物性タンパク質が必要」とする主張はこれを叶えるためだが、大豆のタンパク質はこの9種類のアミノ酸すべてを供給できる点で、肉類と同じだ。
しかも、肉類と違ってカロリーも、環境への悪影響も少ない。
日本人にお馴染みの「枝豆」は、鮨屋や小料理屋で出てくる無料のつまみくらいの認識かもしれないが、あれは茹でた大豆だ。枝豆は、育ちきる直前に摘み取った大豆の別名であり、驚くほど健康的で、魚よりもタンパク質やその他の栄養素が豊富。枝豆1カップで、なんと約20グラムのタンパク質が含まれている。
写真/shutterstock
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