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居酒屋チェーン「酔っ手羽」の闇営業パロポスターをカラテカ入江が提訴「自分の会社を守るため闘いました」店側は和解金90万円を支払い

集英社オンライン / 2024年11月12日 10時30分

2019年に発覚したいわゆる“闇営業騒動”で吉本興業から契約を解消された元芸人・入江慎也さんが、自身の顔や著書の写真を勝手に使ったパロディポスターを店内に掲示していた飲食店チェーン経営会社を訴えた。名誉棄損で損害賠償を求めた訴訟は今月、会社側が入江さんに謝罪し90万円を支払うことで和解が成立。蔓延しているとみられる、著名人の顔や名前を勝手に使った客集めに歯止めをかける一歩になるだろうか。

〈画像〉店舗に堂々と4年間貼られていた闇営業パロディポスター

騒動直後から4年越しの抗議

訴えられた会社は都内を中心に30店舗以上を展開する「株式会社プロジェクトM」。問題のポスターは同社の「居酒屋革命 酔っ手羽 恵比寿店」に貼られていた。

「闇営業承ります‼」という文字の下、「㊙」印をバックに、自著『入江式 のしあがる力(ちから。)』を手にした入江さんの写真が配置されている。

よくよく見れば、書名を『のしあがる闇営業の力』と変えられたうえ、入江さんの顔には犯罪者風に目を隠す黒いラインが入っている。

「アーイエーイ、オーイエーイ、オレイリエ」という芸人時代のギャグをもじった「あーイエ、おーイエ、酔っ手羽イェイ」の文字もある。

ポスター下部には「酔っ手羽では20名様以上のご予約で闇営業(時間外営業)承ります。会社には内緒でやりますので言わないで下さい。ギャラ(飲み代)はもちろん頂きます。」との文句。

営業時間外にも宴会のために店を営業することを「闇営業」と呼び、入江さんをその言葉の象徴として登場させたものだ。無論、入江さん側は写真の使用許可申請はいっさい受けていない。

入江さんは2019年6月に吉本興業を契約解除された直後からこのポスターの存在を知っていたが、最近まで対処できなかったという。なぜか。

「後輩と友達から『こんなひどいの貼ってますよ』ってLINEがきたんです。2019年の8月か9月、僕が契約解除になってすぐくらいですかね。訴えたほうがいいってそのとき言われたんですけど、僕も騒動の真っただ中で怖くて動けないと思ったんです」(入江さん)

吉本興業を契約解除された後、再起を図るため清掃業のアルバイトを始めていた入江さんは、騒動が大きくなり迷惑をかけた仲間の芸人にも影響が及ぶのではと恐れ、一度は泣き寝入りの道を選んだのだ。

そのため、このポスターは貼られ続けたが、その後、入江さんの環境は変わり、気持ちにも変化が生まれた。コロナ禍を経て入江さんは清掃会社「ピカピカ」を起業。事業は少しずつ拡大し、今では14人の従業員を抱えるまでになった。

そして、昨年「まだ貼ってるよ。これひどいよね」「風評被害もあるから剥がしてもらったほうがいいよ」と友人がLINEで知らせてくれたことを機に、入江さんは決意する。

「(自分が)闇営業、直営業でルール、秩序を破ったってことはそうなんですけど、でも警察沙汰にはなっていないんです。なのに、目に黒い線が入ったポスターで犯罪者みたいにされて。

闇営業っていう(目で見られる)のを僕は払拭したくて清掃の仕事に励んでいたとこもあるんです。(ピカピカを)立ち上げたときは1人ですけど、いま社員が14名ぐらいいる。あのポスターを見た親が、自分の子をピカピカに入社させるかっていったら、させないと思うんですよ、絶対に。

お客さんも頼まないですよね、あんなポスターにされてる社長の会社なんて。だから、やっぱさすがに『これは言わなきゃな』とは思いましたね。言えることは言っていかないと。自分の会社を守るのは自分しかいないので」(入江さん)

店側は「単なる雰囲気作り」と反論

事業への実害が生まれるとみた入江さんは弁護士に相談。ポスターの撤去などを求める内容証明をプロジェクトM社に送った。しかし同社は入江さん側に返答をしなかったという。

このため、入江さんは今年3月、東京地裁に損害賠償請求訴訟を起こすことになった。

入江さん側の加藤博太郎弁護士によれば、訴訟で入江さんは、①著名人の入江さんが持つ顧客を集める力から生じる経済的な利益・価値を排他的に利用するパブリシティ権の侵害、②入江さんから「闇営業」という言葉を想起させて社会的評価を低下させた名誉棄損、③本人に無断で入江さんの写真を使ったポスターを不特定多数の者が見られる場所で掲示したことによる肖像権の侵害――の3点を主張した。

さらに同社はホームページに「酔っ手羽の店内ポスターが頭可笑しい理由」「ちょっと行き過ぎた事や他のお店ではない酔っ手羽だけの面白さを提供しお客様に笑って楽しんでもらおうとの想いです。」と記載していた。

訴状ではこれを挙げ「(ポスターの)目的は原告(入江さん)を笑いものにするためのものであるから、非常に悪質である。原告が受けた精神的損害は計り知れるものではない」と主張した。

関係者によるとプロジェクトM社は訴えに対し「(ポスターは)単なる雰囲気作りのための装飾的使用である」からパブリシティ権侵害には当たらないと反論。

闇営業問題も周知の事実だとして「原告と闇営業を結びつけたとしても、原告の社会的評価それ自体は低下するものではない」と主張した。

一方で「(ポスターは)お客さまの目に入ったときにクスッと笑ってくれたらいいな、という単純な発想であった。ただ、原告に不快な思いをさせてしまったことについては真摯に反省し、お詫び申し上げたい。」と表明。

無断で入江さんの写真を使ったことは肖像権侵害に当たると認め、裁判初期から慰謝料として「20万円」を支払う意向を示していた。

「どうしても納得いかないことは動いたほうがいい」

だが地裁は90万円の支払いを柱とする和解案を原告被告双方に示し、プロジェクトM社がいう20万円では不十分と判断したもようだ。加藤弁護士が解説する。

「誹謗中傷に対する損害賠償の認定は基本的に20万円、30万円というのが相場で、精神的損害は安くみられる場合が多いです。弁護士費用もかかるので多くの人が泣き寝入りをしてきました。有名人だから誹謗中傷を何でも甘受しなきゃいけないのか。そう考え、しっかり対応していきたいという思いがありました。

今回裁判所は(被害の補償には)90万、100万くらいの額が認められるのではないかという見解を持っていたようで、それを踏まえ(裁判所が提示した和解条項で)額がガンと上がってきました。

90万円という金額は、飲食店には大きい負担だと思いますが、今回の和解は、芸能人の方々が泣き寝入りしなければこうなるという、しっかりした牽制になったのではないかと思います」

和解成立後、プロジェクトM社に見解を求めると、担当者は「いかにお店を盛り上げるかということで、浅はかな認識の中で進めてしまったことが大きな原因です。ご迷惑をかけた以上、真摯な対応を取るべきだと考えました深く反省しており、今後こういったことがないようにしていかなければならないと考えています」と話した。

一度はあきらめかけた入江さんが振り返る。

「一番弱ってるときにやられてたんで、それが悔しかったっすよね。(ピカピカは)やっぱ、もう一度世間の方に認めてもらうためにはがんばるしかないと思ったんです。その目標を邪魔されたくないなと思ったんで裁判で争うことを決意しました。会社を守るうえではよかったな、と思います。

僕は、納得いかないことに対して我慢することも大切だと思ってて……。でも、どうしても納得いかないことは闘ったり動いたりしたほうがいいんじゃないかなと思いますね」

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班

カラテカ入江「人の名前や顔を勝手に使っていいわけない」“闇営業”パロディポスターで訴訟に踏み切ったワケ〉へ続く

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