〈親子3代で売春あっせん〉「遊んでいかはります?」大阪の歓楽街・松島新地で経営者らを逮捕…万博を控えての浄化作戦で風前の灯か
集英社オンライン / 2024年11月10日 17時0分
11月5日、大阪府警は大阪市西区の歓楽街「松島新地」の飲食店経営・奥田千城容疑者(31)を売春防止法違反(場所提供業)の疑いで再逮捕した。在阪メディアの報道によると、奥田容疑者はホストクラブの経営に携わっており、ホストクラブでの売掛の支払いが困難となった女性客に売春させる手法で荒稼ぎしていたという。一方、「新地」の関係者からは、万博開幕を目前に控え「さらなる摘発が続くのではないか」と不安の声が上がっている。
〈画像〉昼と夜ではまったく異なる表情を見せる大阪の歓楽街・松島新地
今も続く醜悪な“エコシステム”
大阪市西区の歓楽街「松島新地」を騒然とした空気が包んだのは今年10月14日のこと。この日の深夜、大阪府警の捜査員が新地の一角にある料亭5店舗に一斉に踏み込んだ。
この捕り物の翌日、府警は奥田千城容疑者(31)ら男女4人を売春防止法違反(周旋)の疑いで逮捕したことを発表した。在阪メディアの報道によると、逮捕された奥田容疑者は大阪・ミナミのホストクラブの経営に携わっていた。
さらに府警は11月5日、奥田千城容疑者を売春防止法違反(場所提供業)の疑いで再逮捕している。
「わっしょいわっしょいわっしょい」
ホストクラブが運営するSNSアカウントに投稿された動画には、ペンライトを手にしたホストたちによる「オールコール」が響き渡る店内の様子が映し出されていた。
華やかなルックスのホストたちが、女性らを誘うような視線を投げかけている。
奥田容疑者は、この「男の園」に誘い込んだ女性たちを搾取するための実に醜悪なエコシステムを作り上げていたとみられている。
「奥田容疑者の『家業』は、松島新地の料亭でした。料亭といっても、実態は売春小屋。
奥田容疑者は、自身のホストクラブに来た女性客に、ホストへの『売掛』と呼ばれる借金を背負わせ、『借金返済のため』と言いふくめ新地に送り込んでいた。そこで男性客の相手をさせて対価を得ていたのです。
奥田容疑者は祖母と母とともにこうした料亭を5店舗運営していました。いわば親子3代で売春斡旋を生業にしていた格好です」(在阪の全国紙社会部記者)
ホストクラブでの「売掛」をめぐり、客の女性が売春や売春類似行為を強要される被害は全国で相次いでおり、社会問題化している。今回の逮捕劇の背景にも、そうした社会情勢があるとみられるが、そもそも松島新地とはどんなところなのか。
「昭和レトロな長屋風の建物が軒を連ねる街は、かつては遊郭として賑わい、1956年の売春防止法制定までは『赤線(売春公認)地域』とされてきました。
その後は、警察当局の摘発を免れるために、多くの店が料亭として営業許可を取得しています。
料亭で『給仕』として働く女性が客と恋愛関係になり、本番行為に及ぶ。表向きは、『給仕と客との自由恋愛に店は関知しない』ということになっていますが、実際は売春行為を正当化するための方便にすぎません」(地元関係者)
「ちょっと、お兄ちゃん」やり手婆が客をつかまえて…
料亭が立ち並ぶ通りを歩いてみれば、「ちょっと、お兄ちゃん」と間髪をいれずに声が上がる。
「やり手婆」と呼ばれる客引き役の女性が客をつかまえ、大きく開け放たれた玄関先から女性が笑いかけてくる。
その多くが、ナース風の衣装やランジェリー、なまめかしいドレスなど、客の欲情を煽るような衣装に身を包んでいる。
「大阪にはこのほかに、全国的にその名が知られる『飛田新地』があります。通天閣に近い大阪市西成区にあり、約160店が軒を連ねる日本最大の売春小屋エリアで、約90店舗の料亭が営業する松島新地はその飛田新地に次ぐ規模とされています」(前出の地元関係者)
最寄り駅は、大阪市西区の市営地下鉄中央線、阪神なんば線の九条駅。降り立ってすぐの「ナインモール九条」という商店街をしばらく歩くと、通りの両端にアーチ風に立つ街灯に二つ並んで設置された「松島料理組合」の看板が目印になっている。
「遊んでいかはります?」。軒先でのやりとりで“商談”が済むと、玄関で靴を脱ぎ、狭い階段を上って2階に。ふすまを開けると、簡素な布団が一組敷かれ、部屋の端に置かれたちゃぶ台に料金表が掲げられている。
「料金は20分で1万1000円。そこから10分ごとに5000円が加算されていくシステムで、30分1万6000円のコースが一般的ですね。在籍する女性の年齢層は比較的高めですが、4年ほど前に兵庫県尼崎市の花街『かんなみ新地』が一斉摘発されて壊滅してからは、そこにいた女の子が流れてきたこともあり、一気に若返った印象です」(前出の地元関係者)
かんなみ新地の最寄り駅である阪神尼崎駅と、松島新地がある九条駅は、阪神なんば線の快速急行に乗ってわずか9分。かんなみ新地で働く女性らが、同じ業態の店が集まる松島新地に流れ込むのは自然な流れだったという。
万博を控え、街全体に広がる不安
ただ、松島新地は世間を騒がせた「捕り物」の舞台になってしまったほかにも、ここ最近は受難が続いている。2021年12月には店舗2棟が燃える火事が起き、木造家屋が密集する地域が抱える防災上のリスクを指摘する声が上がった。
さらに、懸念されているのは、来年に開幕が迫った55年ぶりの大阪での日本国際博覧会(大阪・関西万博)が及ぼす影響だ。
前出の地元関係者は「国際的なイベントがあると真っ先にやり玉に挙げられるのが風俗街です」とため息をついて続ける。
「東京五輪のときは全国有数のソープ街である吉原でも存続を危ぶむ声が上がりましたが、大阪では実際に1990年の『花の万博』を前にした浄化作戦で、大阪・ミナミのソープランド街が一掃された過去があるだけに、いつ行政が整理に乗り出してくるのかと不安は尽きません。今回の騒動もあっただけに街全体に危機感が広がっているのが現状です」
昭和、平成、令和と「花街」の歴史を刻んできた松島新地。儚く揺れる街の灯はこのまま消える運命なのか。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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