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〈またトラ〉勝利演説の壇上に「アジア系ゼロ」でどうなる日米関係? トランプー石破「5分の電話会談」の内容

集英社オンライン / 2024年11月11日 17時0分

〈米大統領選現地ルポ〉「アメリカを再び偉大に!」聴衆は熱狂、ハリス支持者は涙…イーロン・マスク処遇は?〉から続く

トランプ氏の勝利であっけなく幕を閉じたアメリカ大統領選挙。ハリス氏はなぜ敗けたのだろうか? そして、トランプ氏を応援していたイーロン・マスク氏は本当に閣僚になるのか? 選挙当日のニューヨークでの報道や、街の声を現地からお届けする。

【写真】ニューヨークで遭遇したスタンダップ・コメディアンの村本大輔さん

女性支持者たちの涙

最初に、今回のトランプ勝利について、民主党と会派を組む重鎮バーニー・サンダース上院議員が6日付で出した声明を紹介しておこう。

彼は激しい言葉を連ねて民主党を批判している。

「労働者階級の人々を見捨てた民主党が当の労働者階級から見捨てられても、大して驚くには当たらないはずだ」

「民主党指導部が現状維持を是認する一方で、米国民は怒りを募らせ、変化を望んでいる」「彼らは正しい」

サンダース議員にここまで言わせた米・民主党の現状は危ういだろう。

2024年11月6日は自分にとっても忘れられない一日となった。この日にニューヨークで、アメリカが「暗転した」日を目撃できたことはよかった。と言っても、街に出ると通常のまま人々の日常生活は続いていたのだが。

テレビを観ていたら選挙から一夜明け、トランプが当選したことを受けてニューヨーク市民の街頭インタビューを流していた。

ある市民がこう言っていた。「ハッピーではない、予想はしていたけど」。

午後4時からカマラ・ハリスが「敗北演説」(concession speech)を母校ハワード大学で行なった。

同日深夜(午前2時すぎ)のトランプ「勝利演説」(フロリダ州ウエストパームビーチ)とは何から何まで全く対照的だった。ハリスの演説会場には多くの若者たちが詰めかけていた。彼ら彼女らの服装はフロリダの豪華な衣装とは違って普段着の人がほとんどだ。ハリスは笑みを浮かべつつ目には涙が滲んでいた。

その内容は多分に情緒的なものだった。

「今は、皆さん、いろいろな感情をお持ちのことだと思います。私も同じです」

「これは、アメリカの民主主義の根本原則ですが、選挙で負けた時はそれを受け入れなければなりなせん」

「絶望しないで。今はあきらめる時ではなく、腕まくりをして取り組むべき時です」

「いま聞いてくださっている若い皆さん、悲しんでも失望してもいい。物事はきっと良くなる、そのことを忘れずにいてください」

「闘いには時間がかかることもあります。でもそれは、勝てないということではありません。大切なのは、決してあきらめないこと」

「アメリカが約束されている光は、いつだって明るく燃え上がるんです、私たちが決してあきらめず、私たちが闘い続けている限りは」

「あなたたちには力があります。力があるのだから、前例がないから不可能だなんて言われても、耳を貸してはいけません」

最後の<あなたたちには力がある>とのくだりを聞きながら、僕はパティ・スミスの『People Have the Power』という歌を思い出していた。レノン&ヨーコの『Power to the People』を引き継ぐ曲だ。多くの女性支持者たちは涙を流していた。

民主党が軽視したイスラム票

アメリカのテレビメディアも、開票日には日本と同様に「開票速報」番組を長時間組んでいて、正確性、速報性を競うのが習わしとなっている。

5日の夜はCBSの特番を見続けていたが、出口調査なるものをこちらでも実施しており、ミシガン州やペンシルベニア州といった激戦州の出口調査で、カマラ・ハリスがトランプをリードしていると報じていた。

その時まではまだ大接戦モードだった(結果的に外れていた)。そのこともあって僕は一瞬、アメリカという国も、いくら何でもトランプを再び勝たせることに逡巡している動きが出てきたのかと一喜一憂していた。

ところが、である。なかなか途中経過が出てこない。そうしたなかでNYタイムズが「トランプ陣営が93%の確率で勝利する」との見通しをオンラインで速報してきたのが日付が変わって6日の午前1時39分。

僕はそれまで疲れから一瞬眠りにおちてしまっていた。はっと気づいてテレビを観ると、何とちょうどトランプが滞在先のフロリダ州ウエストパームビーチで支持者らを前に「勝利演説」を始めたのだった。それが午前2時20分頃。

すべての激戦州をトランプが制すことが確実になり、過半数270人の選挙人を確保できる見通しがついたことからの「勝利宣言」だった。

トランプ・ファミリーを真ん中に、横一列で壇上にあがった面々の(40人ほど)光景が忘れられない。そこには黒人やアジア人はひとりもいなかった。

ある意味、このシーンこそ、とても象徴的な光景だった。勝った彼らはどのような人たちなのかを最も端的に示していた。朝5時半までには、ほとんどのメディアがトランプ勝利を報じた。ああ、終わったな。何だか体からチカラが抜けるような感覚になって再び眠りにおちてしまった。

朝8時からの「DemocracyNOW!」をみる。トランプ当選を受けて結果の分析をゲストと共に行なっていた。「アメリカの暗黒の一日だ」「南部連合(confederacy)の勝利だ」など、トランプに対して批判的な学者ら(ラルフ・ネーダーもいた)の解説が続いた。

注目したのは、ミシガン州ディアボーン在住の活動家でパレスチナ系アメリカ人リンダ・サースー氏の見方を紹介していた点だ。今回の選挙で、カマラ・ハリスの民主党は文字通り、イスラム票の動向を全く無視した、と。自陣営に取り込もうとさえしなかった、と。

トランプのほうが活発にイスラム社会に接触をしてきたとリンダ・サースー氏は続ける。その結果、ディアボーンでは、投票のかなりの部分(18%)が第3の候補であるみどりの党のジル・スタイン候補に流れた。

自分が23年間、関わってきた選挙運動のなかで今回が最低のものだったと激しく批判していた。こんな独立系の番組がまだあることが救いだ。

生々しすぎて笑いにするのが難しかった

6日夜はその後、いろいろなご縁が巡り巡って、NY在住のスタンダップ・コメディアンの村本大輔さんらと会うことになった。ニューヨークのスタンダップコメディのライブを一緒に観に行こうというのだ。

Fat Black Pussycatという聞くだけでヤバいライブ劇場。何と大胆なお誘いか。僕の能力では本場の速射砲のようなコメディにはとてもついていけない。何とジャズクラブのブルーノートの真正面にある。

そして、なぜか映画監督のNさんまでいるではないか! コメディの内容がうまく理解ができず、正直拷問に近い状態だったが、それでも経験したほうがいいのだ。暗黒の選挙結果の翌日だというのに、トランプネタはほとんど封じられていた。

バーでコメディアンの仕切り格のMax Fineさんと偶然に会えたが、なぜトランプネタをやらなかったのかと聞いてみたら、「生々しすぎて笑いにするのが難しかった。それに今夜に限って言えば、会場のお客の中にトランプ支持者がいないとも限らず、安全上の理由から、自然にみんな控えたんじゃないだろうか」とのこと。

彼自身は選挙結果に「本当に心が折れるような気持ちだ」と話していた。笑いを楽しめるような夜ではなかったということだろう。

基地の駐留経費を日本からもっとふんだくれ

さて、トランプと日本はこれからどう付き合っていくのかだが、僕にはわからない。おそらく政治も経済も外交も大混乱に陥るだろう。トランプという人は予測不能な人物だ。

私たち日本は、混乱の中で右往左往するしかないのか。アメリカのトランプと心中するしかないのか。

そうではないだろう。アメリカの動向に受け身でどうするかを考えるよりも、自分たちがどうしたいかを自立的に(従属的にではなく)見解を持つことが先決ではないのか。しかし、そういうことを日本の政治家や外交官たちがやるのは実に稀だ。

その点で日本人である筆者が考えている希望は、<対米従属から対米自立へ>の一歩がわずかであっても踏み出せるか、だ。ところが石破首相から伝わってくるのは、これまでと同様の受け身の姿勢だ。今回の選挙結果についてニューヨークタイムズ紙は、7日付の社説で「アメリカは危険な選択をした」とはっきり述べている。

具体例をたったひとつだけ挙げておけば、沖縄の在日米軍基地の駐留経費の負担増については、トランプ政権の基本方針は、基地の駐留経費を「日本からもっとふんだくれ」だ。

トランプ・石破の電話会談が行なわれたそうだ。「日米同盟をより高い次元、段階に引き上げていくことで一致」とかが官邸の発表文らしいが、本当にそういう話ができたのだろうか。

電話をしたのが日本時間の7日午前9時半ということは、アメリカ東部時間の6日午後7時半。トランプ周辺は祝勝気分で盛り上がっている最中だろう。5分程度の会話というが、通訳を入れてだと半分以下の時間になる。

双方の挨拶から入るので実質2分あったかどうか。そのなかで、日米同盟のより高い次元への引き上げ云々などという実質的な言葉が交わせたのかどうか怪しい。

そんなトップ交流より、日米両国の市民レベルの交流(核兵器廃絶運動や文化交流の積極推進)がより盛んになる方が、実質的な日米関係の「高い次元への引き上げ」につながるのではないか。

7日の朝、『DemocracyNOW!』のエイミー・グッドマンに会うことができた。彼女は落ち込んでいるどころか、トランプ時代の再到来で自分たちの役割がいよいよ増してきたことを覚悟しているようにみえた。

日本のメディアはどうなのだろう。

取材・文/金平茂紀

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