「若い頃はウソばっかついてた」 仕事の相談をしなかった佐久間宣行が、“おじさん”になって相談を受けまくるようになったワケ
集英社オンライン / 2024年11月20日 11時0分
テレビプロデューサーだけでなく、ラジオパーソナリティやYouTuberとしても広く活躍する佐久間宣行の新刊『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』(ダイヤモンド社)が話題となっている。仕事や家庭で生じるさまざまな悩みを、佐久間が簡潔かつ明快に答える1冊だ。
【画像】前著『ずるい仕事術』が20万部のベストセラーとなり、日本全国の会社に講演で呼ばれるように
前編は、佐久間がこの本にかけた想いや「人生相談との関係」、さらには「上手な相談の仕方」について聞いた。(前後編の前編)
全国の会社員の「今」の悩みが詰まった1冊
佐久間宣行(以下同) 本を書くようになって、「資産運用」をするなら今だなって思ったんですよ。
──え、それはまたどうして。
いや、『ずるい仕事術』を書いてから、日本全国の会社に講演で呼ばれたんです。本当にいろんな職種。地方銀行から広告企業、インフラ企業まで。それでさまざまな業界の内実を知って。まあ、自分では投資しないからわからないんですけど(笑)。
──(笑)。
それで、そういう講演の最後は質疑応答になる。そのとき、日本全国のありとあらゆる人の悩みを聞いて、今回の『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』を書こうと思ったんです。
──今回の本は、『ずるい仕事術』のヒットに続き2作目ですが、どういう部分がバージョンアップしているのでしょう?
『ずるい仕事術』は、20〜30代で会社と折り合いを付けつつ、やりたい仕事をやるための方法を、自分の経験をもとに書きました。
でも『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』は、昨今の日本経済やコンプライアンス意識の変遷など、現在の状況も踏まえているのが違うかな。全国の会社でいろんな人と話したことを活かしています。
──本書の特徴は、ひとつの悩みに対して上司と部下の両方の視点で答えられていることだと思います。でも、こういうフラットな視点を持つのはなかなか難しいですよね。
僕は他の人と比べて、若いディレクターや社員と交流を持っているのも関係あると思います。いろんな人となるべく等距離で仕事するように心掛けてきたので、いろんな人の気持ちがわかるんだと思います。
それと、僕は20代の後半ぐらいから番組を立ち上げていて、若いうちにリーダーだった時期が長い。それも、上司と部下の両方の視点を持てることにつながったのかと。
本当のことを言うから、相談されるようになった
──若い時期って、佐久間さんは人に相談するタイプだったんですか?
全然しなかったです。若い頃は上を全く信用してなかったし、本心知られたくなくてウソばっかついてた(笑)。
──でも、そんな佐久間さんが悩みを相談される側にはなったわけですよね。それってなにかきっかけがあったんですか。
きっと、会社にとっては耳が痛いような本当のことを、僕が平気で言っちゃうタイプだったからだと思う。
テレビ局にいた頃は「これからのことを考えたら、どう考えても地上波のゴールデン向けのディレクターだけじゃ一生は食えないよ」って言ってた。「配信でも食えるディレクターになったほうがいい」って。それで会社に嫌われた(笑)。
──正論を言いすぎた。
でも、そういう予言がたくさん当たってて、それで後輩にいまだに悩み相談される。
上手な「相談の受け方」とは
──どれぐらいの頻度で相談を受けてるんですか?
すごい量だと思いますよ。今でも週に1~2回は相談受けますからね。
──乗りやすい相談と乗りにくい相談の違いってありますか。
相談って、相談したい状況の認識が明確で自分の仮説がある人だといいんですよ。相談される方としてもいい質問ができるし、有用な答えを返すことができるじゃないですか。
相談してもちゃんと答えが返ってこないって嘆く人がいるんですけど、それって家づくりするときに、図面なしに「どういう家を建てたらいいですかね」って言ってるようなものなので、答えが返ってこないのは当然なんですよ。
──雲を掴むような……。
そう。実は、会社の相談とかキャリアの相談って、そういう「ふわっと」したものが多いんですよね。いや、図面もってこいよ、みたいな(笑)。
──じゃあ、話を聞きながら佐久間さんが図面を作ってあげることも?
そう。どんどん聞いていくと最初は「会社の方針が~」とか言っていたけど、ただ1個上の先輩が嫌いなことに引っかかっていることが分かったり。
──自分の置かれている状況の解像度を上げていく、っていうことが必要になってくるわけですね。
自分で自分の仮説を作る能力は作っておかないと、仕事にも影響しますよね。新しいことをやるときに自分なりの見立てができないと、常に誰かのマネをするしか仕事がうまくいかなくなっちゃうから。
──本書でも触れられていますが、仮説を作るときのコツってなにかありますか?
僕の場合は、例えばあるジャンルで仕事をするってなったとき、ちゃんとそのジャンルのユーザーになることかな。短くても3〜4ヶ月、長ければ半年ぐらいどっぷり浸かって、自分なりのユーザー体験を作る。
それと、そのジャンルについて発信している人で、自分が賛同できる意見を言う人と、まったく賛成できない意見を言う人の両方をフォローする。それでその人たちを企画のベンチマークにする。
──両極の意見を見て、多角的な視点を養うというのは、この本の構成にも通じていることですよね。この本で、「おじさん」はどのように部下から相談を受ければいいのかという問いに対して、「いじられキャラになること」と回答されているのが印象的でした。
いじられキャラになるのは簡単で、最初に自分の失敗をしゃべることなんです。僕もラジオでは、エピソードトークで妻とか娘に怒られた話をしてますし。
──なるほど。ただ同時に、いじられすぎると馬鹿にされますよね? その距離感が難しいような……。
おじさんになればなるほど、そもそも部下と距離があるからね。ただ馬鹿にされるかどうかは、仕事で決めればいいだけだから。
あともう1個、いじられキャラになる秘訣は、「本当にセンスのいい後輩を見つけること」なんですよ。
鶴瓶師匠がオセロの松嶋さんを見つけたように、有吉さんがみちょぱとしょっちゅう一緒にいるみたいに。ダサいやつにいじられているとつまらない。好きな芸人がダサいギャルにいじられてたらイヤじゃないですか。
──確かに(笑)。
取材・文/谷頭和希 撮影/杉山慶伍
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