結局、会社員とフリーランスのどちらがいいのか。フリーになって3年半の佐久間宣行が辿り着いた結論 「衝動の解像度をあげるのが大事」
集英社オンライン / 2024年11月20日 11時0分
〈「若い頃はウソばっかついてた」 仕事の相談をしなかった佐久間宣行が、“おじさん”になって相談を受けまくるようになったワケ〉から続く
新刊『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』(ダイヤモンド社)は、会社員として仕事をする際に生じがちな悩みを、テレビプロデューサーの佐久間宣行が自身の体験をもとに回答した1冊。
【画像】現在週2日徹夜している佐久間が、仕事を回せる秘訣
インタビュー後編は、佐久間の「多くの仕事をこなす秘訣」からはじまり、フリーランスになるための心構え、そして今後の展望について聞いた。(前後編の後編)
フリーランスになろうとする人々
──今年2冊目の本の刊行となりますが、忙しすぎませんか?
佐久間宣行(以下同) 今、週に2日(編註:「佐久間宣行のオールナイトニッポン0(ZERO)」「オールナイトフジコ」)、徹夜してるんですよ。でも、みんなそれを信じてくれない(笑)。というか、徹夜の仕事をしつつ、今年は本を2冊出して、ネトフリの「トークサバイバー!」も作って。
──本当にひとりなのか、っていう。
でも、ちゃんとやってるんです。横浜アリーナでラジオの番組イベントもやって。2時間近く1人でステージ上がってて、1時間以上のフリートークを1人で作った。でもそれをみんな、あんまり信じてくれない(笑)。
──(笑)。なんでそんな働き方ができるんですか?
それは『その悩み、佐久間さんに聞いてみよう』にも書いたんですけど、「仕組み化」ですよね。フリートークのネタにしても番組やYouTubeの企画にしても、普段からストックして、それをアウトプットする段取りがあるから、この仕事量でもなんとかやれる。
──この本を読んで驚いたのは、フリーランスになるかどうかを相談されたときのチェックリストも作っているっていう。
それなりに稼げる分野で使える武器が1つか2つはないとフリーになるのは勧めないですね。でも、会社を辞めたいと相談されて「辞めない方がいい」と言っても、7割ぐらいは結局辞めちゃうんですよ。そして、そうやって辞めた人のほぼ全員があまりうまくいってない。
──予言が当たっている。でも、せっかく相談したのに結局辞めちゃうんですね。
要はね、それは「あなたならできる」って言ってほしかったんだよ。本人は辞めたくて仕方がなくて、「できるんじゃない?」とか「俺が仕事紹介しようか?」みたいなポジティブな回答を期待して聞いたんだと思う。
──この本を読んでても思ったんですけど、佐久間さんってそのあたりが本当に実直だなと。だって、社会的には「転職いい!」とか「フリーランス最高!」みたいな空気になってるじゃないですか。
まあ、僕は会社員もフリーも、どっちもやったんでね(笑)。だってフリーランスを勧める人でも、実は会社には5〜6年しかいなかったりするじゃない? それは、はじめから会社勤めが向いていなかった人であって、自分が取った方法を成功だと言いたいからそういうアドバイスになるんだろうね。
僕は一応、会社向いてないなと思いながらも22年テレ東に勤めて、ある程度ポジションとかスキルを身につけたし、フリーも4年間、ちゃんとやっている。
「衝動」を言語化せよ
──言葉に説得力があるわけですね。
フリーランスになるのは全然いいんです。でも、例えば半年後にフリーになると決めたんだったらなにをやったら成功するか、これだったらあと2つは得意先をゲットしないと難しい……とか考えないといけない。
それに半年後に辞めるとして、辞める原因がパワハラ上司だったら、その間はその人を無視できるじゃないですか。それで無視した結果、逆に会社が居心地よくなるかもしれない。もっと言えば、半年の間にその上司を社会的に排除できるいい方法が見つかるかもしれないし(笑)。
──でも、会社を辞めたい人って、ある種の「衝動」に突き動かされているじゃないですか? 佐久間さんみたいに理知的に半年後のことを考える人はなかなか少ない気が。
そうっすね、衝動……。だからね、やっぱり衝動の解像度をあげるのが大事なんです。
僕は就職したときにテレビ界、芸能界が向いてないと思って、そこからやらない仕事を決めてきたから、ここまで続けてこれたんですよね。それこそ、ゴールデン枠とか旅番組とかはやらなかった。自分の苦手なものを解像度を上げて考えてきたんです。そのまま会社や業界に適応しようとしたら、折れちゃっていたと思う。
だから、自分の嫌だと思っている衝動の解像度をあげることはすごく大事。逆に解像度が粗いと、無理なものを仕事として請け負ってしまう。
──自分がどういう人間なのかを考えるってことですよね。そのとき、SNSをはじめとして、あまりにもいろんな情報があるじゃないですか。そういう情報との上手い付き合い方ってあるんですかね。
僕は本当に、「うまくいってる人」と「うまくいってない人」の両方の情報を入れるようにしてますね。 大失敗してる人の話、大好きなんです(笑)。
まったく馬鹿にするつもりじゃないし、失敗している時点で挑戦していてすごいんですが、失敗って成功した人より学びが多いじゃないですか。成功は単にはじめからそのチョイスが当たってた場合もあるけど、 失敗は失敗したなりの理由が必ずある。それを考えていくと、少なくとも「やってはいけないこと」が見えてくる。
これからに向けて「変な仕事」をしていきたい
──今回の本は「会社との付き合い方」の要素が大きいですが、フリーランスが社会とどう付き合うか、という本もすごく需要がありそうですね。
でも、この3〜4年の僕の生き方って特殊すぎないかな。僕だからできた働き方なんですよね。
とはいえ、それも1個ずつ解像度上げていけば役に立つことはできると思うんですけど。今は自分を見つめ直してなにがよかったか、なにがだめだったかを考えている最中です。
──佐久間さんが先駆者として始められたことを、後追いで始めている例も増えましたよね。
みんな配信でバラエティ作ってるしね(笑)。あとちょっとしたら、元テレビ局員の書籍ブームもくるんじゃないのかな? だから、今は人と違う変な仕事をやりたいんですよね。
──変な仕事?
今、日曜の深夜にショート連続ドラマをやってるんです。大きなお金が動くわけではないのになんで、と言われたりしますが、5〜10年後にまた当たるんじゃないかとも思っていて。だったら今のうちに知見を積んでおこうかなと。
それに、今年は広告にもトライしているし。30代の頃に子ども番組(編註:「ピラメキーノ」のこと)を作って、なにやってんの? って言われたんですが、そういうことをもう1回やる時期かなと思っています。
──新しい仕事の芽を育てていくと。
最近気になってるのは、ゲームなんですよ。ちょっと準備していることがあって。いつか形になったら発表するつもりなんですけどね。
──おお! 楽しみに待っています!
取材・文/谷頭和希 撮影/杉山慶伍
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