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〈3億円結婚詐欺〉「姫、世界一愛してる」“偽社長”&“偽秘書”の連係で詐欺ざんまい…ノウハウを綴った刺青男の“ミッションノート”も

集英社オンライン / 2024年11月12日 18時46分

10月中旬、愛知県名古屋市を中心に、被害総額約3億円に及ぶ大規模な結婚詐欺事件が発覚した。愛知県警捜査2課によって詐欺の疑いで逮捕されたのは、江尻舟一容疑者(51)と武田佑気容疑者(32)の2名。被害を受けた女性5名に経緯を取材すると、その驚くべき手口が明らかになった。

【画像】女性から金を取るテクニックなどが書かれた“ミッションノート”

結婚詐欺のテクニックが書かれた“ミッションノート”

逮捕された2名の最初の罪状は、偽造有印公文書行使容疑だった。江尻舟一容疑者は「黒瀬舟」、武田佑気容疑者は「吉野」と偽名を名乗り、女性らに近づいていた。

「最初の逮捕は10月11日。愛知県名古屋市に隣接する市に在住の女性Aさん(47)に偽名で接近し、結婚の約束をほのめかしたうえで、『下請け業者に支払う工事代金を貸してほしい』などと金銭を借りる際に黒瀬名義の免許証を作成し、それを提示したことによるものでした。

この女性からは合計で1億円以上を騙し取ったとされ、10月22日には詐欺容疑で再逮捕されています。ほかにも被害女性は15名以上にのぼるとみられ、現在も捜査中です」(社会部記者)

この詐欺事件の特徴は、計画を主導した江尻容疑者を中心に、「秘書役」の武田容疑者や被害女性を巻き込み、女性たちには「仲介役」や「事務役」などを担わせるなど、非常に手の込んだ手口であることだ。

記者はまず、江尻容疑者と逮捕直前まで一緒にいた女性・Bさん(50代)にコンタクトを取った。

「江尻は、実際は無職であるにもかかわらず、自分を実業家と偽り、デートの際に秘書役の武田を同席させるなどして、女性からより多くの金を詐取しようとしていました。

女性たちとは主にマッチングアプリで知り合い、手当たり次第に「世界一愛している」などと甘い言葉をささやいていました。さらに武田は女性を“姫”と呼び、江尻の言葉を信じ込ませるように演出していました」(Bさん、以下同)

また、武田の部屋からは、江尻容疑者が書いたとされる“ノート”も押収されている。

「これは、“ミッションノート”と呼ばれるもので、そこには『手を繋ぐ』や『恋愛感情を持つ』といった女性と対面した際の心構えだけでなく、『男としてきちんと見てほしい』といったセリフなど、結婚詐欺のテクニックが詳細に書かれていました」

こうした江尻容疑者の手口にまんまと引っかかってしまった1人が、中学生と高校生の子どもを持つシングルマザーのCさん(48)だ。

Cさんは、マッチングアプリを通じて2022年9月に江尻容疑者と知り合い、1800万円を詐取された。なぜ、そんな事態になってしまったのか。

「彼は、埼玉に本社があるアスベスト関連の企業に所属していると、実在する会社を騙り、年収は3000万円以上だと言っていました。アプリでは、再婚を視野に入れて女性を探しているとも言っていました。

私と出会った際には『こんな素敵な女性は初めて』『君の子どもも含めて大事にしたい』と口にし、会うたびに花束やケーキ、アクセサリーなどの贈り物をくれました」(Cさん、以下同)

「財布を紛失した」と小芝居。「3週間だけ1000万円を貸してくれるとありがたい」

江尻容疑者のアプローチに惹かれたCさんは、当時「こんな優しい男性が世の中にいるのか」と感動したという。だが、交際1ヶ月の記念に計画していた旅行中に“事件”が起こる。

この旅行には、江尻容疑者と武田、さらに今回逮捕されていない「男性秘書役」の浅野という人物も同行するという、計4人での1泊2日の旅だった。

「江尻は宿に向かう前に、三重県のアウトレットモールで私の服などいろいろな商品を買ってくれました。そして江尻がトイレから戻ってきたとき、武田が『社長、カバンは?』と驚いた声を上げたんです。江尻はクリスチャン ルブタンの財布を脇に挟んでトイレに行ったのですが、それをトイレに忘れた、という芝居が始まったんです」

その後、いったん車に戻った4人。そこで、こんな小芝居が始まったという。

「武田が『社長、3日後に決済予定の1億円はどうしますか』と言うと、江尻が『口座が凍結されたら、決済ができなくなるな』と返答しました。その後、江尻は武田に『専務に電話しろ。俺は金を貸してくれる人を探す』と指示を出していました。

さらに『このままだとプロジェクトがパーになる』などと、目の前で逼迫した会話を続けられたんです」

「ただごとではない」と感じたCさんは、旅行の中断を提案したが、なぜかそのまま宿に向かうことになった。その道中でも、金の工面をどうするかといった会話が続いていたという。

「武田やもう1人の秘書役があれこれと電話をするなか、『とりあえず3000万円は確保できた』という話になりました。その流れで、私に『3週間だけ1000万円を貸してくれるとありがたい』と言ってきたんです。この時点で私は江尻を信頼し、好意も持っていたので、疑うことなく了承しました」

Cさんは旅行から帰ったあと、口座に入れていた貯金800万円と、定期積立を解約して用意した200万円を江尻容疑者に渡した。その際、借用書などは作成しなかったという。

「その後、江尻から『免許証を作り直しに行ったら、千葉県警の刑事が出てきて、落とした通帳が詐欺に利用されて口座が凍結した。怪しい通帳だと疑われているから、弁護士を立てた』と東京の実在する弁護士のホームページも見せながら説明されました。

そして『まだ口座が凍結したままだから、弁護士費用の500万円を貸してほしい』と言われ、私はまた貸してしまったんです」

「このバタバタを終わらせて、必ず再婚しよう」

この時点でも、まだ詐欺だと疑いもしなかったCさん。2023年2月から10月にかけて、江尻容疑者と会う頻度が極端に減り、連絡も取りづらくなったそうだ。その代わりに、秘書役の武田が毎日、次のような連絡をしてきたという。

「姫、社長は姫にお金を返すために日々奔走しています!」
「姫、毎日一緒に頑張りましょう」
「社長を信じて待ちましょう」

武田の演技は迫真だった。そして、たまに連絡してくる江尻容疑者からは、こんな言葉もささやかれた。

「お金を借りて、迷惑かけてごめん。このバタバタを終わらせて、必ず再婚しよう」

さらに、途中で静岡県に実在するアスベスト関連会社から江尻の会社宛の入金についての偽造見積書も見せられ、「近々この会社から7000万円の入金があるから、それで返す」とも告げられたという。

 しかし、お金は一向に返される気配がなく、Cさんが最後に江尻容疑者に会ったのは昨年10月だった。その後、2024年の年明けからは電話もLINEも不通に。連絡がつかなくなった時点でCさんは焦りを感じたが、今年8月に突然、江尻容疑者本人から連絡が来たという。

「なんと、江尻は悪びれる様子もなく、結婚詐欺を繰り返していたことを白状しました。毎日が自転車操業だったことや、多くの女性からお金を借りていたが少しずつ返していくつもりだと打ち明けてきたんです。その瞬間、目の前が真っ暗になりました」

その後、Cさんは、江尻容疑者が逮捕されたことを知り、自らも10月20日に被害届を提出した。

「刑事からは、被害者の数が多く、担当する刑事を増やしていると聞きました。被害総額は3億円を超えるそうです。『お金についてはコメントしようがないですが、罪に関してはとことん追及しますので』と言ってもらえたことだけが救いです。

うちの子どもはこれから高校と大学の受験を控えています。江尻に渡したお金は、そのための受験費用だったんです。江尻は殺人を犯したわけではありませんが、人の人生を大きく狂わせました。気持ちとしては、極刑にしてほしいくらいです……」

本件についてCさんは、両親はもちろん、友人にすら打ち明けられずにいる。「とにかく毎日が苦しい。どうしていいか、本当にわからない」とうなだれる姿は、見ているだけでも胸が痛む。

後編では、被害女性たちを「仲介役」や「事務員役」に仕立て上げ、詐欺に巻き込んでいったこの事件の闇の深さに迫る。

取材・文/河合桃子 集英社オンライン編集部ニュース班

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