食事マナーが大炎上の石破首相にマナー講師が「とても感動しました」とまさかの太鼓判。その理由は?
集英社オンライン / 2024年11月16日 11時0分
4年前に公開された石破茂首相の動画が、現在になって炎上している。物議を醸しているのは、茶碗の持ち方や箸づかいなどの“テーブルマナー”に関してだ。しかし、これについては「海軍式の作法であり、軍事オタクの石破首相なら納得だ」という擁護の声も上がっている。先日も石破首相は燕尾服の着こなしについて批判を受けたが、実際のところ、彼のテーブルマナーはどうだったのか。専門家に話を聞いたところ、意外な答えが返ってきた。
4年越しに炎上した石破茂首相の食事作法
11月11日に衆議院本会議で行なわれた総理大臣指名選挙を経て、第103代首相に選出された石破茂首相。第2次石破内閣が本格的に始動するなか、さっそく首相指名選挙中の居眠り疑惑が指摘されるなど、首相としての振る舞いに国民から批判の声が上がっている。
そんななか、4年前に公開された動画内での石破首相の「食事マナー」について、SNSを中心に物議を醸している。
問題の動画は、お笑いジャーナリスト・たかまつなな氏のYouTubeチャンネルで公開されたもの。当時、自民党総裁選で落選したばかりの石破茂首相に対し、食事を交えながら本音をインタビュー形式で引き出す、といった内容の動画(前後編の2本)だった。
現在話題となっているのは、動画の13分あたりの場面。サンマの塩焼きを前にした石破首相が、箸を片方ずつ使い、両手で身をほぐし始めるシーンだ。
石破首相は食事を進めるが、その際にも箸の握り方が少々不自然なうえ、茶碗の縁に指を引っ掛けて持つ姿も確認できる。その後、サンマを箸で大胆に持ち上げ、そのままひっくり返して食べ始めた。
こうした場面が切り抜かれ、ネットユーザーによってXに投稿されると、該当する複数の投稿が数百万のインプレッションを記録。4年の時を経て、まさかの“炎上”となった。
なかには擁護する声も多く見られるが、実際のところ、石破首相のテーブルマナーはプロの目にどう映ったのか。日本サービスマナー協会に所属し、テーブルマナーからフォーマルマナーまで精通するマナー講師・加藤瑞貴氏に、動画を確認してもらった。
「箸を両手に一本ずつ持って食べ物をほぐしたり切ったりするのは、『ちぎり箸』にあたります。たしかにテーブルマナーを指導する際には、『しないように』とお伝えしています。
箸の持ち方に関しては、動画の角度によるところもあるかもしれないのですが……男性の場合、手が大きくて細い箸だと持ちづらく、指をかぶせているように見えることもあるかもしれません。
また、配膳された魚の向きを変えることは、あまりしないかと思います。向きを変えずに骨を皿の奥に移動させるなどし、その際も高く持ち上げないようにと、講座などでもお伝えしています」(加藤氏)
やはりプロの視点から見ても、石破首相の作法はあまりよろしくないようだ。しかし、加藤氏は意外な評価ポイントも見出している。
「ただ、食べ終わったあとのお魚が綺麗で、とても感動いたしました。どんなに箸づかいが美しくても、皮が散らばっていたり身が残っていたりすると、マナー違反になってしまうことがありますので」(加藤氏)
NGマナーの“渡し箸”は、お店に対する気遣い!?
動画では、石破首相はサンマの皿に、テーブルマナーでは一般的にNGとされる“渡し箸(食事中に食器の上に箸を置く行為)”をする。しかし、これにも加藤氏は「気遣いがあったのでは?」と推測した。
「たしかに動画の後編でも食事をされている様子が収録されていますが、編集されたものが公開されていると思うので、動画どおりの順番で料理を召し上がっていたとは限りません。石破首相はサンマをご飯やお味噌汁と一緒に召し上がっていたため、サンマが最後の締めだったのかもしれません。ですので、『箸はお皿に置いてまとめたほうが、お店の方が片付けやすい』という気遣いがあったのではないでしょうか」(加藤氏)
後編の動画では、卓上に「トンッ!」とおちょこを置く場面や、箸でつかんだものをバウンドさせるような動作も見られる。加藤氏は、これらはともにNGとしつつも、料理によっては推奨される箸づかいであるとも解説する。
「正式な食事のマナーとしては、つかんだものは静かに口に運ぶように、と私自身もよく指導されてきました。なので、動画内の様子は“探り箸”に似ているのかなと思います。
ただ、煮物など水分の多い料理をつかんだときに、汁をだらだらと垂らしてしまうのは“涙箸”と呼ばれ、好ましくありません。もしかすると、動画内でも水気を切るためにトントンと箸を使っているのかもしれません」(加藤氏)
NGを連発してしまった石破首相だが、撮影場所となった店舗を知っているという加藤氏は、さまざまな事情があることにも理解を示している。
「実は私、このお店を知っていまして。入ったことはないのですが、少しカジュアルなお店なんです。首相ご自身が好んでこのお店を選ばれたということなので、肩肘張らずに食事を楽しまれていたのかもしれません。
たしかに、研修などで『これがマナーです』と教えている内容とは異なる部分もありました。しかし晩餐会などの正式な場ではないですし、そこまで厳密に気にしなくてもよいのでは?というのが私個人の意見です。それに、この動画は4年前に公開されたものですので、今は改善されていらっしゃるかもしれません」
「茶碗に指をかける」のは本当に海軍式の作法だった!
SNSでもっとも物議を醸したのは、石破首相の茶碗の持ち方であった。しかし、これについては〈茶碗やお椀を持つときに、人差し指をひっかけるのって、海軍式ですよね? こういう持ち方になったのは、船上での揺れ対応&狭い船内でスペースを取らないためのはず〉〈うちの祖父(元海軍)が味噌汁をこの持ち方してましたね 狭いから脇を占めて食事する癖がついたって言ってました〉といった擁護の声も多く見られた。
石破首相は政界きっての“軍事オタク”として知られており、防衛大臣も務めた経験もある。こうした背景を踏まえると、たしかに納得できる部分があるのかもしれない。
果たして、海軍には実際にこうした食事作法が存在していたのか。海上自衛隊の活動に協力し、海軍の事情にも詳しい水交会事務局長・徳丸伸一氏に話を聞いた。
徳丸氏は「現在の水交会には海軍の習慣を知る方は来られておらず、直接確認はできない」としながらも、「確認できる範囲で」と教えてくれた。
「海軍兵学校の食事風景を写真で確認した限りでは、現在と変わらず通常のお茶碗の持ち方をしています。また海上自衛隊においても、茶碗と箸は家庭で教えられたように持っており、特別な指導は行なわれていません。
ただ、今はわかりませんが、我々が防衛大学校の学生だったころは特殊なお茶碗で食事をしており、人差し指をお茶碗の中に入れて食べていました。
これは、アルマイト製と思われる茶碗ひとつひとつにコメと水を入れ、それを一度に大量に蒸かして食事を提供していたため、器が熱く、親指、人差し指、中指で挟むようにしないと持てなかったからです」(徳丸氏)
また石破首相といえば、内閣発足時の記念撮影でも、ズボンがずり落ちていたり、シワが寄っていたりと着こなしの面で批判を浴びた。前出の加藤氏はフォーマルシーンも専門としているため、この点についてもたずねてみた。
「たしかにズボンが下がっている分、生地が余ってしまい、裾もダブついてヨレているように見えてしまっています。また、ズボン中央の折り目がはっきり見えないことで、さらにヨレた印象を与えているかもしれません。
ただ、首相は恰幅がよろしい方なので、階段を降りる途中でズボンが徐々に下がってしまい、ご本人も気づいていたものの、報道陣がいる手前、直せなかったのかもしれませんね」(加藤氏)
就任早々、あらゆる角度から批判を浴びることになった石破首相。さまざまな事情があるにせよ、公の場に現れる際には、マナーや服装にも気を配ってもらいたいものだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班
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