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がんになったらまず見ておきたいサイトは3つ…診療ガイドライン、標準治療、もし治療法に迷ったら……

集英社オンライン / 2024年11月18日 18時30分

自身や知人ががんを患ったとき、適切な治療方法や費用について正しい情報を得られるサイトがあると知っておいて損はないだろう。

【画像】日本癌治療学会が運営するサイト

本記事では書籍『その医療情報は本当か』より一部抜粋・再構成し、不適切なネット広告などが表示されない、がんについて正確な情報が掲載されたサイトを3つ紹介する。

がんの診療ガイドラインは充実している

多くの病気の中でも、がんに関する情報はネット上のみならず、どのメディアにもあふれています。適切な情報を探すにあたっては、「いったい何を参考にすればいいのか」「情報の質の確認はどうすればいいのか」といった疑問や疑念がわくのは当然でしょう。

医師や医療関係者が述べている内容であっても、それが自分の症状を改善させるにあたって有用なエビデンスに基づく情報かどうかは、なかなか判断がつかないことも多いのではないでしょうか。

どこにあるどの情報を参考にすればいいのか。その結論は、第八章で述べたように、「エビデンスに基づいた確かな医療情報は『診療ガイドライン』にあり」といえます。特筆すべきことは、各種のがんに関しては、それぞれの診療ガイドラインの公開が充実しているということです。

そして、各種の診療ガイドラインのいくつかは、「Mindsガイドラインライブラリ」にて、無料で誰もが閲覧、探すことができるのですが、それとは別に、がんの診療ガイドラインのみを一括して掲載する公的なサイトが存在します。さらに、患者さんや家族、一般の人を対象に、がんに関する情報を広く扱い、読みやすく掲載するサイトもあります。

これから紹介するその2つのサイトは運営団体がそれぞれに明らかで、「Mindsガイドラインライブラリ」と同じように不適切な広告が貼られていることもなく、気づかないうちに別の広告サイトを開いていたということもありません。

各種のがんの診療ガイドラインを集めたサイトがある

その「がんの診療ガイドラインのみを集めたウェブサイト」とは、「がん診療ガイドライン*1」です(図14)。

運営は「日本癌治療学会」で、会員登録などをしなくても誰でも無料で閲覧することができます。各種のがんの診療ガイドラインを、記述のフォーマットを統一し、「臓器別ガイドライン」に整理して公開しています。

臓器別ではたとえば、「脳・神経」│脳腫瘍(成人)・脳腫瘍(小児)、「頭頸部」│頭頸部・口腔がん・甲状腺腫瘍、「胸部」│肺がん・乳がん、「消化管」│食道がん・胃がん・大腸がん、「肝臓・胆道・膵臓」│肝がん・胆道がん・膵がんなどをはじめ、全身の臓器、部位別に分類されています。まずはアクセスしてみてください。

一般向けの「がん情報サービス」が参考になる

ただし、診療ガイドラインとは医師や医療関係者を対象とした手引書です。専門用語の解釈などに誤解が生じることもあるかもしれません。

そこでこれとは別に、患者さんや家族、一般の人を対象に、診療ガイドラインの内容などをわかりやすくまとめた「がん情報サービス」(図15)というサイトがあります*2。こちらも無料で誰でも閲覧することができるので活用しましょう。

日本には、日本人の死因でもっとも多いがんの対策や研究の推進などについて定めた「がん対策基本法」という法律(2007年4月1日施行)があります*3。「がん情報サービス」はこの法律に基づいて、「国立研究開発法人国立がん研究センター」が作成、運営する公式サイトです。

内容は、がんに関する基礎知識、診断と治療、症状と生活、予防と検診、療養生活、食事、心のケアなど、また、仕事との両立、費用、制度、情報の集めかたなど、そして、「がんと診断されたあなたに知ってほしいこと」として「がん相談支援センター」の存在と活用の勧めなどで、がんに関する多くの情報を網羅しています。

同サイトは医療者の間では、「がん情報の入り口」と言われます。

この「がん情報サービス」の情報は、ネットで閲覧できるだけでなく、冊子、チラシ、リーフレットも同サイトから無料でダウンロード、印刷することもできます。

たとえば、『患者必携がんになったら手にとるガイド普及新版』(A5判、228ページ)があります。ほかに、がんの実態調査をまとめた文書、用語集といった資料も充実しています。

患者さんの中には、「がんの診療時に担当の医師から、ネットで確かな情報を調べるときは、『がん情報サービス』のみを参考にしてください、とアドバイスされた」と話す人がいます。このように、「がん情報サービス」は、医師が患者さんに勧めるサイトの筆頭であると医療界では認識されています。

自分や家族、身近な人ががんになった場合、がんを予防したい場合、検診を受けようかと迷っている場合など、さまざまな状況でこのサイトは役に立つと思われます。

「がん相談支援センター」を活用しよう

こうしたサイトなどを活用して情報を得たとしても、さまざまな疑問や迷い、不安が起こり、患者さんや家族ら身近な人にとって、落ち着いて考えて判断することは、とても厳しいことだと思います。もちろん、治療法や見通しについては担当の医師に相談したいところですが、相談内容や医師との相性によっては難しい場合もあるでしょう。

そこで、相談にのってくれる機関として、「がん相談支援センター」があることを知っておいてください。この機関は、全国の国指定の「がん診療連携拠点病院」や「小児がん拠点病院」などに設けられています(2024年8月現在で476カ所)。

どこにあるかは「がん情報サービス」のサイトで最寄りの施設を検索できるほか、電話やチャットで同センターを探す手伝いをする「がん情報サービスサポートセンター」もあり、手軽に問い合わせることができます。

相談窓口では、がんに関する治療、病院の選びかた、療養生活全般、仕事との両立、診察費などお金のこと、セカンドオピニオンの紹介、家族や職場にどう伝えるかといったコミュニケーションについてなど、どうすればいいのかわからないことや不安に思うことについて尋ねることができます。

無料で、患者さん本人や家族、パートナー、また匿名でも、対面でも電話でも相談が可能です。メディアから得る情報とはまた違って、自身の病状や生活状態、環境に即して、専門家からのアドバイスを得ることができるでしょう。

「何を質問すればいいかもわからないが、漠然と不安だ」「がんと言われて頭がまっ白だ。何から考えればいいのか……」といった場合でも、相談者にとって必要な情報を吟味して提供、相談にのってくれるでしょう。ぜひ活用してください。

「標準治療」ががんの最良の治療法

先述の「がん診療ガイドライン」には、「がん診療ガイドラインの策定、普及は、国民が安心してどこでも標準的ながん診療を受けられる環境を構築するうえで必要不可欠なことです。」と記されています。

「標準治療」ということばをメディアなどで耳にすると思います。これも「何のことなのかわからない」とよく尋ねられる医療用語のひとつですが、この文中の「標準的ながん診療」という文言がそれを示しています。

「標準治療」ということばの響きから、「並」レベルの治療のことだと勘違いされることがありますが、そうではありません。

「がん情報サービス」のサイトでは、「標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる『最良の治療』であることが示され、多くの患者に行われることが推奨される治療のことをいいます。」と明記されています。

また、「標準治療」とは具体的に、「診療ガイドラインに掲載されている治療法」のことであり、各分野の医学会が推奨する治療を指しています。つまり、ある分野のがんの「標準治療」を知りたい場合は、そのがんの診療ガイドラインや、一般向けにわかりやすく説明された解説書を参考にしようということです。

それには、これまでに紹介してきた「Mindsガイドラインライブラリ」「がん診療ガイドライン」「がん情報サービス」をあたりましょう。

医師は患者さんに、病状に応じていくつかの治療法の選択肢を伝えますが、その際には「いまの標準治療は、こうです」と説明するでしょう。くり返しますが、「標準治療」とは、その分野の疾患に関していまもっとも良いと考えられる治療法のことです。そして、各種のがんを含め、「標準治療」の治療費のほとんどは公的医療保険適用となっています。

実際の医療現場では、「標準治療」の方法を踏まえたうえで、医師の経験や、患者さんの状態、希望などを尋ねて最良の治療法を決めていきます。

「先進医療=上質な治療法」ではない

一方、「先進医療」ということばもよく耳にすると思います。こちらは、ことばの響きから上質な治療を意味する用語だとイメージするかもしれませんが、そうではありません。むしろ、「まだエビデンスが確かではなく、効果や安全性について十分には確認ができていない新しい治療法」を指します。

また、「先進医療」の治療にかかる費用は原則、公的医療保険が適用されず、全額が自己負担となります。厚労省が認める例外はありますが、いずれにしろ、公的医療保険が適用されない治療やサービスを受ける場合は、事前に費用や治療回数、改善の見通しなどの詳細を重々確認してください。不明点は、先述の「がん相談支援センター」に問い合わせましょう。

こうした点を適切に理解しておき、ことばのイメージだけで早とちりや誤解をしないように注意したいものです。

*1 「がん診療ガイドライン」http://www.jsco-cpg.jp
*2 「がん情報サービス」https://ganjoho.jp
*3 「がん対策基本法」https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=418AC1000000098

写真/shutterstock

その医療情報は本当か

田近 亜蘭
その医療情報は本当か
2024年10月17日
本体1150円+税
208ページ
ISBN: 978-4-08-721336-2

「この健康食品は80%の人に効果があった」と表示があると、その商品には高い効果があると感じるものだ。
しかし、実際には「たった10人を調査して8人に効果があった」だけかもしれない。
医療の定説や広告、健康食品の表示など、「情報」の正誤や信頼性を見極めること、それは自らの健康を守るための意思決定において重要だ。
「ヘルスリテラシー」とは、「自分に適切な医療・健康情報を探し、理解して活用する能力」である。
その身につけ方や正確な医療情報へのアクセス法について、エビデンス研究の専門家医師が詳細に解説する。

【主な内容】
新聞に載った医療情報…20年後は有効か?
「死亡率が3倍に!」といっても…
医療広告に「体験談」「回数無制限」「施術前後の写真」は禁止
オンライン診療の「やせ薬」処方でトラブルが急増中
通報サイト「医療機関ネットパトロール」がある
健康食品はあくまで「食品」
「飲酒する人には肺がんが多い」は適切か…因果関係の証明は難しい
平均寿命…余命はあと何年?
医療の「エビデンス」には6つの「レベル」がある 
「診療ガイドライン」とは医師の診療手引書
診療ガイドラインが検索できる便利なサイトがある
「がん相談支援センター」を活用しよう
「標準治療」ががんの最良の治療法
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医療情報の「見極めかた」と「誤りを信じ込む心理」
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